• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

粒ぞろいなアルゼンチン3歳牝馬

 アルゼンチンの主要3歳牝馬GⅠは、1000ギニーにあたるGⅠポージャ・デ・ポトランカス(ダ1600m - 3歳牝馬)、オークスにあたるGⅠセレクシオン(ダ2000m - 3歳牝馬)、GⅠエンリケ・アセバル(芝2000m - 3歳牝馬)の3競走である。


 昨年、この3競走のレースレベルはお世辞にも高いとは言えなかった。ポージャ・デ・ポトランカスは16頭中4頭が未勝利馬。セレクシオンは7頭中2頭が未勝利馬。そのうちの1頭が2着に入り、勝ち馬はその後惨敗続きである。エンリケ・アセバルは9頭中1頭が未勝利馬。勝ち馬は古馬GⅠでまったく歯が立たず、アメリカに移籍したもののデビュー戦で大敗した。


 もちろん2017年世代には良い馬もいた。たとえば、GⅠクリアドーレス(ダ2000m - 3歳以上牝馬)を優勝し、今年のBCディスタフに出走を予定しているブルーストライプ(Blue Stripe)。上半期の牝馬最強決定戦であるGⅠエストレージャス・ディスタフ(ダ2000m - 3歳以上牝馬)を優勝したマハゴニー(Mahagonny)。重賞2勝のリンダイサベル(Linda Isabelle)などである。しかし、これらの馬は主要3歳牝馬GⅠにほとんど出走していない。


 昨年の3歳牝馬GⅠのレベルが史上稀に見るほど低かったのにははっきりとした原因がある。コロナウイルスである。Covid-19によって競馬開催が中断を強いられ、2歳戦が飛んでしまった。満足に調整することが難しく、どの馬も急ごしらえのぶっつけ本番で挑まざるをえなかった。能力の高い馬、素質のある馬ではなく、準備のできた馬が出走することになった結果、レースレベルが下がったのである。


 では、今年の3歳牝馬世代はどうだろうか?


 結論を先に言うと、粒ぞろいである。コロナ禍でも安定した開催が行なわれているおかげだろう。今回は6頭の有力3歳牝馬を紹介する。


 2018年世代を牽引するのが、ストームエンブルハード産駒のカルタエンブルハーダ(Carta Embrujada)である。ラ・レジェンダ・デ・アルコ牧場の生産・所有であるこの牝馬は、2歳時にGⅠホルヘ・デ・アトゥーチャ(ダ1500m - 2歳牝馬)を優勝し、前走GⅠポージャ・デ・ポトランカスでも2着に9馬身差をつける圧勝をおさめた。騎手、調教師、生産者、馬主いずれも2018年に1000ギニーとオークスの2冠を達成したサマーラヴ(Summer Love)と同じであり、陣営はサマーラヴの再来と素質を高く評価している。


■ ポージャ・デ・ポトランカス



 世代の2番手につけているのが、ブラジルの名門牧場ヒオ・ドイス・イルマノス牧場が所有するリンダレベソルタ(Lindalevesolta)である。今年のGⅠエストレージャス・ジュヴェナイル・フィリーズ(ダ1600m - 2歳牝馬)ではカルタエンブルハーダを倒して優勝した。直線で確実に発揮できる末脚と、芝でもダートでも高いパフォーマンスを見せられる安定感が魅力である。しかし、ここまで6戦して2勝2着4回と、取りこぼしが多いのが不安要素である。もう一皮むければ大物になれるかもしれない。


■ エストレージャスJF



 10月9日にはGⅠセレクシオンが行なわれるが、上記の頭に対抗できそうな新興勢力が2頭いる。どちらもアルゼンチンの名門牧場が送り出す素質馬である。


 1頭目は、セレクシオンの前哨戦となるGⅡフランシスコ・J・ビーズリー(ダ1800m - 3歳牝馬)を5馬身差で快勝したファーアウェイラヴ(Far Away Love)である。ラ・パシオン牧場で生産されたヴァイオレンス産駒の牝馬は、8月14日にデビューしたばかりだが、ダート1200mのデビュー戦を2番手からあっさり抜け出して5馬身差で勝利すると、前走GⅡでは600mの距離延長もなんのそのの逃げ切り勝ちをおさめた。2戦2勝。素質はかなり高そうだ。


■ フランシスコ・J・ビーズリー



 もう1頭は、アルゼンチンNo.1のフィルマメント牧場が送り出すスーペルビジュー(Súper Bijou)である。2走前の未勝利戦を7馬身差で逃げ切ったときの内容が良かった。前走GⅡフランシスコ・J・ビーズリーでは、スタート直後に隣の馬にぶつけられて後方からの苦しい競馬を強いられたが、それでも2着と健闘した。操縦の難しそうな馬であり、道中をスムーズに進められれば牝馬の頂点を狙えるだけの力がある。


■ 未勝利戦



 インテルデット産駒のアグアマキシマ(Agua Máxima)にも注目しなければならない。ラ・プラタ競馬場を主戦場とし、ここまで8戦7勝、重賞5勝と無類の強さを見せている。9月19日にラ・プラタ競馬場で行なわれるGⅠセレクシオン・デ・ポトランカス(ダ2000m - 3歳牝馬)に出走予定であり、GⅠセレクシオンへの出走は不明だが、この馬も上記の馬たちに引けを取らない実力の持ち主である。馬主のラ・フロンテーラは、アルゼンチンのダービーにあたる昨年のGⅠナシオナル(ダ2500m - 3歳)を15馬身差でぶっちぎったグレートエスケープ(Great Escape)を所有していたが、グレートエスケープの次はアグアマキシマだと自信を持っている。


■ GⅢディエゴ・ホワイト



 3歳牝馬の芝路線ではポルボラーダ(Polvorada)が1歩抜け出している。2020年6月に開かれたセリでわずか4500ドルで落札された格安馬である。デビューから3戦して勝ち星をあげることはできなかったが、2走前の未勝利戦を7馬身差で勝利すると、前走GⅠ1000ギニー(芝1600m - 3歳牝馬)ではリンダレベソルタに6馬身差をつける快勝をおさめた。ポージャ・デ・ポトランカス、セレクシオンというダート路線には進まず、11月のGⅠエンリケ・アセバルから12月のGⅠコパ・デ・プラタ(芝2000m - 3歳以上牝馬)というプランを練っている。GⅠ勝利後に日本の生産牧場から馬主いわく「納得できる値」でオファーを受けたが、それを断って競走生活を続ける。断っただけの価値は間違いなくあるだろう。


■ 1000ギニー



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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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