• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

チリ競馬に走ったコンスティテューションの衝撃

写真:El Turf

https://elturf.com/ejemplares-campana?id_ejemplar=422917&tipo_vista=



 サンデーサイレンスが種牡馬として日本に導入されることが決まったとき、競馬ファンはどのような反応をしただろう。まだ生まれていなかった私は、もちろん当時の様子を知る由もない。しかし、なんとなく予想はつく。ハービンジャーが日本に来るとなったとき「ふーん」と思ったように、カリフォルニアクロームが日本に来るとなったとき「へぇー」と思ったように、多くの競馬ファンは、「アメリカから凄い馬が来るんだね」くらいの落ち着いた反応を示したのではないだろうか。1994年にデビューを迎えた初年度産駒から、フジキセキ、ジェニュイン、タヤスツヨシといった名馬が誕生したところで、ようやく彼らはサンデーサイレンスの衝撃に気づいたはずである。


 2020年、サンデーサイレンスが日本競馬に与えたのと似たような衝撃がチリ競馬で走った。7月に3歳を迎えたコンスティテューションの初年度産駒が大ブレイクしたのである。


 コンスティテューションは、2011年2月11日にアメリカのケンタッキーで産まれたタピット産駒の牡馬である。通算成績は8戦4勝、フロリダ・ダービーとドン・ハンディキャップの2つのGⅠを制した。2015年のGⅠジョッキー・クラブ・ゴールド・カップ・ステークスを最後に現役を引退し、2016年からウィンスター・ファームで種牡馬となっている。初年度産駒となるティズザローがシャンペン・ステークス、フロリダ・ダービー、ベルモント・ステークス、トラヴァーズ・ステークスとGⅠを4勝し、一躍その名が有名となった。


 2016年の下半期は、チリにあるドン・アルベルト牧場でシャトル種牡馬として繋養された。ドン・アルベルト牧場は名門牧場、いわば、チリのノーザン・ファーム的存在といえる。タンタアレグリアの母タンタスエルテはここの生産馬であり、また、アメリカGⅠを3勝したユニークベラの馬主でもある。初年度となる2017年、チリ産のコンスティテューション産駒が67頭(牡馬33頭、牝馬34頭)誕生した。その中から、3頭の活躍馬を紹介する。



ブレークポイント(Break Point)


 母にシーキングザダイヤ産駒のGⅡ馬サファウィを持つ、2015年7月15日産まれの良血牡馬。馬主はR.T.で、管理するのはパトリシオ・バエサ調教師。8月17日に行なわれたサンティアゴ競馬場の芝1600m戦でデビューすると、ここからブレークポイントの快進撃が始まった。9月11日の一般戦にも勝利すると、続く10月2日のGⅠポージャ・デ・ポトリージョス(芝1700m)で初GⅠ勝利をおさめた。勢いは止まらず、11月1日のGⅠナシオナル・リカルド・リオン(芝2000m)、12月6日のGⅠエル・エンサージョと、サンティアゴ競馬場で開催される3つの3歳GⅠ競走を完全制覇した。通算成績は5戦5勝(GⅠ3勝)と、チリ3歳戦線の芝王者に君臨している。次走は来年2月にバルパライソ競馬場で行なわれるエル・デルビー(チリ・ダービー)が濃厚だが、海外から移籍のオファーも来ているとのこと。


■ GⅠポージャ・デ・ポトリージョス


■ GⅠナシオナル・リカルド・リオン


■ GⅠエル・エンサージョ



アラスカンクイーン(Alaskan Queen)


