• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

南米競馬の勢力図(アルゼンチン編)

牡馬


 牡馬の有力馬は2頭いる。


 まず、ゼンセーショナル産駒の5歳馬ストラテゴス(Strategos)である。ストラテゴスは、2020年に5連勝で1000m直線のGⅠを3勝し、この3勝で2着につけた着差は合計で12馬身という、アルゼンチン現役最強スプリンターである。


 今年に入って陣営は距離延長を選択。2月20日のGⅡオラシオ・ブスティージョ(1600m)、4月3日のGⅠデ・オノール(2000m)、6月12日のGⅡフォルリ(1800m)を優勝し、1000mを圧勝できるスピードに加えて、その倍の距離でも逃げ切り勝ちをおさめられる豊富なスタミナを有していることを示した。


 この芦毛馬の驚くべき点は距離適性だけではない。芝でもダートでも高いパフォーマンスを披露できる馬場適性もある。これまでの重賞勝ちは、芝1000m, ダ1000m, 芝1400m, 芝1600m, 芝1800m, ダ2000mとなっている。


 5月1日のGⅠレプブリカ・アルヘンティーナ(ダ2000m)では4着に敗れたが、これは敵陣営の用意したペースメーカーにリズムを乱されたことに加え、主戦のフランシスコ・ゴンサルヴェス騎手が怪我のためオルテガ・パボン騎手に乗り替わった影響も大きかった。ゴンサルヴェス騎手が鞍上に戻った6月12日のGⅡフォルリでは5馬身差の圧勝。間違いなくアルゼンチン現役最強馬である。


 ニコラス・マルティン・フェッロ調教師いわく、最大目標は10月24日にウルグアイのマローニャス競馬場で開かれる競馬の南米選手権GⅠラティーノアメリカーノ(ダ2000m)に、アルゼンチン代表として出走することである。


■ GⅠデ・オノール



 短中距離の主役がストラテゴスなら、中長距離の主役はヴィレッジキング(Village King)である。


 ヴィレッジキングは父キャンパノロジスト、母ヴィラール、その父プレザントタップという血統の6歳牡馬。2017年にアルゼンチン3冠競走の2戦目GⅠジョッキークルブ(芝2000m)を優勝し、翌年アメリカのトッド・プレッチャー調教師の下に移籍した。アメリカでは2018年にリステッド競走レッド・スミスSを優勝した。2019年5月のGⅠマンノウォーSを最後にアルゼンチンに帰国することになったが、種牡馬としてではなく競走馬として再デビューした珍しい馬である。


 今年は3戦3勝と絶好調。3勝とも重賞で、うちGⅠはミゲル・アルフレード・マルティネス・デ・オス(芝2000m)と25・デ・マヨ(芝2400m)の2勝である。6歳になったが、先行力と勝負根性に衰えはまったく見られない。


 ヴィレッジキングを所有するエル・アンヘル・デ・ベネシアは、10月のGⅠラティーノアメリカーノにアルゼンチン代表として出走し、その後は12月にサン・イシドロ競馬場で行なわれる南米最大のGⅠカルロス・ペジェグリーニ(芝2400m)へ挑むというプランを描いている。しかし、ダートは実力未知数であるため、ラティーノアメリカーノへの出走は現在協議中である。ストラテゴスとは未対決だが、大舞台で対戦となれば注目である。


■ GⅠ25・デ・マヨ



牝馬


 アルゼンチンの牝馬路線は、様々な事情から混沌としている。


 本来ならば、今年に入って3戦無敗、GⅠクリアドーレス(ダ2000m)を優勝したイークワルストライプス産駒のブルーストライプ(Blue Stripe)がNo.1の座に君臨しているはずだった。しかし、クリアドーレスを勝ったことでBCディスタフの出走権を獲得し、同馬を所有するポソ・デ・ルナが出走準備のため早々にアメリカ移籍を選択した。もしBCディスタフを優勝すれば、半姉ブループライズ(Blue Prize)との姉妹制覇となる。


