• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

メキシコのレトルスカが歴史的なGⅠ勝利

"Oh, my goodness!!!"


 17日、オークローンパーク競馬場で行なわれたGⅠアップル・ブラッサムH(ダート1700m - 4歳以上牝馬)は、まさかの結末を迎えた。戦前は、17戦して1度も連対を外していないGⅠ7勝のモノモイガール(Monomoy Girl)と、プリークネスSを含むGⅠ3勝のスイススカイダイヴァー(Swiss Skydiver)の一騎打ちと予想されたが、そのモノモイガールをハナ差押さえて大金星をあげたのは、イラッド・オルティス騎乗の3番人気レトルスカ(Letruska)だった。


■ GⅠアップル・ブラッサムH



 レトルスカは父スーパーセイヴァー、母マジックアピール、その父サクセスフルアピールという血統の5歳牝馬。同馬を所有するのは、メキシコ最大の鉱業会社グルーポ・メヒコのCEOヘルマン・ラレーア氏が運営するサン・ホルヘである。


 アメリカ産馬だが、メキシコ人調教師ファウスト・グティエレス師の管理の下、メキシコで競走馬としてデビューした。デビュー戦は2018年10月26日のラス・アメリカス競馬場1Rで、2着に6 3/4馬身差をつける快勝をおさめた。


 ここからレトルスカの快進撃が始まる。2019年6月21日、無傷の4連勝でメキシコ牝馬3冠競走の第2戦にあたるGⅠエスメラルダ(ダート1600m - 3歳牝馬)に出走すると、1冠目のGⅡルビーを制したライカ(Laika)などの強豪をもろともせず、2着のレモンスクイーザー(Lemon Squeezer)に9 1/2馬身の差をつけて優勝した。続く3冠目のGⅠディアマンテ(ダート1700m - 3歳牝馬)では、2着に14馬身もの大差をつけ、見事にメキシコ牝馬2冠に輝いた。


■ GⅠディアマンテ


 12月8日、レトルスカはメキシコ代表馬として、アメリカのガルフストリームパーク競馬場で行なわれたインビタシオナル・デル・カリベ(ダート2000m - 3歳以上)に出走した。このレースは、中米地域の最強馬を決める戦い、通称カリビアン・シリーズに組みこまれる1戦である。レトルスカはプエルトリコなどからやって来た牡馬を含む強豪馬をまったく寄せつけず、ここも4 1/2馬身差で制した。カリブ地域に敵はいない。レース後はメキシコに戻らず、アメリカで競走生活を続けることが決まった。


 アメリカ・デビュー戦は12月28日、ガルフストリームパーク競馬場のダート1700mだった。だが、さすがに過密日程だったか、13頭立ての最下位と初めて黒星を喫した。やっぱりメキシコ調教馬は大したことないのか? そんな疑念も湧く中、充分な休養を挟んだ2020年4月16日のオークローンパーク競馬場ダート1700mのアメリカ2戦目で、見事にアメリカ初勝利をおさめた。


 レトルスカの勢いは止まらない。8月30日に出走したサラトガ競馬場のGⅢシュヴィーSを逃げ切り勝ち。グティエレス調教師にとって、これが初めてのアメリカ重賞だった。また、カリビアン・シリーズの勝ち馬がアメリカ重賞を勝つのは史上初だった。


■ GⅢシュヴィーS


 その後も、レトルスカは12月12日のGⅢランパートS、2021年1月31日のGⅢヒューストン・レディースCを優勝した。5月12日のGⅡアゼリSでシーデアーズザデヴィル(Shedaresthedevil )にアタマ差の2着に敗れた後、今回のGⅠアップル・ブラッサムHに臨んだ。メキシコ時代に7戦7勝、アメリカで11戦6勝、通算成績は18戦13勝(GⅠ3勝)である。


 メキシコの競馬メディアは「センセーショナルな(sensacional)」「強大な(Poderosa)」といった形容詞で、レトルスカの偉業を称えた。故郷ラス・アメリカス競馬場は、公式Facebookで次のように述べた。


「これはメキシコ競馬にとって歴史的な勝利である。レトルスカは名馬になるべくしてこの世に生を享けた。メキシコ馬主のサン・ホルヘが所有するこの名牝は、我々の国で調教された馬として、史上初めて北米のGⅠ競走を優勝した」


 グティエレス調教師はレース後のインタビューで「まるでハッピーエンドの映画を見ているようだ」と述べた。しかし、映画『レトルスカ』はまだ始まったばかりである。有力馬の1頭として、メキシコ競馬が輩出したスターホースとして、今後もアメリカ競馬を大いに盛り上げてくれるに違いない。


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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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