• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

米国における南米馬の結果(イバール、マスターピース、ロイヤルシップ)

写真:@keenelandracing



☆ イバール(Ivar)

10月3日 キーンランド競馬場

GⅠシャドウェル・ターフ・マイルS(芝1600m) 1着


 10月3日にキーンランド競馬場で行なわれたGⅠシャドウェル・ターフ・マイルSに出走したブラジル産馬イバールは、大外枠の発走から道中は中団から後方を追走し、直線で見事な末脚を発揮して、2着レイジングブル(Raging Bull)に1馬身差をつける快勝をおさめた。単勝オッズは9頭立ての7番人気だったが、低評価を覆しての優勝となった。これで通算成績を7戦5勝とし、GⅠは3勝目。勝ちタイム1分33秒99は、2011年にジオポンティが出した1分34秒17を超えてレースレコード。



 イバールはブラジルのヒオ・ドイス・イルマノス牧場産まれの4歳牡馬。父はアグネスゴールド、母メイビーナウ、母父スマートストライクという血統。ブラジル産馬だが、素質の高さを買われてアルゼンチンのフアン・エチェチュリー調教師の管理馬となり、アルゼンチンで競走馬としてデビューした。アルゼンチンではGⅠ2勝を含む3戦3勝で、2019年のアルゼンチン最優秀2歳牡馬に選出されている。2019年6月29日に行なわれたGⅠエストレージャス・ジョヴェナイルを勝利後に、RDIとボンヌ・シャンス牧場の共同保有となり、アメリカで開業しているブラジル人調教師パウロ・エンヒキ・ロボの下に移籍した。


新馬戦


・GⅠグラン・クリテリウム


・GⅠエストレージャス・ジュヴェナイル



 2019年は馬体の成長と環境への適応を促すために休養し、2020年4月のキーンランド開催でデビューする予定だった。しかし、コロナウイルスの影響によってデビュープランが白紙になり、2020年5月21日のチャーチルダウンズ競馬場9R(芝1600m)でようやくアメリカ・デビューを果たした。だが、約1年ぶりのレースというブランクに加え、鞍上のジュリアン・ルパルーとまったく手が合わず、5着に敗れた。


 2戦目は6月18日に同じくチャーチルダウンズ競馬場で行なわれた芝1700mのアローワンス戦。このレースから鞍上がジョー・タラモに変わると、まさかの逃げの手を選択し、見事にアメリカ初勝利をおさめた。


 3ヶ月の休養を挟んだ3戦目は、9月7日にケンタッキーダウンズ競馬場で行なわれた芝1600mのリステッド競走ツーリスト・マイルS。このレースでもハナを切ったが、ゴール前で差されて3着に敗れた。しかし、GⅠで好走経験のある強敵たちを相手に、レコード決着となったレースを、イバール自身が展開を作り、自らも従来のレコードを上回るタイムで逃げ粘っていることから、馬主、調教師、そして、アルゼンチン競馬メディアも、イバールのパフォーマンスを称賛した。一方で、逃げるレースはイバールの本来のスタイルではなく、アルゼンチン時代のように控える競馬や、マイルがベストとは思わないので距離延長をしてほしいと望む声もあがった。


 今回のGⅠシャドウェル・ターフ・マイルSでは、大外枠ということもあっただろうが、ジョー・タラモは控える競馬を選択した。この判断が功を奏した。イバールは中団よりやや後方の位置で折り合うと、最後の2ハロンを22秒39という末脚を見せ、アメリカ初重賞制覇をGⅠで飾った。


「大外枠からの発走を心配していたが、アルゼンチンでは常に後方からのレースをしていたので、問題はないと信じていた。幸運にもすべてが上手く運び、ジョーは100点満点の騎乗をしてくれた。アメリカでGⅠ競走を勝つのは、とりわけここキーンランドでは、とても難しいことである。今はこの勝利を祝いたい」と、イバールを管理するパウロ・ロボ調教師は述べた。


