
木下 昂也(Koya Kinoshita)
2020年アルゼンチン競馬の表彰馬一覧(カルロス・ペジェグリーニ賞)
年度代表馬
テターセ(Tetaze)
3月に行なわれたGⅠラティーノアメリカーノを優勝し、南米王者に輝いたことが評価された。しかし、昨年は2戦1勝しかしておらず、4戦4勝と無敗でGⅠを3勝したストラテゴスや、GⅠを2勝し、南米最大のGⅠ競走カルロス・ペジェグリーニでも2着になったピンボールウィザードと比べて明らかに成績で劣るため、やや疑問が残る投票結果となった。先日現役引退を発表し、今シーズンからラ・ミッション・ロブレス牧場で種牡馬となる。
年度代表牝馬
エルヴァス(Elvas)
昨年は4戦3勝、重賞2勝。アルゼンチンのエリザベス女王杯にあたるGⅠコパ・デ・プラタを優勝した。GⅠエストレージャス・ディスタフを優勝したチタディリオとの一騎打ちだったが、満場一致での選出となった。なお、エルヴァス、チタディリオ、共に日本に繁殖牝馬として購入され、アイルランドで種付けをした。
最優秀2歳牝馬
新型コロナウイルスによる2歳戦の中止により選出なし。
最優秀2歳牡馬
新型コロナウイルスによる2歳戦の中止により選出なし。
最優秀3歳牝馬
ベジャガンバ(Bellagamba)
6戦3勝、重賞2勝。3歳牝馬限定のGⅠエンリケ・アセバルを優勝した。昨年は新型コロナウイルスの影響で2~3歳の開催日程が乱れた影響もあり、3歳牝馬戦線は混迷を極めていた。1000ギニーにあたるGⅠポージャ・デ・ポトランカスの勝ち馬スコティッシュスター、オークスにあたるGⅠセレクシオンの勝ち馬マミービーチと票が割れ、僅差での選出となった。現在はアメリカに渡って現役続行中。
最優秀3歳牡馬
クールデイ(Cool Day)
4戦2勝と数字は物足りないが、3冠競走2戦目のGⅠジョッキークルブで2着、そして南米最大のGⅠ競走カルロス・ペジェグリーニを優勝と、内容の濃い一年だった。アルゼンチンのダービーにあたるGⅠナシオナルを15馬身差で圧勝したグレートエスケープとの二択だったが、意外にもクールデイに票が集中した。売却交渉・体調不良により今年は未出走だが、10月24日にウルグアイで行なわれるGⅠラティーノアメリカーノ出走を目指している。
最優秀古馬牝馬
エルヴァス(Elvas)
上述。
最優秀古馬牡馬
ピンボールウィザード(Pinball Wizard)
2019年にマイルGⅠを勝った馬だが、2020年は長距離路線に転向して、見事に結果を残した。ダート2000mのGⅠエストレージャス・クラシックで2着になると、GⅠサン・マルティン、GⅠコパ・デ・オロと芝2400mのGⅠを2勝し、同距離のカルロス・ペジェグリーニでも2着になった。最優秀古馬牡馬がピンボールウィザードなのに、年度代表馬がテターセというのは、やはり疑問が残る。今年は腱の怪我に苦しめられており、いまだレースには出ていない。回復が待たれる。
最優秀スプリンター
ストラテゴス(Strategos)
昨年は4戦4勝、直線1000mのGⅠを3勝と圧倒的な成績を残し、満場一致での選出となった。今年は距離延長に挑み、主戦場からは倍の距離にもなる2000mのGⅠデ・オノールを優勝した。アルゼンチン現役最強馬であり、10月にウルグアイで行なわれるGⅠラティーノアメリカーノ出走を最大目標としている。
最優秀マイラー
イリデオ(Irideo)
やや驚きの受賞となった。12月にサン・イシドロ競馬場の芝1600mで行なわれたGⅠホアキン・S・デ・アンチョレーナを優勝したが、昨年はエストレージャス・マイル、パレルモとダート1600mのGⅠを2勝したパワーアップがおり、こちらの選出が濃厚と思われていた。アルゼンチンのマイル路線は層が薄く、票が割れたのだろう。現在はアメリカに移籍し、デビューに向けて調教を積んでいる。
