• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

カリフォルニアクロームはラミレスか、それともミセリか?

写真 : El Turf

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 2020年、チリ競馬に旋風を巻き起こした種牡馬がいる。コンスティテューション(Constitution)である。アメリカでティズザローがGⅠを4勝したことによりその名が人口に膾炙することとなったが、コンスティテューションが真の威力を発揮したのはチリだった。


 昨年、チリでは49頭の産駒が出走し、29頭が勝ち上がり、3頭のGⅠ馬が産まれた。通算成績は176戦39勝、うち5勝がGⅠ競走である。競走年代に達していたのは初年度産駒の1世代だけだったにもかかわらず、2020年チリ競馬の種牡馬リーディングで2位になったのである。1位のグランドダディーとは2500万ペソの差。これは日本円に換算して約370万円の差でしかない。勝率は22.2%とぶっちぎりの1位。2歳リーディングサイアーでも1位に輝き、当然、ファーストシーズンサイアーでも首位に君臨した。


 忘れてはならないのが、昨年はコロナウイルスによってチリ競馬が開催中止に追いこまれた。3月から6月までの2歳戦がすべてなくなった。もし中止がなければ、コンスティテューション産駒は総合リーディングも獲得していただろう。



■ 2020年のコンスティテューション産駒の成績。ブレークポイントの活躍もあり、1世代のみで総合2位に輝いた。



 2021年、コンスティテューションと同様の活躍を期待されている種牡馬がいる。カリフォルニアクローム(California Chrome)である。カリフォルニアクロームは2014年と2016年にアメリカ年度代表馬に輝いた、競馬史に名を残す名馬である。現役引退後はアメリカのテイラーメイド・ファームで種牡馬入りし、南半球の種付けシーズンはチリのスマージャ牧場にシャトルされた。現在は日本に輸入され、北海道新ひだか町のアロースタッドで繋養されている


 今年に入り、チリ・カリフォルニアクロームの初年度産駒がデビューした。しかし、思ったような戦果を得られていない。2018年産馬は62頭が登録されている。3月29日までに5頭がデビューし、勝ち上がったのはたった1頭。6戦1勝、2着1回、4着1回、着外3回という成績である。この6戦を人気と着順で見ると、


・ 1番人気 11着

・ 4番人気 6着

・ 5番人気 7着

・ 3番人気 6着

・ 1番人気 2着

・ 1番人気 4着

・ 1番人気 1着


 と、これまでカリフォルニアクローム産駒が人気以上の着順に来たことは一度もない。2歳リーディングサイアーの順位では、1位のグランドダディー、2位のシーキングザダイヤとは水を開けられている。



■ 3月29日時点での2歳リーディングサイアー(2018年産馬)



 カリフォルニアクロームと同じく、2018年産馬が初年度となる他の種牡馬とも比べてみよう。


・ ドバイスカイ(Dubai Sky)

産駒31頭 / 10頭出走 / 4頭勝ち上がり / 17戦4勝


・ フライヤー(Flyer)

産駒20頭 / 11頭出走 / 2頭勝ち上がり / 21戦2勝


・ ザランバーガイ(The Lumber Guy)

産駒26頭 / 7頭出走 / 2頭勝ち上がり / 15戦2勝


・ アオーラ(Ahora)

産駒15頭 / 3頭出走 / 1頭勝ち上がり / 7戦2勝 / GⅢ1勝


・ソノーマバンド(Sonoma Band)

産駒7頭 / 4頭出走 / 2頭勝ち上がり / 6戦2勝


 これらの種牡馬は、カリフォルニアクロームよりも現役時代の実績ではるかに劣り、また産駒数も少ないにもかかわらず、カリフォルニアクロームの数字をしのいでいる。昨年のコンスティテューションと比べると、カリフォルニアクローム産駒は明らかにインパクト不足と言わざるをえない。



■ チリ・カリフォルニアクローム産駒初勝利をあげたインクレディブル(Incredible)



 コンスティテューションとカリフォルニアクロームにはどうして差がついたのだろうか? 2つの理由が考えられる。1つは『種牡馬差』である。つまり、コンスティテューションのほうが種牡馬として優れているということである。


 だが、個人的には『牝馬差』のほうが大きいと考える。コンスティテューションはドン・アルベルト牧場で供用された。ドン・アルベルト牧場は、ユニークベラの所有者としても有名であるように、チリ国内に留まらず、世界屈指のオーナーブリーダーである。チリでは毎年のように生産者リーディングを獲得し、良質な繁殖牝馬がそろっている。一方、カリフォルニアクロームが供用されたスマージャ牧場は、チリでは有力な生産牧場であり、数々の名馬を輩出しているが、ドン・アルベルト牧場と比べるのはあまりにも酷である。コンスティテューションと種付けされた牝馬と、カリフォルニアクロームと種付けされた牝馬では、質において大きな差がある。この差が産駒にも現れているのではないだろうか。



■ 2020年の生産者リーディング。獲得賞金(Sumas Ganadas)を見れば分かるように、ドン・アルベルト牧場が圧倒的である。



 とは言っても、カリフォルニアクロームに種牡馬失格の烙印を押すのは時期尚早である。現状はモーリスの例を思い出させる。モーリス初年度産駒がデビューしてまもなく、良血馬・人気馬がことごとく飛び、モーリス産駒は走らないのではないかという不安の声が聞かれた。だが、ルークズネスト、シゲルピンクルビー、ピクシーナイトとすでに3頭の重賞馬を輩出しており、今では誰も種牡馬モーリスがダメだとは思わない。わずか数頭の産駒の結果で、種牡馬の価値を決めることはできない――わずか数頭の結果が、今日の種牡馬戦国時代においては今後を左右しうるのかもしれないが――。


 チリの2歳戦が始まってから4ヶ月しか経っていない。本番を迎えるのはこれからであり、その間にカリフォルニアクローム産駒の歯車が噛み合ってくるかもしれない。カリフォルニアクロームが日本に導入されたことを考えると、チリ・カリフォルニアクローム産駒がアレックス・ラミレスのように期待に応えるのか、それともダン・ミセリのように期待を裏切り続けるのか、注意深く見ていく必要があるだろう。


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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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