• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

2022年エストレージャス競走を展望

 6月25日、アルゼンチンのパレルモ競馬場でエストレージャス競走が開催される。クラシック(ダ2000m - 3歳以上)、ディスタフ(ダ2000m - 3歳以上牝馬)、マイル(ダ1600m - 3歳以上)、スプリント(ダ直1000m - 3歳以上)、ジュヴェナイル(ダ1600m - 2歳)、ジュヴェナイル・フィリーズ(ダ1600m - 2歳牝馬)という6つのGⅠ競走に加えて、GⅢジュニオール・スプリント(ダ直1000m - 2歳)の7競走で構成される。


 今年は開催をめぐって一悶着あった。当初は例年どおりパレルモ競馬場のダートコースで開催予定だったが、4月になって急遽サン・イシドロ競馬場の芝コースに変更となった。しかし、5月には再びパレルモ競馬場のダートコースで行なうと発表され、最終的に主催者であるアルゼンチン競馬協会(FEAR)がパレルモ競馬場と5年契約を結び、今後もエストレージャス競走はパレルモ競馬場で開かれることが決まった。



エストレージャス・ジュヴェナイル・フィリーズ

エストレージャス・ジュヴェナイル・フィリーズの出走馬。

 3戦3勝でGⅠを2勝したタングリトーナ(Tan Gritona)が出走しないため、大混戦の6頭立てとなった。重賞馬はGⅡラウール・アリステギ(ダ1500m - 2歳牝馬)を勝った④ラヴリーフェイス(Lovely Face)がいるが、5月1日のGⅠホルヘ・デ・アトゥーチャ(ダ1500m - 2歳牝馬)で8着と大敗したように、実力不足は否めない。


 GⅠホルヘ・デ・アトゥーチャでタングリトーナの2着だったイルカンピオーネ産駒の②エンペラドーラ(Emperadora)がもっとも勝利に近いだろう。近3走はいずれも重賞を走って3着、2着、5着とあと一歩のところまで来ている。タングリトーナが不在の今回は絶好のチャンスである。


 出走馬でもっとも素質が高そうなのが、アグネスゴールド産駒の③マギーメイ(Maggie May)である。デビュー戦は6着に敗れたものの、2戦目では好位から抜け出す競馬で4馬身差の快勝をおさめた。デビュー戦ぶりとなるダートを克服できれば一発ある。


【筆者予想】

◎ マギーメイ

○ エンペラドーラ

▲ ヌエバフラガンシア



エストレージャス・ジュヴェナイル

エストレージャス・ジュヴェナイルの出走馬。

 ジュヴェナイル・フィリーズと同じく、どの馬にも勝機がある難解なレースである。5月1日のGⅠモンテビデオ(ダ1500m - 2歳)の勝ち馬⑩スブサナドール(Subsanador)が実績では一歩抜けているが、メンバーレベルの低い6頭立ての競走であり、あのときの結果が今回に直結するとは思えない。


 GⅠモンテビデオで2着だったキャッチャーインザライ産駒の⑤ニーニョグアポ(Niño Guapo)にリベンジのチャンスがある。5着だったイルカンピオーネ産駒の①エルムシカル(El Musical)も、3月のGⅢで10馬身差の圧勝をおさめた爆発力の持ち主であり、逆転は充分に可能だろう。


 別路線組では、5月のGⅠグラン・クリテリウム(芝1600m - 2歳)で内容の良い2着だった⑪ナタン(Natan)の台頭がありそうだ。デビュー戦のダート1500mでスブサナドールの2着になっており、ダート適性は問題ないだろう。


