
木下 昂也(Koya Kinoshita)
サンパウロGⅠデー、名手と新星の共演
5月14日から16日にかけて、ブラジルのサンパウロにあるシダーヂ・ジャルディン競馬場でGⅠ5つ、GⅡ1つ、GⅢ1つの計7重賞が開催された。今回は各レースの結果をまとめると共に、このGⅠデーで興味深かった点について述べる。
【5月14日】
GⅢ プレジデンチ・アウグスト・ヂ・ソウザ・ケイロス(ダート1400m - 2歳)
1着 アーリーウープ(Alley-Oop)
騎手:ジーン・アルヴェス
父:タイガーハート
勝ちタイム:1分24秒82
GⅠ ジュリアーノ・マルチンス(芝1500m - 2歳)
1着 キープコジェール(Keep Koller)
騎手:ブルーノ・ケイロス
父:コジェール
勝ちタイム:1分28秒83
GⅠ ジョアン・セシーリオ・フェハス(芝1500m - 2歳牝馬)
1着 ヴェナトリクス(Venatrix)
騎手:ミシェル・プラチニ
父:タイガーハート
勝ちタイム:1分29秒39
【5月15日】
GⅠ A.B.C.P.C.C.(芝1000m - 3歳以上)
1着 イタペルーナ(Itaperuna)
騎手:ジョルジ・ヒカルド
父:フォレストリー
勝ちタイム:54秒08
GⅠ O.S.A.F.(芝2000m - 3歳以上牝馬)
1着 エルキス(Helquis)
騎手:ブルーノ・ケイロス
父:ワイルドイヴェント
勝ちタイム:2分0秒37
【5月16日】
GⅡ プレジデンチ・ダ・ヘプブリカ(芝1600m - 3歳以上)
1着 オリンピックジョンスノー(Olympic Johnsnow)
騎手:ウィルクリー・シャヴィエル
父:アグネスゴールド
勝ちタイム:1分34秒39
GⅠ サンパウロ(芝2400m - 3歳以上)
1着 ヘッドオフィス(Head Office)
騎手:ジョルジ・ヒカルド
父:ワイルドイヴェント
勝ちタイム:2分27秒23
5つ行なわれたGⅠ競走のうち、2つをジョルジ・ヒカルド騎手が、2つをブルーノ・ケイロス騎手が優勝した。ヒカルド騎手は今年60歳、ケイロス騎手は今年20歳。歳の差40歳コンビが躍動した。
ジョルジ・ヒカルド騎手に関して今さら詳しく紹介することはないだろう。2020年9月25日に通算1万3000勝を達成し、世界最多勝利記録を今なお更新中である。だが、ここ2年は苦しい時間を過ごした。2019年5月29日に落馬で首の骨を骨折。復帰まで半年以上を要する大怪我だった。2020年はCovid-19の影響で南米の競馬開催が中止に。拠点としていたアルゼンチンは3月から約半年も競馬がストップした。そのため、比較的早くに開催を再開した母国ブラジルに戻って騎乗を続けた。今回のGⅠA.B.C.P.C.C.が、ブラジル復帰後初のGⅠ勝利となり、翌日にはサンパウロ地区最大のGⅠ競走サンパウロを、2005年のマクベス以来16年ぶりに優勝した。1994年のマッチベターでの勝利に加えて通算3勝目である。これまで大怪我・大病を経験し、今年いよいよ還暦を迎えるが、世界一の騎手に衰えはまったく見られない。1万4000勝も不可能ではない。
ヒカルド騎手と親子ほど年齢の離れているブルーノ・ケイロス騎手は、今年20歳になるブラジル期待の若手である。2017/2018シーズンにデビューし、2018年1月8日のガヴェア競馬場8Rで初勝利をあげたものの、このシーズンはわずか9勝に終わった。しかし、翌2018/2019シーズンは186勝を稼いでいきなり騎手リーディング2位になると、2019/2020シーズンは167勝でリーディング1位に輝いた。2020年6月7日のGⅠゼリア・ゴンザーガ・ペイショット・ヂ・カストロでは、タンガニーカに騎乗してGⅠ初勝利をあげただけでなく、
マイスキボニータの牝馬3冠を阻止してみせた。今シーズンも5月16日までに133勝、GⅠ2勝を含む重賞9勝の大活躍でリーディング首位を走っている。憧れの騎手として名前を挙げているのが香港のジョアン・モレイラで、自身も海外で騎乗することを目標にしている。近い将来移籍することは間違いない。どの国に移籍しようと、その国の競馬はブルーノ・ケイロスに蹂躙されるだろう。それほど末恐ろしい才能の持ち主である。
6月にガヴェア競馬場で3歳以上のGⅠが1つ、2歳GⅠが3つ残っているものの、このサンパウロGⅠデーをもって、ブラジルの競馬シーズンは一段落したと言える。次のビッグレースは、8月にガヴェア競馬場で行なわれるブラジル最大のGⅠ競走ブラジルである。
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木下 昂也(Koya Kinoshita)
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