• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

チリ・カリフォルニアクロームの低空飛行:日本は外れクジを引いたのか?

 6月30日をもって2021年の上半期が終わった。すなわち、南半球の競馬では2歳シーズンが終わったということである。それと共に様々な結果が見えてきた。たとえば、種牡馬成績。とりわけ、2018年世代が初年度となる種牡馬の成績には注目したい。


 テニスのロジャー・フェデラーに、サッカーのリオネル・メッシに、野球の大谷翔平にファンが多いように、強い馬にも多くのファンがついている。彼ら人気者に対するファンの愛情は深い。フェデラーやメッシ、大谷を批判すれば、批判している人を奇人、変人、狂人扱いする。名馬に関しても同じである。最近の例を挙げるならば、「コントレイルは弱い」という主張に対して、コントレイルのファンからしたら親を殺されたほどの怒りを覚えるだろう。


 これから筆者はカリフォルニアクローム(California Chrome)をこき下ろすのだが、カリフォルニアクロームのファンからすれば、そんなのはガセだと内容を切り捨てるだろうし、筆者をクソッタレの大バカ野郎と侮辱したくなるだろう。だが、大事なことを忘れてはならない。数字は決してウソをつかない。数字を見れば、チリ・カリフォルニアクロームは失敗に終わったのことが明らかである。


 チリのスマージャ牧場でシャトル種牡馬として繋養されていたカリフォルニアクロームは、2018年世代がチリでの初年度産駒にあたる。競走馬としての通算成績は27戦16勝、GⅠを7勝、ケンタッキー・ダービーとプリークネスSの2冠馬、ドバイWC優勝、2014年と2016年のアメリカ年度代表馬に選出された。これほどの名馬が南米の地を踏む機会は滅多にない。種牡馬としてどれほどの成功をおさめるのかと、期待が膨らむのは当然である。


 では、チリ・カリフォルニアクローム初年度産駒の成績はどうだったのか? 以下、2021年1月1日から6月30日までにおける出走馬と成績を掲載した。


California Game 1戦0勝

California Spring 5戦1勝 芝1000m

California Storm 3戦1勝 芝1000m

California Thunder 2戦0勝

California Warrior 5戦0勝

Californian Spirit 2戦0勝

Cartera Vieja 2戦0勝

Cederic 1戦0勝

Cereza Dorada 1戦1勝 芝1000m

Cugarat 2戦1勝 芝1000m

Datsusara 1戦0勝

Don Cangrejo 1戦0勝

Doña Athenea 3戦0勝

El Bingo 2戦0勝

Exclusive Raider 5戦1勝 ダ1200m

Gatito Mojado 4戦0勝

Going Fast 2戦0勝

Golden Image 3戦0勝

Golden Lava 4戦1勝 芝1000m

Hotel California 2戦1勝 ダ1200m

Incredible 4戦1勝 ダ1200m GⅢ8着/9頭

King Tiger 3戦1勝 芝1000m

La Gaffe 2戦0勝

Lucy Lou 3戦0勝

Nordic fighter 4戦0勝

Ocean California 2戦1勝 ダ1000m

Power Denver 4戦0勝

Princesita Chrome 1戦0勝

Victory Chrome 1戦0勝

Wild California 4戦1勝 芝1000m


 通算成績は79戦11勝。2勝以上した馬はおらず、重賞を勝った馬はいない。2歳GⅠへの出走がないどころか、2歳重賞の出走も1回のみである。2歳リーディングでは12位と低迷した。11勝の内訳を見ると、芝で7勝、ダートで4勝、距離は1000m~1200mに限定される。カリフォルニアクロームは21世紀の名馬に求められた仕事を果たせたか? これらの数字を見て「イエス」と頷く人はいないだろう。


 種牡馬生活はまだ始まったばかりだ、との反論が出るかもしれない。理解できる。だが、種牡馬には助走も研修も試用期間も許されない。とりわけ、今日の種牡馬過多、種牡馬戦国時代では、いくら歴史に名を刻んだ駿馬とはいえ、初年度産駒から活躍馬を輩出できなければ、信用はあっという間に地に落ちる。


 次に、カリフォルニアクロームと同じく2018年世代が初年度にあたるチリの他の種牡馬の成績を見ていく。ドバイスカイ(Dubai Sky)、フライヤー(Flyer)、ザランバーガイ(The Lumber Guy)、アオーラ(Ahora)、ツーリスト(Tourist)、ソノーマバンド(Sonoma Band)などが該当する。いずれも、競走馬としてはカリフォルニアクロームに人気も実力も到底敵わない。


 ドバイスカイはGⅡ2勝のスーペルオチョ(Súper Ocho)を輩出した。その他の産駒もリステッド競走や重賞で好走し、ファースト・シーズン・サイアー・チャンピオンに輝いた。フライヤー産駒ではドミトリーニ(Domi Trini)がGⅢを勝ち、ビビールコンアレグリーア(Vivir Con Alegría)がGⅠで2着になった。ザランバーガイ産駒の牡馬ワイウェン(Waiwen)は重賞を2勝し、GⅠタンテオ・デ・ポトリージョスでは3着に入った。アオーラ産駒の牝馬ラトラーファ(La Trafa)も重賞を2勝し、先日行なわれた2歳GⅠは体調が整わずに回避することになったが、チリ2歳牝馬ダート路線の主役を演じた。3歳になっても注目したい。本来なら第一線で活躍していなければならないはずのカリフォルニアクローム産駒に替わり、実力でははるかに劣る新種牡馬たちの産駒が躍動した。


 2018年世代が初年度にあたる種牡馬を南米全域に広げよう。アルゼンチンではダニエルブーン(Daniel Boone)とスーパーセイヴァー(Super Saver)がGⅠ馬を、ヒットイットアボム(Hit It A Bomb)が重賞馬を輩出した。ブラジルではコジェール(Koller)の仔であるキープコジェール(Keep Koller)がGⅠを優勝した。以前アルゼンチンでは供用されていたものの、ブラジルでは2018年世代が初年度となるハットトリック(Hat Trick)も、GⅠ馬マカダミア(Macadamia)の父となった。ペルーではサイラスアレクサンダー(Cyrus Alexander)が2歳種牡馬リーディングのトップを走っている。このように、南米各国で新種牡馬たちが成果を上げている。カリフォルニアクロームは置いてけぼりをくらっていると言わざるをえない。


 カリフォルニアクロームは日本で種牡馬として供用されることになった。日出ずる国でカリフォルニアクロームは活躍できるか?


 それはやってみなければ分からない。やる前から失格の烙印を押すのは暴論である。チリではダメでも、日本の馬場やペース、環境が合うかもしれない。だが、現状の数字を見るかぎり、カリフォルニアクロームが日本で成功できる可能性は低い。チリでの実績から推測するに、新馬・未勝利クラスの短距離戦を勝つ程度だろう。優れた競走馬が必ずしも優れた種牡馬になれるわけではない。


 チリでは7月から3歳シーズンが始まる。これから競走馬デビューする産駒もいる。チリ・カリフォルニアクロームがいよいよ爆発するのか、それともこのまま低空飛行を続けるのか、引き続き注目していく必要がある。日本競馬にとっても他人事ではないのだから。


【まとめ】

◇ チリ・カリフォルニアクロームの初年度産駒(2歳シーズン)は散々だった。

◇ 他の新種牡馬と比べても貧相な成績である。

◇ 日本で活躍できるかは不明だが、あまり期待は抱けない。


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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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