「馬はとても落ち着いていた。向こう正面では素晴らしいリズムを保ってくれた。パウロを祝福したい。なぜなら、彼はこれまでの戦法を変えられるように素晴らしい仕事をしてくれた。チャーチルダウンズで勝ったときにはハナを切っていたのだから。レースから引き揚げてきて、パウロが笑っているのを見ると、わたしまでとても嬉しくなった」と、イバールの鞍上を務めたジョー・タラモは言った。


 GⅠシャドウェル・ターフ・マイルSの勝ち馬には、11月にキーンランド競馬場で行なわれるGⅠブリーダーズカップ・マイルの優先出走権が与えられる。現時点では関係者から正式なアナウンスはないが、このまま大舞台に進むものと見られている。「ブリーダーズカップはもはや夢ではない。現実である。また、ブリーダーズカップを勝つことも、決して夢物語ではない」と、アルゼンチンの競馬メディア"Turf Diario"はまとめた。


【データ】

◇ GⅠを3勝以上したアグネスゴールド産駒は初。また、2ヶ国以上のGⅠを制したのも初。

◇ アグネスゴールド産駒は北米GⅠ初勝利。これで5ヶ国(ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、アメリカ、バルバドス)のGⅠウィナーとなった。

◇ GⅠシャドウェル・ターフ・マイルSを制した南米馬は、2005年のチリ産馬ホスト(Host)に次いで2頭目。



☆ マスターピース(Master Piece)

10月3日 ベルモントパーク競馬場

GⅠジョーハーシュ・ターフ・クラシックS(芝2400m) 4着


 10月3日にベルモントパーク競馬場で行なわれたGⅠジョーハーシュ・ターフ・クラシックSにて、チリから移籍したマスターピースがアメリカ・デビューを迎えた。7ヶ月ぶりの実戦、しかも、デビュー戦がいきなりGⅠ競走と高い壁に直面したが、道中は内の3番手を追走し、勝ち馬チャンネルメーカーからは4馬身差の4着と、悪くない内容でレースを終えることができた。



 マスターピースは2016年9月22日にチリのドン・アルベルト牧場で産まれた4歳牡馬。チリ時代は4連勝でGⅡを制し、今年2月2日にバルパライソ競馬場で行なわれたGⅠエル・デルビー(チリ・ダービー)に出走して3着に入った。3月14日にはチリ代表馬として、アルゼンチンで行なわれた競馬の南米選手権GⅠラティーノアメリカーノに出走したが、重馬場に苦しめられて14着と大敗。レース後にアメリカのチャド・ブラウン厩舎に移籍した。チリ時代は10戦4勝(GⅡ1勝)。これからの活躍が期待される。




☆ ロイヤルシップ(Royal Ship)

10月3日 サンタアニタ競馬場

GⅡシティ・オブ・ホープ・マイルS(芝1600m) 6着


 3日にサンタアニタ競馬場で行なわれたGⅡシティ・オブ・ホープ・マイルSでは、ブラジルから移籍したロイヤルシップがアメリカ2戦目に挑んだ。前走GⅡデルマー・マイルHでは、スタート直後にダッシュがつかず最後方からの追走となったが、強烈な末脚を見せて3着に食いこんだ。叩き2戦目となった今回はさらに上昇できるかと思われたが、またしても後方からの競馬となり、まったく良いところなく6着に敗れた。勝ったのはモーフォルツァ(Mo Forza)。



 ロイヤルシップはベルモント牧場で生産されたミッドシップマン産駒の4歳牡馬。今年2月9日にブラジルのガヴェア競馬場で行なわれたGⅠエスタード・ド・ヒオ・ヂ・ジャネイロ(ブラジル2000ギニー)を制覇後、ブラジル3冠戦に挑むことなく、アメリカの馬主に売却された。ブラジル時代の成績は7戦5勝(GⅠ1勝)。好位追走から直線で突き放す競馬を得意としていたので、この頃のスタイルに戻れば、アメリカでも充分に戦えるはずなのだが......


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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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