• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

新種牡馬の活躍が目立つアルゼンチン


イルカンピオーネ(Il Campione) 写真:Haras El Paraíso https://www.haraselparaisoargentina.com/padrillosdelharas

 9月20日にアルゼンチンのラ・プラタ競馬場で行なわれたGⅠセレクシオン・デ・ポトランカス(ダ2000m - 3歳牝馬)を制したのは、ヒットイットアボム産駒のヒットエメリット(Hit Emerit)だった。ヒットイットアボムは2017年からアルゼンチンのフィルマメント牧場でシャトル種牡馬として供用され、現3歳世代(2018年産)が初年度産駒にあたる。


 アルゼンチン競馬にとって今年は新種牡馬の当たり年と言っていいだろう。前述のヒットイットアボムに加え、スーパーセイヴァーやダニエルブーンといった種牡馬の初年度産駒が結果を残している。9月20日まででアルゼンチンの2,3歳GⅠは11戦行なわれたが、うち4勝が新種牡馬の仔によるものである。


 今回はアルゼンチンで躍動している新種牡馬5頭を紹介する。



スーパーセイヴァー(Super Saver)


 スーパーセイヴァーは2011年にアメリカのウィンスター・ファームで種牡馬入りしたが、南米にシャトルされたのは2017年が初めてである。アルゼンチンのフィルマメント牧場が同馬を導入した。


 今年は15勝をあげて獲得賞金額でファーストシーズン・リーディング・サイアーの1位となっているだけでなく、2018年世代全体の種牡馬リーディングでも首位に君臨している。リンダレベソルタ(Lindalevesolta)が6月26日にパレルモ競馬場で行なわれたGⅠエストレージャス・ジュヴェナイル・フィリーズ(ダ1600m - 2歳牝馬)を優勝して父に初のアルゼンチン重賞をプレゼントすると、9月17日にはビートルフランセス(Beatle Francés)がGⅢコロネル・ミゲル・F・マルティネス(ダ1800m - 3歳)を勝利した。


 スーパーセイヴァーの活躍はアルゼンチンだけに留まらない。フィルマメント牧場で産まれ、後にペルーに輸出されたスーペルナオ(Súper Nao)が、9月12日にペルーの2000ギニーにあたるGⅠポージャ・デ・ポトリージョス(ダ1600m - 3歳)を優勝した。スーパーセイヴァーは南米初年度から2ヶ国のGⅠ馬を輩出した。


■ エストレージャスJF



ヒットイットアボム(Hit It A Bomb)


 ファーストシーズン・リーディング・サイアーで2位につけるのが、スーパーセイヴァーと同じくフィルマメント牧場が導入したヒットイットアボムである。2017年よりアメリカのスペインドスリフト・ファームで種牡馬入りし、同年アルゼンチンにシャトルされた。南米初年度産駒は76頭いる。


 勝ち星では16勝とスーパーセイヴァーを上回っている。GⅢエストレージャス・ジュニオール・スプリント(ダ1000m - 2歳)を勝ったヒットイットドバイ(Hit It Dubai)、GⅢポージャ・デ・ポトリージョス(ダ1600m - 3歳)を勝ったヒットティフォン(Hit Tifón)、GⅠセレクシオン・デ・ポトランカスを勝ったヒットエメリット(Hit Emerit)と、すでに3頭の重賞馬の父である。


 ファーストシーズン・リーディング・サイアーの上位2頭がフィルマメント牧場で供用されていたとは、さすがアルゼンチンNo.1生産牧場。とりわけ、牧場マネージャーを務めるエセキエル・バジェ氏の種牡馬選びの的確さには驚かされる。スーパーセイヴァーは2017,18年と2シーズンしかアルゼンチンで種付けしなかったが、ヒットイットアボムは2017年~2020年と4シーズン種付けしたため計250頭ほどの産駒がいる。この中に未来のGⅠ馬が必ずや含まれている。


■ セレクシオン・デ・ポトランカス



ダニエルブーン(Daniel Boone)


 前述の2頭はアメリカ発の新種牡馬だが、ダニエルブーンは南米発の新種牡馬である。ブラジル産馬であり、サンタ・マリア・ヂ・アラーラス牧場で2017年から種牡馬となった。初年度は79頭と種付けし、59頭の産駒が誕生した。


 ダニエルブーンはファーストシーズン・リーディング・サイアーで3位につけている。6月2日にサン・イシドロ競馬場で行なわれたGⅠデ・ポトランカス(芝1600m - 2歳牝馬)をトロペアドーラ(Tropeadora)が優勝。8月7日にはサン・イシドロ競馬場で行なわれたGⅠ2000ギニー(芝1600m - 3歳)をベスパシアーノ(Vespaciano)が優勝した。初年度からすでに2頭のGⅠ馬を輩出した。


 とりわけ、ベスパシアーノには高い素質を感じる。強烈な末脚を武器にここまで3戦3勝と無敗を継続中。次走は10月16日に行なわれるアルゼンチン3冠競走の2戦目GⅠジョッキークルブ(芝2000m - 3歳)を予定しているが、あっさり勝っても不思議ではない。ゆくゆくは芝路線の中核を担う存在になるだろう。


■ 2000ギニー



イルカンピオーネ(Il Campione)


 もう1頭南米発の新種牡馬として注目すべきは、チリ産馬のイルカンピオーネである。サッカーのアルトゥーロ・ビダルが所有していたことでも有名なこのスキャットダディ産駒は、2017年よりアルゼンチンのエル・パライソ牧場で種牡馬入りした。牧場の規模やスキャットダディ人気のおかげもあり、近4年で129頭、171頭、161頭、176頭と種付けした。


 既出の3頭のようにまだGⅠ馬は出していないが、エルインフォルマード(El Informado)が7月18日にラ・プラタ競馬場で行なわれたGⅢイシドロ・アランブル(ダ1600m - 3歳)を勝利した。産駒数の多さを活かし、コンスタントに活躍馬を輩出できるだろう。


■ イシドロ・アランブル



インテルデット(Interdetto)


 アメリカ産、ブラジル産、チリ産の新種牡馬を取り上げたが、最後にアルゼンチン産、つまり、内国産の新種牡馬も紹介したい。それがローマンルーラー産駒のインテルデットである。現役時代は重賞2勝をあげ、現役引退後にアルゼンチンのロマ・リンダ牧場で種牡馬となった。


 ロマ・リンダ牧場がフィルマメント牧場やエル・パライソ牧場のような有力牧場ではないため、初年度産駒は16頭と少ない。しかし、アグアマキシマ(Agua Máxima)という牝馬が9戦7勝、重賞5勝という成績をあげたため、新種牡馬の中でもっとも重賞を勝った種牡馬となっている。限られた産駒数から大物を出したことで、注目度が上がる可能性がなきにしもあらず。


■ ディエゴ・ホワイト



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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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