• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

南米競馬の勢力図(チリ編)

牡馬


 ブレスレスストーム産駒の7歳牡馬ウィンヒアー(Win Here)が、2019年ごろからチリ現役最強馬の座に君臨している。最後方追い込みを武器にこれまで52戦27勝、GⅠ2勝を含む重賞10勝をあげている。ダート戦に限れば、2018年9月から現在まで24戦して連対率100%である。出走頭数が少ないため結果を残しやすいということもあるが、驚異的な数字であるのは間違いない。今年も5月1日に行なわれたGⅠイポドロモ・チレ(ダ2200m)を優勝した。チリ競馬の歴史に名を刻んだ名馬であり、国内で絶大な人気を誇っている。


 そのウィンヒアーを追いかけるのが、ボボマン産駒の3歳馬オコナー(O'Connor)である。5月のGⅠイポドロモ・チレではウィンヒアーに敗れたものの、アタマ差の2着という大接戦を演じた。次走6月5日のGⅡデ・オノール(ダ2400m)では、直線での激しい叩き合いの末、ウィンヒアーを僅差で撃破した。この1戦が世代交代のターニングポイントとなったかもしれない。


 ウィンヒアー、オコナー共に、今年の最大目標は10月24日にウルグアイのマローニャス競馬場で行なわれる競馬の南米選手権GⅠラティーノアメリカーノ(ダ2000m)である。怪我や病気がなければ、この2頭がチリ代表に選出されるのはほぼ確実であり、戦いは国外でも続いていくだろう。


 芝路線は混戦である。5戦5勝GⅠ3勝と圧倒的な強さを誇ったブレークポイント(Breakpoint)がアメリカに移籍。2月7日のGⅠエル・デルビー(芝2400m)を優勝したプレパランテ(Preparante)が大将格だが、こちらもアメリカ移籍を模索しているという報道があったように、ダービー以降は出走していない。5月のGⅠクルブ・イピコ・デ・サンティアゴを優勝し、BCマイルの優先出走権を得た3歳馬スチェソ(Succeso)が現状では一歩抜け出しているが、ダービーでは8着に敗れおり、実力に疑問が残る。


■ GⅡデ・オノール



牝馬


 昨年のGⅠアルベルト・ソラーリ・マグナスコ(ダ2000m)を約10馬身差で圧勝したゴールドスピリット(Gold Spirit)がアメリカに移籍し、ダート女王の座が空いた。ジェモロジスト産駒のレダビダ(Le Da Vida)が、牡馬相手にGⅠで奮闘しているが、ウィンヒアーとオコナーを相手にする戦いがこれからも続くため、ビッグレースで勝ち星を手にするのは極めて難しい。


 芝では、昨年12月のGⅠラス・オークス(芝2000m)を優勝したエンパイアメーカー産駒の3歳牝馬ラポエティサ(La Poetisa)が頭1つ抜けている。通算成績は8戦2勝と物足りなく映るが、2月のダービーでは追い込んで2着、5月のGⅠクルブ・イピコ・デ・サンティアゴでも牡馬・古馬を相手に3着と好走した。芝路線は全体的にメンバーが手薄なため、いつ再び重賞を勝ってもおかしくない。


■ GⅠラス・オークス



2歳馬


 2020年はコンスティテューション旋風が吹き荒れた。今年はやや落ち着いたが、風に勢いは残っている。


 2018年産まれのコンスティテューション産駒に、イナダマス(Y Nada Más)という2歳牝馬がいる。ここまで3戦3勝と無敗、重賞を2勝している。前走のGⅡカルロス・イルマス(芝1600m)では、直線最内から抜け出して2着に6馬身もの差をつける完勝をおさめた。芝でこの馬を負かせる勢力は他に見当たらない。オークスどころか、ダービーの有力候補である。もちろん、アメリカや香港に移籍しなければだが……。


 牡馬でもルッキンアットラッキー産駒のロイヤルラック(Royal Luck)が、3戦3勝、重賞2勝と無敗を維持している。だが、レースレベルに疑問が残る。牡馬GⅡマルセル・サロール(芝1600m)を1分35秒29で優勝したが、同日に行なわれた牝馬GⅡカルロス・イルマスの勝ちタイムは1分34秒57である。ペースの違いや2キロの斤量差があるとはいえ、この差は無視できない。とはいえ、芝路線の2歳牡馬では、ロイヤルラックが他馬を大きくリードしているのは間違いない。


 牝馬のダート路線では、アオーラⅡ産駒のラトラーファ(La Trafa)が有力である。アオーラⅡはコンスティテューションの半弟にあたる。通算成績は7戦4勝だが、ダートは4戦して3勝、3勝とも重賞と絶好調である。が、アクシデントが襲った。6月のGⅠタンテオ・デ・ポトランカスに向けて調整されていたのだが、体調が整わず同レースを回避。少なくとも1ヶ月の離脱を余儀なくされた。


 これでいっきに混戦模様と化した。5月のGⅢホセ・サアベドラ・バエサ(ダ1500m)でラトラーファを倒した、インディアントレイル産駒のノルウィジャンクイーン(Norwegian Queen)に注目が集まる。


 ダート牡馬も混戦である。ザランバーガイ産駒の重賞2勝馬ウァイウェン(Waiwen)を、同じく重賞馬のグランディーボ(Gran Divo)エンカントベロス(Encanto Veloz)が追いかけるという構図である。牡馬のレベルはあまり高くないように思える。今はまだデビューしていない素質馬が、3歳シーズンに入って彼らをいっきにまくっていく可能性がある。


■ GⅡカルロス・イルマス


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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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