• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

スペイン語馬名のカタカナ表記は間違いだらけ?

 日本の競馬メディアは、競馬は英語圏でしか行なわれていないと思っているのか、それとも、外国語は英語しかないと勘違いしているのか、どうも英語以外の言語で付けられた馬名や騎手名のカタカナ表記に敬意を払っていないように感じます。そこで今回は、代表的なスペイン語馬名をピックアップして、誤ったカタカナ表記を訂正したいと思います。


■ Potrizaris("z"の表記の仕方)  ディアデラノビアの母として有名なアルゼンチン産馬です。1998年に牝馬ながらアルゼンチンのダービーにあたるGⅠナシオナル(ダート2500m)を制しました。以来、牝馬によるナシオナル制覇はありません。日本での登録名は『ポトリザリス』となっています。しかし、スペイン語の"z"はサ行で発音するため、正しくは『ポトリサリス』となります。


■ Invasor("b"と"v"の発音)  無敗でウルグアイ三冠を制覇した後、アメリカに移籍してBCクラシックやドバイWCを制覇した名馬中の名馬です。ウイニングポストのプレイヤーにはお馴染みの存在でしょう。Invasorとはスペイン語で『侵略者』の意味です。日本では『インヴァソール』と英語風に下唇を噛む発音で表記されます。しかし、スペイン語では"v"は"b"と同じ発音をし、ヴァと下唇を噛む音は存在しません。したがって、『インバソール』と書くのが正しいでしょう。


■ Unique Bella("lla"の発音)  Unique Bellaはチリのドン・アルベルト牧場が生産・所有し、アメリカでGⅠ3勝をあげた名牝です。日本語では『ユニークベラ』と表記されています。"Unique"は英語なので『ユニーク』で良いでしょう。しかし、"Bella"はスペイン語で『美しい』という形容詞なので、スペイン語表記がベターでしょう。スペイン語で"lla"の表記は3種類あります。『リャ』『ジャ』の2つが一般的で、これはどちらでも構いません。もう一つは、アルゼンチンとウルグアイの方言で『シャ』と発音することがあります。Unique Bellaはチリの馬なので、『ユニークベーリャ』もしくは『ユニークベージャ』が正しいでしょう。


 同様の事例として、アメリカで活躍しているベネズエラ人騎手Emisael Jaramilloがあげられます。日本では『エミサエル・ハラミーヨ』と呼ばれていますが、どこら『ヨ』の音が出てきたのか理解できません。"llo"なので、『ハラミーリョ』もしくは『ハラミージョ』としか書けないのですが......


■ Imagen de Roma("ge"は『ゲ』ではない)  サウジアラビアで行なわれるGⅠネオムターフの出走予定馬に、Imagen de Romaというアルゼンチン産馬がいます。馬名はスペイン語で『ローマの姿(映像)』という意味です。"ge"はスペイン語では『ヘ』と発音するので、正しい表記は『イマヘンデローマ』となります。では、『ゲ』はどう書くのかというと、"gue"となります。これが"güe"とディエレシスという発音記号がuの上につくと『グエ』と発音します。


■ Malacostumbrada(意味不明)  レシステンシアの母です。どのメディアも『マラコスタムブラダ』と表記していますが、意味不明です。スペイン語は大抵そのままアルファベット通りに読めばいい言語なので、『マルアコストゥンブラーダ』もしくは『マラコストゥンブラーダ』にしかなりません。"tum"を英語式に『タム』と読んだと思うのですが......なぜ?



 報道では固有名詞の間違いはご法度です。外国語をカタカナ表記するというのは非常に難しい作業ですが(特にフランス語とアラビア語は地獄)、「面倒だからとりあえず英語風に読んどけ」という怠慢は捨てて、少しでも原音に近い表記を心がける努力を競馬メディアはするべきです。もし、"Yutaka Take"が英語式に『ユタカ・テイク』と呼ばれていたら、"Nanako Fujita"がスペイン語式に『ナナーコ・フヒータ』と呼ばれていたら、日本の競馬ファンは怒るでしょう?


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木下 昂也(Koya Kinoshita)

Twitter : @koyakinoshita24

G-mail : kinoshita.koya1024@gmail.com

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