• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

ハーツクライ×アルゼンチン牝馬、失敗の軌跡とその理由

 ハーツクライとアルゼンチン牝馬の組み合わせは、黄金配合になるという期待を抱いていました。ポテンシャルは高いが早熟傾向の強いアルゼンチン牝馬(正しくは、日本の牧場が早熟なアルゼンチン牝馬ばかりを輸入しているので早熟に見える)を、成長力に定評のあるハーツクライの血で伸ばせるのではないかと。2歳で能力の片鱗を見せ、3歳で才能が開花そ、古馬になってからも能力が衰えない、そんな怪物級の競走馬。サトノダイヤモンドが有馬記念で見せた強さが4歳でも5歳でも持続する、というイメージが分かりやすいかと思います。


 では実際に、ハーツクライ×アルゼンチン牝馬の産駒の成績を見てみましょう。漏れがあったらご容赦ください。


【2017年産まで(現3歳まで)】 ◆ アドマイヤベネラ 4戦1勝 ◆ エバーシャルマン 16戦2勝 ◆ エボカシオン 4戦0勝 ◆ オプティマイズ 3戦0勝 ◆ カラドゥラ 6戦0勝 ◆ スピリットソウル 23戦2勝 ◆ スワーヴカエサル 2戦0勝 ◆ ダノンセレスタ 6戦1勝 ◆ ダンサール 13戦3勝 ◆ バラダガール 11戦2勝 ◆ バラーディスト 10戦2勝 ◆ ヒシイグアス 8戦3勝 ◆ ビートフォーセール 9戦0勝 ◆ フィールザレースの17 未出走 ◆ ラクンパルシータ 2戦0勝 ◆ レノヴァール 17戦4勝 ※成績はJRAのみ。2020年6月12日まで。(以下同)

計16頭

通算成績:134戦20勝(14.9%) 未勝利馬:7頭 GⅠ馬:0頭 重賞馬:0頭 OP馬:1頭(※OP競走は未勝利)


 上記の数字が物語っているように、ハーツクライ×アルゼンチン牝馬は期待外れに終わっています。サトノダイヤモンド、クルミナル、ダノンファンタジー、サトノフラッグなど、活躍馬を容易に挙げられるディープインパクト×アルゼンチン牝馬とは大違いです。


「でも、それはディープインパクトの力でしょ? アルゼンチン牝馬とか関係なくない? それなのに、ハーツクライだけどうのこうの言うのはおかしくない?」

 という疑問が生じるかもしれません。


 しかし、ディープインパクトに限らず、他のサンデー系種牡馬×アルゼンチン牝馬でも、ピオネロ(父ネオユニヴァース)、リナーテ(父ステイゴールド)、レシステンシア(父ダイワメジャー)と、それなりに活躍馬がいます。サンデー系種牡馬の中でハーツクライだけが、種付け頭数も他と比べて多いにもかかわらず、ことごとく外れを引いているのです。


 ハーツクライ×アルゼンチン牝馬が期待外れに終わってしまうのは、父と母の良いとこ取りではなく、父と母の悪いとこ取りになってしまうことが理由だと考えます。つまり、アルゼンチン牝馬の早熟性をハーツクライの成長力が邪魔をしている、もしくは、ハーツクライの成長力をアルゼンチン牝馬の早熟性が邪魔をしているため、仕上がりもせず、熟しもせず、かつ、賞味期限切れの早い、中途半端な馬になってしまうのではないでしょうか。

 

 さらに暗い数字を出しましょう。アルゼンチン競馬ファンとしては出したくないところではありますが……。上述の一覧に、セリの落札価格を加えます。


【2017年産まで(現3歳まで)】 ◆ アドマイヤベネラ 4戦1勝  2億4840万円 ◆ エバーシャルマン 16戦2勝 3150万円 ◆ エボカシオン 4戦0勝  7776万円 ◆ オプティマイズ 3戦0勝 ◆ カラドゥラ 6戦0勝 ◆ スピリットソウル 23戦2勝 6912万円 ◆ スワーヴカエサル 2戦0勝  1億7280万円 ◆ ダノンセレスタ 6戦1勝  9720万円 ◆ ダンサール 13戦3勝 ◆ バラダガール 11戦2勝 ◆ バラーディスト 10戦2勝 ◆ ヒシイグアス 8戦3勝  1億476万円 ◆ ビートフォーセール 9戦0勝 ◆ フィールザレースの17 未出走  6264万円 ◆ ラクンパルシータ 2戦0勝 ◆ レノヴァール 17戦4勝


 目も当てられません。ぼったくりに遭ったといっても過言ではありません。おそらく、「父はあのディープインパクトを負かしたハーツクライ、母はアルゼンチンGⅠの勝ち馬」という宣伝文句に、多くの馬主が騙されてしまうのでしょう。アルゼンチンGⅠのレベルがピンキリであること、ハーツクライ×アルゼンチン牝馬がことごとく失敗に終わっていることの2点を知っていれば、痛い目を見ることもなかっただろうに。


 ハーツクライ×アルゼンチン牝馬は、いわゆる、地雷です。豪華な血統背景や高額馬であることに目がくらむと、馬券やPOG、一口馬主で痛い目を見ます。


 しかしながら、分母が少なすぎるので、傾向と決めつけるのはやや傲慢かと思います。今後、父と母の良いとこ取りをした超大物が出て、この記事がフェイクニュースと貶されることを期待しています。


『まとめ』 ・ハーツクライ×アルゼンチン牝馬の成績が悪すぎる。 ・父と母の特徴が喧嘩し合っているのではないか? ・にもかかわらず、高額馬が多い。 ⇒ハーツクライ×アルゼンチン牝馬に過度の期待を抱くべきではない。


 最後に、ハーツクライ×アルゼンチン牝馬の2歳馬一覧を以下に記載します。もちろん落札価格も含めて。ミッキーセレスタ、1億1340万円、馬主ミッキー。グラティアス、2億4840万円、馬主スリーエイチレーシング。結果は火を見るより明らかです……。


【2018年産(今年の2歳馬)】 ◆ アイワナスマイル ◆ ウォッチハーの2018 ◆ グラティアス 2億4840万円 ◆ コートダルジャン ◆ サトノアイ ◆ サファリミスの2018 ◆ セルディアーナ ◆ ボスコ ◆ ミッキーセレスタ 1億1340万円 ◆ ルグランタンゴ


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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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