• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

大物を出すアルゼンチン牝馬の条件

 2020年のセレクトセールが終わりました。コロナが蔓延しはじめたころは、もしかして今年のセレクトセールは延期されるのか、オンライン開催になるのかなどと様々な不安がありましたが、無事に終わったことを嬉しく思います。一競馬ファンとしては、関係者の皆さまの努力に敬服するばかりです。


 セレクトセールは終わりました。しかし、ここからが競馬ファンにとって勝負の始まりと言えるかもしれません。POGに、一口馬主に、馬券に、もしくはロマンにと、取引された馬の中から、自分に利益をもたらしてくれる大物を見つけなければなりません。とりわけ一口をやる方に関しては、小さくない投資になるわけですから、見極めは大事です。


 では、どういう馬が大物になるのでしょうか?


 それが分かるなら、競馬はこんなに難しい遊戯ではないし、そもそも、牧場関係者はボロ儲けできるはずです。ですが、どんな物事にも一定の規則が存在することでしょう。そこで今回、わたしは南米専門なので、アルゼンチン牝馬の産駒でどういう馬が大物になるのかについて考察してみました。すると、大物を出すアルゼンチン牝馬には、ある条件が不可欠であることが判明しました。


 ここで言う大物とは、オープン競走を勝った馬と定義します。したがって、オープンクラスに上がっただけの馬(4勝馬)は対象外となります。また、大昔までさかのぼっても仕方ないので(競馬も服装と一緒で流行やトレンドというものがありますから)、2010年産以降の全競走馬に限定します。ディアデラノビアやペルーサは対象外ということです。


 アルゼンチン牝馬の産駒でオープンを勝ったことのある馬は、以下の7頭になります。


・ピオネロ ・クルミナル ・サトノダイヤモンド ・リナーテ ・ダノンファンタジー ・サトノフラッグ ・レシステンシア


 ピオネロとクルミナルの母はクルソーラ(Cursora)、サトノダイヤモンドとリナーテの母はマルペンサ(Malpensa)、ダノンファンタジーの母はライフフォーセール(Life For Sale)、サトノフラッグの母はバラダセール(Balada Sale)、レシステンシアの母はマルアコストゥンブラーダ(Malacostumbrada)と、母馬の頭数は5頭になります。この5頭には3つの共通点があります。

① GⅠ勝ち馬であること

 クルソーラはGⅠ『エンリケ・アセバル』とGⅠ『コパ・デ・プラタ』の勝ち馬。マルペンサはGⅠ『コパ・デ・プラタ』、GⅠ『ヒルベルト・レレーナ』、GⅠ『クリアドーレス』の勝ち馬。ライフフォーセールはGⅠ『セレクシオン・デ・ポトランカス』とGⅠ『プロビンシア・デ・ブエノスアイレス』の勝ち馬。バラダセールはGⅠ『ポージャ・デ・ポトランカス』とGⅠ『セレクシオン』の勝ち馬。マルアコストゥンブラーダはGⅠ『ヒルベルト・レレーナ』の勝ち馬。このように、大物を出したアルゼンチン牝馬は、いずれもアルゼンチンのGⅠを勝っています。



② 3歳以上のGⅠ勝ち馬であること

 『ポージャ・デ・ポトランカス』、『セレクシオン』、『エンリケ・アセバル』、『セレクシオン・デ・ポトランカス』は3歳限定のGⅠ競走です。『プロビンシア・デ・ブエノスアイレス』、『コパ・デ・プラタ』、『ヒルベルト・レレーナ』、『クリアドーレス』は3歳以上のGⅠ競走になります。つまり、大物を出すアルゼンチン牝馬には、単なるGⅠ馬であることではなく、3歳以上のGⅠ競走を勝っていることが求められます。日本には2歳GⅠしか勝っていない牝馬が輸入されていますが、今のところ大物は出せていません。(セレスタ、カニョットなどが該当します)



③ 1600m以上のGⅠ勝ち馬であること

 最後に、これらのGⅠの距離を見ていきましょう。


・ポージャ・デ・ポトランカス(ダート1600m) ・セレクシオン(ダート2000m) ・エンリケ・アセバル(芝2000m) ・コパ・デ・プラタ(芝2000m) ・セレクシオン・デ・ポトランカス(ダート2000m) ・プロビンシア・デ・ブエノスアイレス(ダート2000m) ・ヒルベルト・レレーナ(ダート2000m) ・クリアドーレス(ダート2000m)


 見て分かるように、いずれも1600m以上です。日本の大レースはほとんどがマイル以上で行なわれるため、母の距離適性は考慮しなければなりません。日本には3歳以上のGⅠ競走の勝ち馬とはいっても、短距離しか勝っていない牝馬も輸入されています(ウォッチハー、ティロレスカ)。しかし、直線1000mのGⅠしか勝っていないアルゼンチン短距離牝馬から大物が出る可能性は低いと推測できます。


【まとめ】 ・どのようなアルゼンチン牝馬が大物を出せるのか? ・1600m以上で行なわれる3歳以上のGⅠを勝ったことのあるアルゼンチン牝馬が大物を出す可能性が高い。 ・POGや一口などで南米牝馬の大物を狙いたい場合は無視できない共通点である。


 注意してほしいのが、これは母馬だけを見た考察です。父の適性がどうとか、血統的なバランスがどうという話は、また別角度からの考察になるため、冷たく言えば、知ったこっちゃないです。(1つ確かなことは、さすがにこれら5頭の産駒でも、父がハーツクライなら厳しいです)


 アルゼンチン牝馬の産駒はサンプルが少ないです。1600m以上で行なわれる3歳以上のGⅠを勝ったことのあるアルゼンチン牝馬の仔じゃなければダメ! と断言することはできません。近5年でアルゼンチン牝馬の輸入が増えています。今後、2歳GⅠしか勝っていない牝馬や、直線1000mのGⅠしか勝っていない牝馬、もしくは、重賞すら勝ったことのない牝馬から、大物が出る可能性もなきにしもあらずです。しかし、現状は、1600m以上で行なわれる3歳以上のGⅠを勝ったことのあるアルゼンチン牝馬から大物が出る傾向にあると言っていいのではないでしょうか?


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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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