• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

もっとも稼いだ南米産馬は誰だ?

本記事は "10 Furlongs" に掲載されている記事を翻訳、一部改変して作成したものです。

https://diezfurlongs.com/los-caballos-pura-sangre-latinoamericanos-de-mayor-dinero-ganado-en-la-historia/

最終閲覧日:2021年2月5日


※獲得賞金額は米ドルで統一。"Equibase" に記載されている獲得賞金額を参照。1ドル=105円で計算。


第10位 リドパレス(Lido Palace)


獲得金額:270万8565ドル=2億8439万9325円


 いきなり登場するのは、日本でもお馴染みのチリ産馬リドパレス。チリ時代はチレ競馬場4冠を達成したが、この4つのGⅠで得た賞金は約2700万円。残りの2億5000万円はアメリカに移籍してから稼いだ。アメリカでは重賞4勝をあげ、その中にはホイットニーH、ウッドワードS連覇と3つのGⅠ競走が含まれる。もし2001年のジャパンカップ・ダートを勝っていれば、およそ1億3000万円を加算して一気に3位に浮上していた。結果が悔やまれるが、クロフネは強すぎた。


◆ 2001年 ホイットニーH



第9位 バジャコア(Bayakoa)


獲得賞金:286万1701ドル=3億47万8605円


 アルゼンチンを代表する名牝バジャコアから3億円を突破する――気まぐれなレート次第ではあるが――。アルゼンチンでは8戦3勝、GⅠ競走も1勝としているが、獲得賞金は約250万円と微々たるもの。アルゼンチン競馬のレース賞金は低い。しかし、アメリカに移籍してからGⅠを12勝。1989年と1990年にはBCディスタフを連覇し、見事9位にランクインした。


◆ 1989年 BCディスタフ



第8位 アインシュタイン(Einstein)


獲得賞金:294万5238ドル=3億924万9990円


 900万円ほどの差でバジャコアを抜いたのが、スペンドアバック産駒のブラジル産馬アインシュタインである。この馬は2002年にブラジルで産まれたが、母国では一度も走っておらず、初戦からアメリカで競走生活を送った。いわば、稼ぎやすい環境に置かれていた。通算成績は30戦11勝。重賞は7勝をあげ、うち5勝がGⅠ。BCなどの高額賞金レースは勝っていないが、ガルフストリームパークBCを2勝、ウッドフォード・リザーヴ・ターフ・クラシックを連覇、2009年のサンタアニタH優勝と堅実に稼いで8位となった。2020年10月、ガンのため17歳で死亡。


◆ 2009年 サンタアニタH



第7位 サイフォン(Siphon)


獲得賞金:313万6428ドル=3億2932万4940円


 サイフォンはブラジル時代に6戦4勝、シダーヂ・ジャルディン競馬場で行なわれた2歳GⅠジュリアーノ・マルチンスを含む重賞3勝をあげた。1994年に南米最大のGⅠ競走カルロス・ペジェグリーニで13着に敗れた後、アメリカに移籍した。アメリカではハリウッド・ゴールドCとサンタアニタHのGⅠ2勝をあげた。だが、前の3頭の成績と比べると見劣りする。サイフォンが7位にランクインした最大の要因は、1997年のドバイWCでシングスピールの2着に入ったことである。


◆ 1997年 ドバイWC 2着



第6位 パセアナ(Paseana)


獲得賞金:331万7427ドル=3億4832万9835円


 6位にはアルゼンチンの名門バカシオン牧場が世に送り出した名牝パセアナがランクインする。アルゼンチン時代はサン・イシドロ競馬場で行なわれた3歳牝馬GⅠエンリケ・アセバルを含む重賞3勝をあげたが、やはり獲得賞金は約600万円と渋い。アメリカに移籍すると、1992年のBCディスタフを含むGⅠ10勝と大活躍をした。同郷バジャコアと似たような成績を残しており、とにかく勝ちまくって稼いだ。


◆ 1992年 BCディスタフ



第5位 アジアティックボーイ(Asiatic Boy)


獲得賞金:332万1130ドル=3億4871万8650円


 2003年にアルゼンチンで産まれたアジアティックボーイは、アルゼンチン時代は3戦1勝と、重賞勝ちのない平凡な2歳馬だった。しかし、ドバイに移籍してから才能が開花した。2007年にはUAE2000ギニーとUAEダービーを勝利。2009年には当時GⅡだったマクトゥームチャレンジR3を優勝している。アジアティックボーイが5位に入ることができた決定打は、2008年のドバイWCでカーリンの2着に入ったことである。オイルマネーをゲットすると獲得賞金額がグンと跳ね上がる。現在は産まれ故郷アルゼンチンに戻って種牡馬をしており、5頭のGⅠ馬の父となった。


◆ 2007年 UAEダービー



第4位 ジェントルメン(Gentlemen)


獲得賞金:360万8558ドル=3億7889万8590円


 4位には1995年のアルゼンチン2冠馬ジェントルメンが入る。アルゼンチン時代は6戦4勝(GⅠ3勝)という成績を残し、獲得賞金も2450万円と賞金の低いアルゼンチンにしては稼いだほうである。アルゼンチンのダービーにあたるナシオナルを優勝後にアメリカに移籍すると、スキップアウェイを倒したピムリコ・スペシャルHなどGⅠ3勝を含む重賞8勝の活躍を見せた。とりわけ、1997年のパシフィック・クラシックS制覇が第4位にランクインした大きな要因である。1998年のBCクラシックではレース中の故障により競走中止となったが、もし無事ならば着を拾っていたのは間違いなく、ランキングも3位に浮上していただろう。


