• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

ノーブルマーズを種牡馬にしなければならない理由

 ディアデラノビア、ペルーサ、サトノダイヤモンド、ダノンファンタジー、レシステンシア……。これらの馬は、近ごろ日本競馬で活躍著しいアルゼンチン牝系の馬です。「アルゼンチン牝系って何?」という方のために簡単に説明すると、母がアルゼンチン産馬、もしくは、母母がアルゼンチン産馬、母母母が……という馬です。アルゼンチン産馬は、馬名の隣に(ARG)と表記されます。たとえば、サトノダイヤモンドの母マルペンサ、マカヒキの母母リアルナンバーはアルゼンチン産まれであり、アルゼンチンで競走生活を送り、その後繁殖牝馬として日本やアメリカへ輸出されました。


 ノーブルマーズもアルゼンチン牝系の1頭です。母のアイアンドユーはアメリカ産馬ですが、母母のターバはアルゼンチン産馬であり、現役を引退後にアメリカで繁殖牝馬となり、アイアンドユーを産みました。そのアイアンドユーが日本に輸入され、ジャングルポケットとの間に誕生したのがノーブルマーズです。


 しかし、ノーブルマーズはただのアルゼンチン牝系の1頭ではありません。サトノダイヤモンドでもマカヒキでも到底敵わないほど、貴重な血統の持ち主なのです。ノーブルマーズの牝系は、ワインでいうところのロマネコンティ、ヴァイオリンでいうところのガルネリ・デル・ジェスです。



 5代血統表を見ていきましょう。ノーブルマーズの母母母にフィリピーナ(Filipina)というアルゼンチン馬がいます。このフィリピーナが、アルゼンチン競馬史上1,2を争うほどの名繁殖牝馬なのです。日本でたとえるなら、ドリームジャーニーとオルフェーヴルを輩出したオリエンタルアートをイメージしてもらえると分かりやすいかもしれません。


 フィリピーナの2番目の産駒にテレフォニコ(Telefónico, 父テーブルプレイ)という馬がいます。テレフォニコはアルゼンチンの2000ギニーにあたるGⅠポージャ・デ・ポトリージョスと、古馬GⅠサン・イシドロを制した名馬です。現役引退後は種牡馬となり、産駒のサルバテテルが1985年に南米版凱旋門賞と呼ばれることのあるGⅠカルロス・ペジェグリーニを優勝しました。


 フィリピーナの4番目の産駒が、ノーブルマーズの母母ターバ(Taba, 父テーブルプレイ)になります。ターバは現役時代にアルゼンチンの1000ギニーにあたるGⅠポージャ・デ・ポトランカスを制した名牝です。アメリカで繁殖牝馬になり、ターコマンという牡馬を産みました。ターコマンはGⅠマールボロC招待Hなどを制し、1986年にアメリカ最優秀古馬牡馬に選出されました。つまり、ノーブルマーズの母アイアンドユーは、ターバの娘であり、ターコマンの半妹という超良血馬です。


 極めつけは、フィリピーナの5番目の産駒テレスコーピコ(Telescópico, 父テーブルプレイ)です。テレスコーピコは女性騎手マリーナ・レスカーノを背に、1978年にGⅠポージャ・デ・ポトリージョス、GⅠジョッキークルブ、アルゼンチンのダービーに相当するGⅠナシオナルのアルゼンチン3冠を制するだけでなく、同年のGⅠカルロス・ペジェグリーニも制し、アルゼンチン4冠を達成した伝説の馬です。アルゼンチン4冠はテレスコーピコから現在に至るまで、実に41年間も出ていません。


 テレフォニコ、ターバ、テレスコーピコを産んだフィリピーナは、おそらくアルゼンチンでもっとも偉大な血脈です。ノーブルマーズはこれら名馬を近親(親戚)に持ち、偉大な血を受け継いでいます。この血が地球の裏側で育まれているのは、奇跡と言っても過言ではありません。


 フィリピーナの血を持つ馬はこれまでも日本に存在しました。しかし、大した活躍をできませんでした。ノーブルマーズが出世頭であり、つまり、日本でフィリピーナの血を繋げる可能性を持っている馬はノーブルマーズだけです。ノーブルマーズは種牡馬になるべき存在です。


 しかし、冷静に見ると、ノーブルマーズが種牡馬になるのは現状では土台無理な話です。種牡馬になるための必須条件とも言えるGⅠを勝っていません。そして、関係者の皆様には大変失礼なことと承知していますが、GⅠを勝てる見込みもありません。


 そこで提案があります。


 もし日本で種牡馬になれないなら、ノーブルマーズをアルゼンチンの生産牧場に売りこんでみてはどうでしょうか? フィリピーナの血を持った日本のGⅠ3着馬、これは興味を持ってもらえると思います。なんなら、自分が生産牧場とのパイプ役になりましょう。それくらい、ノーブルマーズを種牡馬にしたい、フィリピーナの血を繋いでほしいと願っています。


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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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