• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

チリにいるシーキングザダイヤが復調気配

 まずは下の図を見てほしい。


 これはシーキングザダイヤのチリにおける種牡馬成績である。2013年にデビューを迎えた初年度産駒から牝馬のサファウィ(Safawi)がいきなり重賞4勝をあげると、翌年には133勝、GⅠ2勝を稼ぎ、わずか2世代ながら種牡馬リーディングで5位に入った。2016年には223勝、重賞10勝、うちGⅠ3勝という大活躍を見せ、チリの種牡馬リーディングを獲得した。ロックオブジブラルタル(Rock Of Gibraltar)やスキャットダディ(Scat Daddy)を抑えての首位である。


 しかし、2016年をピークに成績は徐々に下降していった。毎年100勝以上をあげて勝利数・リーディング順位共に安定していたものの、マスタークラフツマン(Mastercraftsman)、ルッキンアットラッキー(Lookin At Lucky)、グランドダディ(Grand Daddy)といった種牡馬の台頭もあり、2018年、19年には重賞を勝利することができなかった。2020年は新型コロナウイルスによる競馬中断の影響もあり、ついに年間100勝を下回った。シーキングザダイヤの重要性はこのまま低下していくものと思われた。


 だが、昨年末から流れが変わった。具体的な日付を挙げると、2020年11月14日である。この日、チレ競馬場で行なわれた古馬最強ダート馬を決めるGⅠ競走イポドロモ・チレを、シーキングザダイヤ産駒の4歳牡馬ロベリウス(Lobelius)が優勝した。2017年11月26日にトップカサブランカ(Top Casablanca)がGⅢ競走を制して以来、約3年ぶりの重賞制覇だった。この年は12月6日にも3歳牝馬パシエレ(Pashiere)がGⅢを勝利した。


 2021年、そのパシエレがGⅡを連勝し(※1つは2着入線 ⇒ 繰り上がり優勝)、2歳牝馬ヴィータダマンマ(Vita Da Mamma)がGⅠアルトゥーロ・リオン・ペーニャで圧倒的1番人気だった素質馬イナダマス(Y Nada Más)を下して優勝した。2歳GⅠの勝利は、2016年のサローナ(Sarona)以来、実に5年ぶりである。勝ち星もすでに74勝をあげ、昨年の93勝は優に超えるだろう。現在の種牡馬リーディングは5位で、1位のグランドダディを交わすのは難しいだろうが、2位のジェモロジスト(Gemologist)とは獲得賞金額で3000万ペソの差なので、下半期も産駒が結果を残せれば、2016年以来となるトップ3入りも見えてくる。今年20歳になったが、老いては益々壮んなるべし。シーキングザダイヤが復調している。


 シーキングザダイヤの後継種牡馬はいるのか?


 状況はかなり厳しい。これまでシーキングザダイヤ産駒はチリで重賞を34勝し、うち牝馬が16勝、牡馬が18勝と互角である。牡馬の重賞勝ち馬には、ソーノビアンコネーロ(Sono Bianco Nero)、トップカサブランカ、ハレック(Halek)、リオアスール(Río Azul)、リオアジペン(Río Allipén)、ジャッコズ(Jacko's)、クリッパートン(Clipperton)、ロベリウス(Lobelius)がいる。この中で種牡馬になったのはトップカサブランカのみである。2020年にトップカサブランカの初年度産駒が誕生したが、わずか2頭。後継となる可能性は極めて低いだろう。前述のロベリウスは現役を続けているが、GⅠイポドロモ・チレ優勝後は不調に陥り、ここ3戦はビリ、ビリ、ブービーである。種牡馬入りの見込みは薄い。


 加えて、チリは基本的に輸入種牡馬を起用する。最近ではコンスティテューション、カリフォルニアクローム、メンデルスゾーン、クラシックエンパイア、ティズザロー、キングリー、プラクティカルジョークといった種牡馬が導入されており、内国産種牡馬に用意された席は非常に少ない。シーキングザダイヤの後継種牡馬が仮に現れたとしても、活躍の機会を与えられることはほぼないだろう。


 だが、大きな希望が1つある。シーキングザダイヤに初めてチリ重賞をプレゼントしたサファウィが、コンスティテューションとの間にブレークポイント(Breakpoint)という牡馬を産んだ。昨年、ブレークポイントは5戦5勝GⅠ3勝と完璧な成績を残し、アメリカのチャド・ブラウン厩舎に移籍した。アメリカでも結果を出せば、種牡馬になれるかもしれない。シーキングザダイヤの後継ではないが、ブレークポイントを通じてシーキングザダイヤの名が血統表に残ることはありうる。もちろん、これからデビューする仔、産まれる仔の活躍にも期待したい。


■ シーキングザダイヤ産駒のチリ重賞成績


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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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