 重賞は初出走だが、④アクトオブステート(Act Of State)も連勝中と勢いがある。


【筆者予想】

◎ ナタン

○ エルムシカル

▲ スブサナドール

△ アクトオブステート



エストレージャス・スプリント

エストレージャス・スプリントの出走馬。

 2019年は15頭立て、2020年は16頭立て、2021年は14頭立てと毎年にぎわいのあるレースだが、今年は近年まれに見る少頭数での開催となった。


 理由はただ1つ。②リュティエブルース(Luthier Blues)である。2021年7月からGⅠ3つを含む8連勝中と異次元の強さを見せつけている。ライバルたちはこれまでの1000m直線の重賞で軒並み倒されたため、どうあがいても勝ち目がなさそうだと回避が続出した。この馬を本命にしない理由が見当たらない。


 懸念があるとすれば鞍上変更である。主戦のブライアン・エンリケ騎手が優先騎乗契約の都合で①マドンナキー(Madonna Key)に騎乗しなければならず、今回はホルヘ・ペラルタ騎手が短距離王の手綱を握る。ペラルタ騎手がリュティエブルースに跨るのはデビュー戦以来である。


 万が一の逆転劇を起こせるとしたら、3歳牝馬の③アットアグランス(At A Glance)しかいない。これまで10戦7勝、2着3回と連対率100%を維持している。現在6連勝中で、2走前のGⅢアントニオ・A・ブルリッチ(ダ1200m - 3歳以上)は9馬身、前走ダート1200mの特別競走では8馬身差の圧勝をおさめた。リュティエブルースとは初対戦となる。


【筆者予想】

◎ リュティエブルース

○ アットアグランス

▲ サンソングリーリー



エストレージャス・マイル

エストレージャス・マイルの出走馬。

 上位と下位の隔たりが大きいメンバー構成である。


 5月1日のGⅠデ・ラス・アメリカス(ダ1600m - 3歳以上)の勝ち馬⑥チャンタジョイ(Chanta Joy)が出走する。アルゼンチンNo.1のフィルマメント牧場が生産・所有する実力馬で、7戦して1度も2着を外していない。前走のGⅠ後に調教師が「精神的に成長し、持っているエネルギーを温存することができるようになった」とコメントしたように、前からでも後ろからでも競馬ができる柔軟性が強みである。欠点が見当たらない。


 ⑧マリブースプリング(Malibú Spring)はGⅡ25・デ・マヨ・デ・1810(ダ1600m - 3歳以上)を勝ってここに挑んできた。この馬はエストレージャス競走への事前登録をしていなかったが、150万ペソの追加登録料を払って出走することを選んだ。陣営が自信を持っている証拠である。3連勝中の勢いそのままにGⅠ制覇なるか。


 この2頭を追うのが4歳牝馬の③シエンプレエンミメンテ(Siempre En Mi Mente)である。重賞3勝の実力馬で、2020年のGⅠポージャ・デ・ポトリージョス(ダ1600m - 3歳牝馬)で2着、GⅠセレクシオン(ダ2000m - 3歳牝馬)でも3着に入った。そろそろGⅠタイトルを手に入れてもいい。


 昨年の最優秀2歳牡馬④フィエルアミーゴ(Fiel Amigo)も参戦する。だが、3歳になってから不調で、勝ち星をあげられないどころか、これといった見せ場も作れていない。ここでも上位に来る可能性は低いだろう。


【筆者予想】

◎ チャンタジョイ

○ シエンプレエンミメンテ

▲ マリブースプリング



エストレージャス・ディスタフ

エストレージャス・ディスタフの出走馬。

 今年のエストレージャス開催でもっとも面白いレースとなったのがディスタフである。頭数がそろったことに加えて、良血馬と素質馬が復帰・成長し、手薄だったアルゼンチン牝馬路線に厚みが出てきた。


 1番人気に支持されるのは②aスーペルビジュー(Súper Bijou)だろう。重賞勝ちはないが、昨年のGⅠセレクシオン(オークス)では、日本のノーザンファームが大金を積んで購入したカルタエンブルハーダ(Carta Embrujada)とクビ差の大接戦を演じた。今年の始動戦を7馬身差で勝利し、悲願のアルゼンチン女王の座はすぐそこに迫っている。


