• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

ボルハ・ファヨス、配達人のスター

"El jockey Borja Fayos, un 'repartidor' estrella"

https://www.marca.com/turf/2020/05/18/5ec18be622601d24748b45af.html

最終閲覧日:2020年5月19日



 ボルハ・ファヨスはもっとも優れたスペイン人騎手の1人である。昨年はスペイン、フランス、モロッコで騎乗し、約100勝をあげた。しかし、彼はCovid-19による危機のため、別の職業に就かなければならなくなった。これがもっとも成功をおさめた騎手でさえ直面しなければならないスペイン競馬の現実である。彼らは他のヨーロッパの騎手より稼ぎが少なく、競馬が再開されるまで別の仕事で収入を確保しなければならない。


 騎手は早朝に調教助手として働く。そのうち大半の騎手が、月末まで生活をしのぐために、わずかでも家計の助けになるならと、別の仕事を求めた。現在スペインの多くの家庭がそうであるように、騎手は非常に困難な状況に直面している。


 ファヨスは馬の調教をつけるために朝5時に起床し、11時頃まで働く。その後、マドリードのアラバカ地区にある精肉店に行く。注文を家に配達する仕事をし、1軒につき5ユーロを稼ぐ。注文はアラバカ地区だけでなく、ポスエロ地区やその他マドリードの地区からも入る。


 バレンシア出身のボルハ・ファヨスは、スペインでもっとも優れた3人の騎手のうちの1人とみなされている。彼は精肉店でのアルバイトで収入を得ることに加えて、体形や体重を維持しなければならない。そのため、配達には自転車を使っている。「朝調教で馬に乗ることとは別に、自転車で40キロ漕ぐ日もある。競馬が再開されたときに身体が万全の状態でいられるよう、わたしは体形を維持し、体重に気をつけなければならない」と語った。ボルハは食事も取らずに自転車を漕ぎ続ける。彼の仕事は20時に終わる。


 週末も彼に休みはない。精肉店が休みの日、彼は花屋で働いている。母の日はまるでグランド・ナショナルのようだった。「異常な1日だった。20軒以上の配達をした」。可能なときは、彼は本業に加えて2つの仕事を両立させる。ファヨスはレースが戻ってくるのを心待ちにしている。「競馬関係者は皆、マドリードがフェーズ1(※スペイン政府が示した『新たな平常』に戻るための4段階計画の1段階目)に突入し、競馬がたとえ無観客でも開催されることを望んでいる」


 スペインは競馬が中断されている。一方、フランスとドイツでは、すでに無観客での開催が始まっている。イングランドは6月1日に再開される見込みであり、イタリアも5月末の再開に向けて視界は良好である。しかし、スペインでは保健省によるゴーサインが未だに出ない。サルスエラ競馬場での調教は最大限の安全を考慮して行なわれており、競馬場関係者では1人の陽性反応も出ていない。競馬が開催されても、ロックダウン期間中と同様の厳重な対策が続けられるだろう。だが、競馬を再開するには、マドリードがフェーズ1に入ることが条件である。2000人を超えるとされる競馬関係の雇用の命運が、フェーズ1に入るか否かに懸かっている。ファヨスのようなスーパースターでさえ、生きるのに必死である。


----------

木下 昂也(Koya Kinoshita)

Twitter : @koyakinoshita24

G-mail : kinoshita.koya1024@gmail.com