• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

馬好きに推薦したい馬の本:ベスト3

 今回は、無類の読書好きを自称している筆者が、競馬好き・馬好きの方にぜひとも推薦したい馬関連の本ベスト3を紹介します。読書の主戦場が北欧ミステリーと歴史小説であるため、歴史寄りの作品ばかりになってしまったのをお許しください。



第3位


軍馬の戦争―戦場を駆けた日本軍馬と兵士の物語

著:土井全二郎

 スティーヴン・スピルバーグが監督を務めた『戦火の馬』の日本版だと言えば、イメージが湧きやすいでしょうか。第2次世界大戦において馬がどのような役割を担ったのか、農民や兵士がいかに馬を愛していたのかを、具体的な事例や当事者の証言から学べる1冊になっています。


 人の徴兵に使われた赤紙の存在はよく知られていますが、馬を徴発する馬匹徴発告知書には青い紙が使われたため、青紙と呼ばれたのはあまり知られていません。村人に愛されていた農耕馬に青紙が届き、人々は涙しながら戦地へ送り出す。馬は戦場で過酷な環境に晒され、ついには戦死する。


「翌春、知らぬ兵士から、アオの最後を知らせる手紙が届いた。それによれば、アオは中国江南の戦場で砲弾を受けて倒れた。故郷のほうに向かって立ち上がろうとしたが、息絶えたという。その時、何か訴えるような物悲しい目が心に残り、一筆したためたとあった。傷口を祖父になでて欲しかったのであろう。馬もまた、戦争の犠牲者であったのかと時折、思い出す」


 この本はアマゾンで購入することができます。筆者は単行本を持っているのですが、2000円と値が張るし、持ち運びするには結構かさばるので、800円の文庫版の購入をオススメします。



第2位


講談名作文庫17 寛永三馬術

 第3位はノンフィクションなので、2位にはフィクションを選出しました。ですが、普通の物語ではありません。『寛永三馬術』という講談になります。講談とは寄席の一種で、軍談、仇討、御家騒動、世話物などを巧みな話術で語るものです。したがって、これは講談を文字に起こした作品になります。


 内容は、徳川家光の時代における3人の馬術の達人、曲垣平九郎、向井蔵人、筑紫市兵衛が、馬を用いた離れ業を披露し合うというものです。とりわけ、曲垣平九郎が家光公の前で東京・愛宕神社の石段を馬で登り降りしたという有名な伝説は、この講談から始まっています。


 やや子供向け感があるのと、古典なので読みにくさはありますが、爽快なストーリーにどんどん引き込まれます。アマゾンの電子書籍で購入可能です。



第1位


オリンポスの使徒―「バロン西」伝説はなぜ生れたか

著:大野芳

 タイトルのとおり、日本人で唯一オリンピックの馬術競技でメダルを獲得した西竹一、通称バロン西に焦点を当てたノンフィクション作品です。バロン西は、映画『硫黄島からの手紙』で伊原剛志が演じた人物としても有名です。


「バロン西、ロサンゼルス五輪の英雄バロン西、出てきなさい。あなたを死なせるのは惜しい」という、硫黄島での伝説は本当にあったのか? という著者の疑問を元に、当時を知る人へのインタビューや証言を交えて、西竹一の濃厚で芳醇な生涯が語られています。自由人を超えて宇宙人、まるで現在の大谷翔平のように日米で絶大な人気を誇った長身イケメン貴族に、馬好きならば男女問わずきっと惚れるでしょう。また、この本と共に城山三郎の『硫黄島に死す』を読むことをオススメします。


「西は、六万円の小遣いをすべて使いはたしていた。彼の無心の電報を受け取った妻の武子は、さっそくお金を送ってきた。(中略)ところが西は、送ってもらったお金をラスベガスの賭博につぎこみ、逆に日本円にして、十四、五万円の負けを作っていた。(中略)彼は、このことを武子に電報で知らせた。武子は、執事の高瀬に相談したが、とにかく金額が大きすぎる。やむなく隣家の西伊三次に相談した。「またか!」(中略)西からは金の催促の電報がもう一度きたが、伊三次は怒って電報を黙殺してしまった」


 ノンフィクションとして一級品であり、伝記としても極上であり、物語的なニュアンスもあって非常に読みやすいです。東京オリンピックが近づいた今こそ読んでおきたいのですが、ちょっとした問題があります。この本はすでに絶版で、取り扱っているお店がありません。アマゾンでは中古本なら手に入れられるのですが、どれも4000円以上します。ですが、値段以上の価値は必ずあります。



 いかがでしたでしょうか? 今回は3作品をピックアップしましたが、宮本輝の『優駿』、松本清張の『馬を売る女』、ディック・フランシスの『競馬シリーズ』など、馬を題材としたオススメの作品は他にもあります。反対に、あまりオススメできないという作品もあります。皆さんもこれは勧めたいという作品があれば、ぜひ教えてください。


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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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