
木下 昂也(Koya Kinoshita)
ウルグアイのハットトリック後継種牡馬

写真:Hipódromo San Isidro(@HipodromoSI) https://twitter.com/HipodromoSI/status/1074109986962321408
日本で競走馬として活躍し、その後南米で種牡馬となった馬は5頭いる。アグネスゴールド、シーキングザダイヤ、ハットトリック、ヒラボクディープ、ペールギュントである。ヒラボクディープは2019年から種牡馬入りと最近のことであり、ペールギュントは2シーズンしか種付けをしなかった。したがって、本格的に稼働したのはアグネスゴールド、シーキングザダイヤ、ハットトリックの3頭である。
この3頭のうち、アグネスゴールドとシーキングザダイヤは後継種牡馬に苦労している。今後後継となりうる馬が出てくる可能性もあるが、現状では望み薄だろう。
一方、ハットトリックは2020年8月に死亡したものの、3頭の後継種牡馬を残すことに成功した。後継の最有力は、アルゼンチンのチェナウト牧場にいるハットニンジャ(Hat Ninja)である。2019年は61頭、2020年は79頭に種付けと、それなりの数の産駒を残せそうだ。ハットニンジャについては以前 コチラ で詳しく書いたので参考にしてほしい。
今回紹介するのはウルグアイにいる2頭の後継種牡馬、ハットドラール(Hat Dólar)とハットマリオ(Hat Mario)である。
ハットドラール(Hat Dólar)
ハットドラールは、2013年8月6日にアルゼンチンのラ・ビスナーガ牧場で産まれた。父ハットトリック、母父サザンヘイローという血統である。2016年1月14日にウルグアイに輸出され、ウルグアイで競走生活を送った。通算成績は22戦11勝。2017年7月6日、マローニャス競馬場で行なわれたGⅢアソシアシオン・デ・プロピエタリオス・デ・S.P.C.(ダ1600m - 3歳以上)を9馬身差で勝利した。その他にもリステッド競走を2勝した。
■ GⅢアソシアシオン・デ・プロピエタリオス・デ・S.P.C.
2019年9月6日のレースを最後に現役を引退し、ウルグアイにあるグランハ・アニータ牧場で種牡馬入りした。同国スタッドブックによると、2019年は8頭と種付けし、翌年10月23日にキリコーチョ(Quiricocho)という牡馬の初仔が1頭だけ誕生した。2020年は16頭と種付けし、これから出産を迎える。
ハットマリオ(Hat Mario)
ハットマリオは2013年8月12日にアルゼンチンのラ・ビスナーガ牧場で産まれた。こちらは父ハットトリック、母父バーンスタインという血統である。通算成績30戦8勝、重賞3頭と活躍した。そのうち1勝は、2018年12月15日にサン・イシドロ競馬場で行なわれたGⅠホアキン・S・デ・アンチョレーナ(芝1600m - 3歳以上)である。
■ GⅠホアキン・S・デ・アンチョレーナ
2020年1月12日のレースを最後に現役を引退し、ウルグアイのムーサ牧場で種牡馬となることが発表された。同年8月30日にウルグアイへ輸出され、26頭と種付けを行なった。スタッドブックの出産情報はまだ更新されていない(※2021年9月1日閲覧)。
2頭の今後は?
2頭は種牡馬として活躍できるだろうか? 現状はかなり難しいと言わざるをえない。
ウルグアイ競馬は現在、エクレシアスティック(Ecclesiastic)の独裁状態である。新たにミッドシップマン(Midshipman)、ウィルテイクチャージ(Will Take Charge)、オーブ(Orb)、アルゴリズム(Algorithm)といった種牡馬もウルグアイ生産界に加わり、こうした強豪馬たちを相手に生き残るのは至難の業である。
また、グランハ・アニータ牧場もムーサ牧場も1軍の生産牧場ではない。ウルグアイでは基本的に自分の牧場で繋養している種牡馬と繁殖牝馬を交配させるので、ハットドラールもハットマリオも種付け回数に恵まれない。産駒数を伸ばせないということは、活躍馬を輩出できるチャンスも、種牡馬として名を上げるチャンスも少ないということである。
仮にその少ない産駒からGⅠを勝つような馬が出て、活躍を認められて大手牧場に移籍できればいい。しかし、ラ・コンコルディア牧場やフィリップソン牧場、クアトロ・ピエドラス牧場といった大手牧場は海外から種牡馬を輸入してくるので、移籍はほぼありえないだろう。
ハットドラールとハットマリオはウルグアイにおけるハットトリックの後継種牡馬だが、ハットトリックの血が父系において続いていくという可能性は低いだろう。
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木下 昂也(Koya Kinoshita)
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