 5月1日に同条件で行なわれたGⅠクリアドーレス(ダ2000m - 3歳以上牝馬)の上位馬も出走する。1着は⑥ラバリダーダ(La Validada)、2着は⑫サマーライ(Summer Rae)、3着は②エメリットクラフ(Emerit Craf)という入線順だったが、3頭が1/2クビ差以内という大激戦だった。展開と位置取り次第で今回の着順が入れ替わる。


 この3頭の中では、GⅠヒルベルト・レレーナ(芝2200m - 3歳以上牝馬)で2着だったエメリットクラフに注目したい。スーペルビジューとのフィルマメント牧場ワンツーが充分にありえる。


 前走GⅡパルティクラ(芝2200m - 3歳以上牝馬)を制してここに臨む⑩スカルペッタ(Scarpetta)も侮れない。クリアドーレスでは5着に敗れたが、半兄にGⅢ馬スカルラッティ(Scarlatti)、半姉にGⅠ馬スコティッシュスター(Scotish Star)を持つ良血がいよいよ開花するかもしれない。


 その他にも、ダート重賞2勝の③エネストローサ(Henestrosa)、半年ぶりの復帰戦を6馬身差で快勝した⑤ジョイニーマ(Joy Nima)、昨年このレース2着の⑧マルケサキー(Marquesa Key)、3着だった⑪ソヴィエトキャッチ(Soviet Catch)、アメリカGⅠ馬インラヴ(In Love)の全妹でアグネスゴールド産駒の⑦ラヴストーリー(Love Story)と好メンバーがそろった。


【筆者予想】

◎ スーペルビジュー

○ スカルペッタ

▲ エメリットクラフ

△ ラヴストーリー



エストレージャス・クラシック

エストレージャス・クラシックの出走馬。

 8頭立てとやや寂しい開催となったが、有力馬3頭による対決は見物である。


 フォーティファイ産駒の3歳牡馬①ドゥラッツォ(Durazzo)は、5月25日にサン・イシドロ競馬場で行なわれたGⅠ25・デ・マヨ(芝2400m - 3歳以上)を5馬身差で制した。今年に入って急成長した上がり馬で、能力上位であるのは間違いない。あとは8戦目にして初めて走るダートが合うかどうか。


 ④ニエーヴル(Nievre)は5月1日のGⅠレプブリカ・アルヘンティーナ(ダ2000m - 3歳以上)を人気薄で勝利し、苦労人エステバン・トーレス騎手に初めてのGⅠタイトルをもたらした。4歳になってからデビューした遅咲きの馬で、まだキャリア5戦しかしていない。成長の余地は充分にある。前走が終わってすぐに調教師がこのレースへの出走を明言したため、万全の状態で臨めるだろう。


 ⑥シャイフレンド(Shy Friend)は全姉に日本で繁殖牝馬となったGⅠ馬シャイスター(Shyster)がいる良血馬で、デビュー前から素質を期待されていた。ダービー前哨戦のGⅡエドゥアルド・カセイ(ダ2200m - 3歳)を勝ったが、本番では3着に敗れた。今年初戦のリステッド競走を7馬身差で快勝。前走4月2日のGⅠデ・オノール(ダ2000m - 3歳以上)では、2番手追走から直線で先頭に立つも、最後に差されて3着だった。名手チュピーノ・ノリエガ騎手は今回こそ追い出しのタイミングを合わせてくるはず。


 この3頭に対抗できそうなのが、前走GⅡフォルリ(芝1800m - 3歳以上)でGⅠ馬ダルボルネルを破った③コディアクボーイ(Kodiak Boy)と、昨年のGⅠポージャ・デ・ポトリージョス(ダ1600m - 3歳)とGⅠナシオナル(ダ2500m - 3歳)で2着になった⑧ストアフロント(Storefront)である。


【筆者予想】

◎ ドゥラッツォ

○ シャイフレンド

▲ ニエーヴル

△ コディアクボーイ



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