最優秀長距離馬
ピンボールウィザード(Pinball Wizard)
上述。
最優秀種牡馬
イークワルストライプス(Equal Stripes)
2020年は勝利数で2位、獲得賞金で大差の1位を獲得した。南米王者テターセ、ダービー馬グレートエスケープ、3冠競走の2戦目ジョッキークルブを勝ったマリニャック、エストレージャス・ディスタフの勝ち馬チタディリオ、エストレージャスJFの勝ち馬インファルターメと、5頭の産駒がGⅠ競走を優勝した。2018年以来、2度目のの受賞である。7月で22歳と高齢だが、昨年も含めて毎年100頭以上に種付けを行なっている。
最優秀ブルードメアサイアー
オーペン(Orpen)
58勝はリーディング6位だが、獲得賞金で1位を獲得したため、2020年のもっとも優れた母父に選出された。オーペンを母父に持つGⅠ馬は、テターセ、マリニャック、スコティッシュスターがいる。残念ながら2021年1月に亡くなったが、アルゼンチン競馬界への影響力は今後しばらく続くだろう。
最優秀繁殖牝馬
キャンディーウーマン(Candy Woman)
ストラテゴスの母で、オホス・クラーロス牧場で繋養されている。
最優秀騎手
フランシスコ・ゴンサルヴェス
昨年は195勝、GⅠ4勝でリーディング・ジョッキーに輝いた。最優秀騎手の選出は2018年から3年連続であり、通算4度目の受賞である。南米No.1、いや、世界No.1の騎手と称しても過言ではない。今年は鎖骨骨折による1ヶ月半の離脱がありながら、上半期だけで200勝以上を稼ぐなど絶好調である。
最優秀見習い騎手
フランコ・メネンデス
2019年に騎手デビューすると、その年は14勝にとどまったが、昨年は721戦91勝、勝利数の騎手リーディングで6位に入る大躍進を遂げた。重賞勝ちはまだないが、時間の問題だろう。アルゼンチン期待の若手騎手である。
最優秀調教師
ホルヘ・マヤンスキー・ニール
勝ち星でリーディング9位、獲得賞金でリーディング4位だったが、ダービー馬グレートエスケープ、最優秀古馬牡馬&長距離馬ピンボールウィザード、年度代表牝馬&最優秀古馬牝馬エルヴァスと3頭のGⅠ馬を管理し、GⅠ競走を計4勝したことが評価された。2年連続、3度目の受賞である。
最優秀生産牧場
アボレンゴ牧場
勝ち星でリーディング5位、獲得賞金でリーディング2位に終わった。しかし、アボレンゴ牧場の生産馬は大舞台で輝いた。カルロス・ペジェグリーニ馬クールデイ、ダービー馬グレートエスケープ、エストレージャス・クラシック馬インユアオーナーと、アルゼンチン競馬の主要3競走はすべてアボレンゴ牧場の生産馬が優勝した。2008年~2019年まで最優秀生産牧場の座を守り続けていたフィルマメント牧場の牙城がついに崩れた。
最優秀馬主
ドン・テオドーロ
昨年出走した所有馬はわずか13頭で、勝ち星、獲得賞金共に特出した結果ではなかった。しかし、13頭のうち2頭がピンボールウィザードとエルヴァスだったことが、フィルマメント、ルビオB、ポソ・デ・ルナといった大手馬主を差し置いて選出された大きな要因となった。初受賞。
特別賞
テターセ(Tetaze)
GⅠラティーノアメリカーノ優勝を祝して。
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木下 昂也(Koya Kinoshita)
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