 2017年8月12日産まれの牝馬。馬主はドン・アルベルト牧場で、管理するのはホルヘ・アンドレス・インダ調教師。8月24日にサンティアゴ競馬場で行なわれた3歳牝馬限定の芝1600m戦を5馬身差で快勝すると、2戦目となった10月4日のGⅠポージャ・デ・ポトランカス(芝1700m)で見事にGⅠ制覇を果たした。3戦目のナシオナル・リカルド・リオンで牡馬に挑んでブレークポイントの2着に入り、コンスティテューション産駒のワン・ツーを演出した。4戦目のエル・エンサージョでは距離が合わなかったのか、8頭立ての7着に敗れ、通算成績は4戦2勝(GⅠ1勝)となった。チリ3歳牝馬の芝路線の主役を張っている。


■ GⅠポージャ・デ・ポトランカス



ファーストコンスティテューション(First Constitution)


 2017年10月5日産まれの牡馬。馬主はセネイセで、管理するのはカルロス・ウルビーナ調教師。芝の逸材がブレークポイントならば、こちらはダートの怪物である。9月26日にチレ競馬場で行なわれたダート1200mを15 3/4馬身差で圧勝すると、とてつもない馬が現れたとチリ競馬メディアで話題となった。2戦目は10月10日のダート1500m戦で、ここも2着に14馬身をつける大楽勝。3戦目のGⅠグラン・クリテリウム・マウリシオ・セラーノ・パルマ(ダート1900m)では、重賞未勝利ながら単勝1.40倍と圧倒的1番人気に支持され、8馬身差ぶっちぎってGⅠ初勝利を飾った――ファーストコンスティテューションについては、別の記事で詳しく書いたので、そちらも参考にしてください――。次走は、12月19日にチレ競馬場のダート2200mで行なわれるGⅠセントレジャーである。


■ GⅠグラン・クリテリウム・マウリシオ・セラーノ・パルマ



 2020年12月9日現在のチリ・スタッドブックの統計によると、コンスティテューション産駒は48頭出走し、25頭が勝ち上がり、うち3頭はGⅠ馬である。産駒の出走回数は153回で、34勝をあげ、うち5勝がGⅠである。今年、チリではこれまでGⅠが10競走あったので、半分をコンスティテューション産駒が制したことになる。


 競走馬齢に達しているチリのコンスティテューション産駒は、2017年産の1世代しかいない。しかし、上述の馬たちの活躍もあり、種牡馬リーディングで上位につけている。2017年産種牡馬リーディングでは、グランドダディー(206回出走/46勝)とヴェラザーノ(188回出走/37勝)には勝ち星でおよばないものの、獲得賞金では1億ペソ(約1400万円)もの差をつけて首位に君臨している。


 驚くべきは、1世代しかいないにもかかわらず、総合ランキングでも獲得賞金額で2位につけていることである。ルッキンアットラッキー(759回出走/109勝)やシーキングザダイヤ(892回出走/85勝)、マスタークラフツマン(651回出走/95勝)といったチリのエース種牡馬よりも上に位置している。加えて、首位のグランドダディーとも2000万ペソ(280万円)差である。12月19日にファーストコンスティテューションが出走するGⅠセントレジャーの1着賞金が7000万ペソなので、結果いかんではコンスティテューションが首位に躍り出る可能性がある。


 コンスティテューションは2017年の下半期もドン・アルベルト牧場にシャトルされ、2018年には77頭の産駒が産まれている(牡馬45頭、牝馬32頭)。その中には、ファーストコンスティテューションの全弟も含まれている。今年8月に同牧場で開催された2歳馬のセリでは、半兄に重賞馬のいるコンスティテューション産駒が1億5000万ペソ(2100万円)という高値で落札された。チリでのコンスティテューションの評価は急上昇している。


 初年度産駒から3頭ものGⅠ馬を輩出し、種牡馬リーディングも獲ろうかというコンスティテューションの勢いは計り知れない。この衝撃はチリだけでなく、まもなく世界中に広がるだろう。SNSで大胆にもこのように断言した身として、チリ産コンスティテューション産駒から目が離せない。


---------- 木下 昂也(Koya Kinoshita) Twitter : @koyakinoshita24 G-mail : kinoshita.koya1024@gmail.com