 昨年活躍した牝馬には、エルヴァス(Elvas)、ジョイカネーラ(Joy Canela)、チタディリオ(Cita Di Rio)がいる。しかし、これら有力牝馬はいずれも日本に繁殖牝馬として購入されたため、現役を引退してアイルランドへ送られた。一昨年の活躍馬も、セアスアラバーダ(Seas Alabada)が引退、ジョイエピフォラ(Joy Epífora)がアメリカへ移籍、ナスティア(Nastia)が日本へ売却された。


 こうした事情があり、現在アルゼンチン牝馬路線には抜けた存在がいない。強いて挙げるとすれば、4月3日にGⅠGⅠヒルベルト・レレーナ(芝2200m)を勝ったファンシフル(Fanciful)である。ヘリオスタティクを父に持つこの5歳牝馬は、ここまで25戦7勝、GⅠ1勝、GⅡ2勝となかなかの結果を残している。だが、2着7回、3着4回と、いかんせん取りこぼしが多い。6月12日のGⅡパルティクラ(芝1800m)でも3着に敗れたように、絶対的な強さを持っているとは言えない。混戦状態はしばらく続きそうだ。


■ GⅠヒルベルト・レレーナ



2歳馬


 2歳馬とはつまり、2018年産馬ということである。この世代では、ポルタルデルアルト産駒のウェイバ(Weiba)がスケールの大きい馬として期待された。1月8日の未勝利戦(ダ1000m)を18馬身差で圧勝すると、次走2月5日のGⅢギジェルモ・ケミス(ダ1000m)も4馬身差で逃げ切った。このレースで2着だったヒーズクール(He's Cool)、3着だったジュートバタラスキー(Yuto Bataraz Key)が後に重賞を勝ったことから、ウェイバの能力の高さがうかがえる。しかし、レース後に骨折が判明し、半年の離脱を強いられてしまった。2歳戦はもちろん、3冠戦線に間に合うかどうかも微妙なところである。


 6月14日の時点で、2歳GⅠは4競走行なわれている。牡馬2戦、牝馬2戦、それぞれ芝とダートが1戦ずつである。有力馬を挙げるなら、この中から選ぶべきだろう。


 牝馬は、6月12日にGⅠデ・ポトランカス(芝1600m)を勝ったのはダニエルブーン産駒のトロペアドーラ(Tropeadora)も捨てがたいが、印象の濃さという点でカルタエンブルハーダ(Carta Embrujada)を推したい。父にストームエンブルハードを、母父にタピットを持つこの馬は、デビュー戦を11馬身差で圧勝、2戦目のGⅠホルヘ・デ・アトゥーチャ(ダ1500m)では、最後方追走から直線で大外を回しながらも2着に4馬身の差をつけて快勝した。6月末にパレルモ競馬場で行なわれるGⅠエストレージャス・ジュヴェナイル・フィリーズ(ダ1600m)でも本命馬として扱われるだろう。


■ GⅠホルヘ・デ・アトゥーチャ



 牡馬はGⅠグラン・クリテリウム(芝1600m)の勝ち馬でイークワルストライプス産駒のシャイフレンド(Shy Friend)を挙げる。デビュー戦は2着に敗れたが、未勝利馬として挑んだ前走のGⅠでは、2番手から抜け出して2馬身差の快勝をおさめた。この馬は2018年のGⅠエストレージャス・ジュヴェナイル・フィリーズの勝ち馬で、現在は日本で繁殖牝馬として繋養されているシャイスター(Shy Ster)の全弟にあたる。血統的な裏付けもあり、芝からダートに替わるGⅠエストレージャス・ジュヴェナイル(ダ1600m)でも好走するだろう。


■ GⅠグラン・クリテリウム


----------

木下 昂也(Koya Kinoshita)

Twitter : @koyakinoshita24

G-mail : kinoshita.koya1024@gmail.com