◆ 1997年 ピムリコ・スペシャルH



第3位 サンドピット(Sandpit)


獲得賞金:381万2597ドル=4億32万2685円


 ここからトップ3になる。賞金額は4億円を突破する。3位にランクインしたのは、これまた日本でもお馴染みのブラジル産サンドピットである。サンドピットは1993年のクルゼイロ・ド・スル(ブラジル・ダービー)など、12戦5勝(GⅠ4勝)という成績をブラジルで残した。1993年のカルロス・ペジェグリーニ4着後にアメリカへ渡ると、28戦5勝、重賞7勝(GⅠ5勝)、掲示板を外したのは2回だけとコンスタントに好走した。高額賞金レースでの勝利はないものの、GⅠアーリントンミリオンで2着を2回、3着を1回、1997年ドバイWCでシングスピールの3着と賞金を拾っていった。1994年と1995年に遠征したジャパンCでも上位に入れば、もう少し稼げただろう。だが、仮に連覇していたとしても、第2位の馬の獲得賞金額には到底及ばない。


◆ 1994年 ジャパンカップ 5着



第2位 インバソール(Invasor)


獲得賞金:780万4070ドル=8億1942万7350円


 1位と2位は圧倒的なツートップである。ツートップの一翼を担うのは、史上最高の南米産馬インバソールである。もしかしたら、この馬が1位だと思った方が多いかもしれない。インバソールは2005年に5戦5勝と無敗でウルグアイ3冠を達成すると――ウルグアイでの獲得賞金は680万円――、翌年アメリカに移籍した。移籍初戦となったUAEダービーでは4着に敗れたが、これが生涯唯一の敗北となる。2006年5月19日のピムリコ・スペシャルHからGⅠ6連勝を達成。2006年のBCクラシック、2007年のドバイWCと高額賞金レースを勝利し、獲得賞金を8億円台に乗せた。現在はウルグアイのクアトロ・ピエドラス牧場で種牡馬として供用されているが、GⅠを勝つような活躍馬は輩出できていない。現在19歳、そろそろ後継者が産まれてほしい。


◆ 2006年 BCクラシック



第1位 グローリアヂカンペアン(Glória de Campeão)


獲得賞金:925万8355ドル=9億7212万7275円


 史上最高の南米産馬インバソールに1億5000万円以上の差をつけて栄えある第1位に輝いたのが、ブラジル産馬グローリアヂカンペアンである。ブラジル時代は8戦5勝、GⅡ勝ちはあるがGⅠは勝っていない。海外に移籍したものの、生涯成績は25戦9勝、重賞5勝と、これまで出てきた9頭の中でもっとも見栄えがしない。だが、グローリアヂカンペアンは大金が懸かると燃えた。中東・アジア圏の高額レースにおける勝負強さが、インバソールを抜いた要因である。2009年にシンガポール航空インターナショナルカップを制し、ドバイWCで2着。翌年はマクトゥームチャレンジR1を勝ち、R3でも2着に入ると、本番ドバイWCではリザーズデザイアをハナ差しのいで優勝した。ドバイWC2年連続連対がトップに君臨する決め手となった。現在はブラジルで種牡馬となっている。これまで産駒は7世代228頭おり、182頭が競走馬としてデビューし、102頭が勝ち上がっている。2019年にはサンパウロ2冠馬メストリドイグアスを輩出するなど、母国の英雄は人気種牡馬としての地位を確立しつつある。


◆ 2010年 ドバイWC



 惜しくもランクインは逃したが、100万ドル以上を稼いだ主な南米産馬を以下に記載する。

バルアバリ(Bal a Bali) ブラジル 125万8268ドル=1億3211万8140円


ピコセントラル(Pico Central) ブラジル 128万3145ドル=1億3473万225円


ヒボレッタ(Riboletta) ブラジル 155万5103ドル=1億6328万5815円


ルロワデザニモー(Leroidesanimaux) ブラジル 165万8377ドル=1億7412万9585円


ケチュア(Quechua) アルゼンチン 237万2826ドル=2億4914万6730円


マレク(Malek) チリ 238万2623ドル=2億5017万5415円


トリニキャロル(Trinycarol) ベネズエラ 264万4392ドル=2億7766万1160円


ブループライズ(Blue Prize) アルゼンチン 269万2253ドル=2億8268万6565円


 グローリアヂカンペアンを超える南米産馬、つまり、史上初の10億円南米ホースが誕生する可能性はあるだろうか? 必須条件となるのは、海外移籍をすることである。2020年の南米最高1着賞金は571万5000アルゼンチン・ペソで、日本円に換算すると685万8000円にしかならない。海外移籍に加えて、高額賞金レースを勝たなければならない。具体的には、ドバイWC、ペガサスWC、BCクラシックの3つである。現在、これらのレースを勝つ可能性のある南米産馬は3頭いる。ドバイWC出場を目指しているウルグアイのアフステフィスカル(Ajuste Fiscal)。すでにアメリカGⅠを制してBCマイルでも4着に入ったイバール(Ivar)。そして、アメリカに移籍したチリの怪物ファーストコンスティテューション(First Constitution)である。以前よりも高額賞金レースは世界中で増えており、南米産馬の海外移籍も頻繁に起こっている。つまり、稼ぐ条件がこれまでよりもはるかに恵まれている。10億円南米ホースの登場は容易ではないが、近い将来確実に現れる。


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木下 昂也(Koya Kinoshita)

Twitter : @koyakinoshita24

G-mail : kinoshita.koya1024@gmail.com

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