• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

南米競馬の勢力図(ブラジル編)

牡馬

 

 ブラジル競馬の勢力は大きく2つに分かれる。とある有名な言葉を借りれば、「ピンパーズパラダイスか、それ以外か」である。


 ピンパーズパラダイス(Pimper's Paradise)は父プットイットバック、母バイバイキャロライン、その父ロイヤルアカデミーという血統の5歳牡馬。2~3歳時は目立った馬ではなかったが、4歳から急成長し、昨年は競馬の南米選手権GⅠラティーノアメリカーノ(芝2000m)にブラジル代表として出走すると(3着)、6月のGⅠマチアス・マッハライン(芝2000m)で6馬身差圧勝、9月にはブラジル最大のGⅠ競走ブラジル(芝2400m)も優勝した。今年2月のGⅢエスコリアル(芝2000m)でも4馬身差で快勝し、現在南米馬の最高レーティングとなる117を与えられた。ブラジル最強馬というだけでなく、南米最強馬と評価することもできる。


 6月27日にガヴェア競馬場で行なわれるGⅠマチアス・マッハラインに出走を予定しており、勝てば連覇となる。その後のプランは未定だが、選択肢としては、①10月にウルグアイのマローニャス競馬場で行なわれるGⅠラティーノアメリカーノに出走、②GⅠブラジルの連覇、③アメリカ遠征の3つが考えられる。


 昨年のラティーノアメリカーノは芝2000mだったが、今年はダート2000mになるため、おそらくラティーノアメリカーノには出ないだろう。ピンパーズパラダイスはこれまでダートを走ったことがない。


 アメリカ遠征という線も疑問である。昨年はGⅠブラジルを優勝し、BCターフへの優先出走権を与えられたが、コロナによる輸送困難や厳しい日程もあって遠征を行なわなかった。また、18年は3戦、19年も3戦、20年は5戦、そして今年はGⅢエスコリアルの1戦のみと、コンスタントに出走できていない。もしかしたら体質に一抹の不安があるのかもしれない。


 したがって、GⅠブラジルへの出走・連覇を狙うのが濃厚だと推測できる。ブラジル牡馬路線には、ヘッドオフィス(Head Office)ジョージワシントン(George Washington)といった強豪もいるが、ピンパーズパラダイスと互角に戦えるとは思えない。今後については発表があり次第お知らせする。


■ GⅠブラジル



牝馬


 1強模様の牡馬と比べ、牝馬路線はコロコロと主役が入れ替わる。これまでは2020年のブラジル(カリオカ)牝馬2冠馬でアグネスゴールド産駒のマイスキボニータ(Mais Que Bonita)が絶対女王として君臨していた。しかし、昨年9月のGⅠホベルト・ネルソン・イ・グリマルヂ・セアブラ(芝2000m)でペリゴーザ(Perigoosa)に負けたあたりから、リズムが狂いはじめた。前走のGⅡでは重賞未勝利馬に敗れて3着と、賞味期限切れの気配が強い。


 そのマイスキボニータを倒したパブリックパース産駒の5歳牝馬ペリゴーザも、三日天下で終わりそうだ。今年は重賞を2戦して3着、4着と敗戦。末脚が魅力の馬だが、どちらも直線で伸びずに見せ場なく終わった。年齢を考えると、さらなる成長を期待するのは難しい。


 そんな中、ブラジル競馬界に彗星のごとく現れたのが、アグネスゴールド産駒の3歳牝馬ジャネールモネイ(Janelle Monae)である。今年1月にデビューすると、GⅠエンヒキ・ポソーロ(芝1600m)、GⅠヂアナ(芝2000m)、GⅠゼリア・ゴンザーガ・ペイショット・ヂ・カストロ(芝2400m)と、無傷の4連勝でブラジル牝馬3冠を達成した。ブラジル競馬史上6頭目、無敗での達成は1998年ヴィルジニー(Virginie)以来23年ぶり2頭目という快挙である。ジャネールモネイが満場一致でブラジル新女王となるところだったが、先日アメリカのチャド・ブラウン厩舎へ移籍することが発表され、女王の座はまたも空位となった。


 新たな女王候補の筆頭に挙げられるのが、ワイルドイヴェント産駒の4歳牝馬エルキス(Helquis)である。3歳時はマイスキボニータの壁に阻まれて勝ち星をあげることができなかったが、今年に入って3戦3勝と本格化。4月のGⅢヒボレッタ(芝2000m)ではマイスキボニータとペリゴーザを粉砕して初の重賞勝ちを得ると、勢いそのままに挑んだ5月のGⅠO.S.A.F.(芝2000m)も優勝した。3歳馬シェリーヴィ(Cherie Vi)ムグルーサ(Muguruza)を抑えて、ブラジル最強牝馬の地位を確立したいところである。


■ GⅠO.S.A.F.



2歳馬


 6月6日のGⅠジョッキークルブ・ブラジレイロ(芝1600m)がブラジルのクリテリウムにあたり、このレースの勝ち馬を世代の頂点とみなしたいところだが、今年の勝ち馬アグネスゴールド産駒のオルフェネグロ(Orfeu Negro)のパフォーマンスには疑問が残る。同馬が未勝利馬での勝利だったこと、7頭中4頭が同厩の馬だったことから、レースのレベルはかなり低かった。


 3冠競走で期待できるという点で推薦したいのが、5月のGⅠジュリアーノ・マルチンス(芝1500m)を勝ったキープコジェール(Keep Koller)である。父コジェールはアルゼンチン産馬で、2018年産馬が初年度となる。また、GⅡコンヂ・ヂ・ハーズバーグを6 1/4馬身差で快勝したフォレストリー産駒のオセアーノアズール(Oceano Azul)も注目の1頭である。


 オルフェネグロ、キープコジェール、オセアーノアズールの3頭は、6月27日にガヴェア競馬場で行なわれるGⅠジョアン・アデマール・ヂ・アルメイダ・プラード(芝1600m)に出走を予定している。このレースを勝った馬が世代を1歩リードという認識でいいだろう。


 しかし、ブラジルの2018年産馬で筆者がもっとも推しているのは別の馬である。半年以上も前から述べているが、この世代の最強馬はオックスフォードガール(Oxford Girl)だろう。父アグネスゴールド、母メイビーサンデー、その父エニーギヴンサタデーという血統。半兄は2018年のブラジル・ダービー馬オリンピックハノイ(Olympic Hanoi)、母母にブラジルの名牝ヒボレッタ(Riboletta)を持ち、近親にはブラジル3冠馬スーパーパワー(Super Power)がいるという超良血馬である。4月12日のデビュー戦(芝1400m)を勝利してから出走していないが、来年の今ごろはジャネールモネイと同等の評価を得ているかもしれない。あくまで主観だが。


■ オックスフォードガールのデビュー戦


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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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