• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

ウルグアイ競馬の本気:ドバイに再び現れる『侵略者』たち

写真:Haras La Concordia

https://haraslaconcordia.com/laconcordia/ejemplares-home?id_ejemplar=347786&tipo_vista=



 2007年3月31日、元ウルグアイ調教馬のインバソール(Invasor)がドバイWCを制した。それから14年経つ2021年、ウルグアイ競馬が再びドバイの地を侵略する。ウルグアイ競馬の調教師リーディングに君臨するブラジル人のアントニオ・シントラ調教師が管理する6頭が、1月からドバイ遠征を行なう。6頭の最終目標は3月のドバイWCデーへの出走である。以下、6頭のうち3頭の有力馬を簡単に紹介する。



アフステフィスカル(Ajuste Fiscal)


 イオヤビッグタイム産駒の4歳牡馬。2019年のGⅠポージャ・デ・ポトリージョス(宇2000ギニー)とGⅠジョッキークルブの牡馬2冠を制しただけなく、今年1月6日に行なわれたウルグアイのジャパンCに相当するGⅠホセ・ペドロ・ラミーレスをレースレコードで優勝した。数々の名馬を手掛けてきたシントラ調教師が、「これまで管理した中でもっとも優れたサラブレッド」と称するウルグアイ現役最強馬である。通算成績は10戦6勝(GⅠ3勝、GⅢ2勝)。アフステフィスカルはドバイWCへの出走を目指している。


■ GⅠホセ・ペドロ・ラミーレス



エルパトリオータ(El Patriota)


 エコロゴ産駒の3歳牡馬。名門ラ・ポーム牧場が今年もっとも素質を評価していた馬で、前評判どおり、GⅠナシオナル(宇ダービー)を3馬身差で快勝した。通算成績は4戦3勝(GⅠ1勝、GⅢ1勝)。こちらはUAEダービーを目標にしている。


■ GⅠナシオナル



アエロトレン(Aero Trem)


 シャンハイボビー産駒の5歳牡馬で、ブラジル産馬。2018年の2冠馬であり、今年1月6日のマイル王決定戦GⅠペドロ・ピニェイルーアを優勝した。通算成績は18戦8勝(GⅠ3勝、GⅡ1勝)だが、2000m以下のレースでは3着を外していない。ゴドルフィン・マイルが狙いと見られるが、実はまだ遠征が確定したわけではない。ウルグアイに残ってペドロ・ピニェイルーア連覇を目指す可能性もある。


■ GⅠペドロ・ピニェイルーア



 その他の3頭は、アルコラーノ産駒の4歳牡馬トランカフェッロ(Trancaferro)、トップハット産駒の6歳牡馬で、ペドロ・ピニェイルーアでアエロトレンの2着に入っているGⅢ3勝馬アルモラディ(Almoradi)、今年7月にデビューしたタイガーハート産駒の3歳牡馬で、ここまで短距離を4戦4勝と無敗のブラジル産馬アッパークラス(Upper Class)である。


 さて、海外遠征となると気になるのが鞍上である。これまで南米馬がドバイへ遠征するとなると、現地にいる騎手に乗ってもらう場合がほとんどだった。だが今回、アントニオ・シントラ調教師は秘策を用意した。アルゼンチン現役No.1、いや、南米現役No.1と称しても過言ではないフランシスコ・ゴンサルヴェス騎手を遠征に帯同させるのである。


 フランシスコ・ゴンサルヴェスはブラジル出身の31歳。競馬学校時代に、当時まだブラジルを拠点としていたアントニオ・シントラ調教師の手伝いをしていた関係で、二人の繋がりは深い。サンパウロで騎手デビューを果たすと、2012/2013シーズンのサンパウロ・リーディングを獲得し、2013年9月からアルゼンチンに移籍した。2014年に212勝をあげると、2015年146勝、2016年328勝、2017年231勝、2018年389勝、2019年392勝と、現在はアルゼンチン競馬のトップジョッキーである。2016年、2018年、2019年には騎手大賞も受賞している。また、騎乗技術の高さを買われ、アルゼンチンの名門オーナーブリーダーであるフィルマメント牧場(いわばノーザンファーム)と騎乗契約を結んでいる。今年も12月3日時点で159勝をあげ、勝利数・獲得賞金共にリーディングを走っている。


 ゴンサルヴェスが南米以外の国で騎乗するのはこれが初めてになる。ブラジル時代にはマレーシアから移籍のオファーがあったが断った。2015年にもシンガポールからオファーをもらったが、落馬による怪我で股関節を手術する必要があり、断念した。3度目のチャンスとなった今回は、かつての恩師アントニオ・シントラ調教師からのオファーであり、ドバイ行きを決断した。


「アントニオ・シントラからオファーをもらい、20日間はどうするか悩んだ。難しい決断だった。アルゼンチンからブラジルへ移籍したときとは比べ物にならない。アルゼンチンでの騎乗契約、とりわけフィルマメントとの契約を考えれば、簡単に決められるものではなかった。しかし、挑戦したい気持ちが強かった。ドバイの競馬を知りたい。今年はアメリカで騎乗する計画もあったが、コロナのせいで断念せざるをえなかった。まだ手続きが残っているし、これから渡航準備もしなければならない。プランとしては、来年1月から3月末までの2ヶ月間騎乗する。ドバイWCデーに騎乗するには、持ち馬が権利を得る必要があるので、運も必要になる。結果に関係なく、2ヶ月が終わったらアルゼンチンに戻る。フィルマメントにはすでに説明してある。私はこの遠征を非常に楽しみにしているし、忘れられない経験になるだろう」


 しかし、シントラ調教師の馬(主にアフステフィスカル)に騎乗しない可能性もある。それは、2019年のアルゼンチン2冠馬で、今年からアメリカに移籍したミリニャーケ(Miriñaque)がドバイ遠征する場合である。BCデーに行なわれたGⅡサラブレッド・アフターケア・アライアンスで2着に入ったこの芦毛馬は、アルゼンチン時代はゴンサルヴェスが主戦を務め、彼にダービージョッキーの称号をもたらした。「もしミリニャーケがドバイに来るのならば(たとえば、ドバイWCでアフステフィスカルとバッティングしてしまったら)、ミリニャーケに乗れるようシントラにお願いする。ミリニャーケを敵に回して走りたくない」と、ゴンサルヴェスは述べている。


 ウルグアイのトップホースに、アルゼンチンのNo.1ジョッキー。ウルグアイ競馬は本気で来年のドバイ開催での勝利を狙っている。南米からの『侵略者(Invasor)』が再び世界を征服するかもしれない。


----------

木下 昂也(Koya Kinoshita)

Twitter : @koyakinoshita24

G-mail : kinoshita.koya1024@gmail.com

最新記事

すべて表示