• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

ブラジルの有力馬が続々と香港・日本へ移籍

 ブラジルの有力馬が海外に移籍するというのは珍しいことではない。ヒボレッタ(Riboletta)、ルロワデザニモー(Leroidesanimaux)、バルアバリ(Bal A Bali)、グローリアヂカンペアン(Glória De Campeão)など、過去にも多くのブラジル馬が外国に移籍して結果を残した。


 しかし、近年は移籍先に顕著な変化が見られる。目的地がアメリカからアジアに移ったのである。牡馬の場合は香港、牝馬の場合は日本となっている。今年行なわれたトレードをいくつか紹介する。


 今年、ガヴェア競馬場で行なわれたブラジル牡馬3冠競走の第1戦目GⅠエスタード・ド・ヒオ・ヂ・ジャネイロ(芝1600m - 3歳)を勝ったレダットーレ産駒のウットーリ(Uttori)、第2戦目GⅠフランシスコ・エドゥアルド・イ・リンネオ・エドゥアルド・ヂ・パウラ・マシャード(芝2000m - 3歳)を勝ったアグネスゴールド産駒のクーロエカミーチャ(Culo E Camicia)が香港に移籍した。前者はペガサスジェネラル、後者はペガサスヒーローの名で香港で競走生活を続ける。


 3冠競走第3戦目、ブラジルのダービーにあたるGⅠクルゼイロ・ド・スル(芝2400m - 3歳)で2着だったアグネスゴールド産駒のオリンピックコルチノイ(Olympic Korchnoi)も香港の馬主に購入された。2歳GⅠジュリアーノ・マルチンス(芝1500m - 2歳)で2着だったクラフティーCT産駒のラッキーソウル(Lucky Soul)、フォレストリー産駒のフォーラック(For Luck)の2頭も同行した。


 香港への移籍は止まらない。2歳GⅠジョッキークルブ・ブラジレイロ(芝1600m - 2歳)を優勝し、3歳になってからはサンパウロ4冠競走の第1戦目GⅠイピランガ(芝1600m - 3歳)を圧勝したアグネスゴールド産駒のオルフェネグロ(Orfeu Negro)、第2戦目のGⅠジョッキークルブ・ヂ・サンパウロ(芝2000m - 3歳)を勝ったゴルディコヴィッチ産駒のイエニフォーチュン(Iene Fortune)も香港に参戦する。イピランガで2着、ジョッキークルブ・ヂ・サンパウロで4着だったセテンブロショーヴィ産駒のオリンピックルートヴィヒ(Olympic Ludwig)も2頭に従う。


 4冠競走第3戦目、サンパウロ地区のダービーにあたるGⅠデルビー・パウリスタ(芝2400m - 3歳)を優勝したプラネタリオ(Planetário)も、まだ香港とは決まっていないが、馬主は海外移籍の道を探っている。昨年の勝ち馬オウンゼム(Own Them)が勝利直後に香港への売却が決まったことから、プラネタリオも香港に渡る可能性が高いと考えられる。


 筆者は以前、香港競馬で次のような風潮が生じているという記事を読んだ。ブラジル産馬バターフィールド(Butterfield)がGⅢクイーン・マザー・メモリアルCを、チリ産馬パンフィールド(Panfield)がGⅠチャンピオンズ&チャターCを勝利した直後に公開されたもので、オーストラリアやニュージーランドから高額な馬を買うより、南米から比較的安価で優秀な馬を買ったほうが費用対効果がはるかに良いという内容である。その言葉どおり、南米産馬の香港移籍が活発になっている。


 日本は現在までに5頭のGⅠ牝馬をブラジルから購入した。先日ケンタッキー州で行なわれたセールで下河辺牧場に購入されたドロッセルマイヤー産駒のジョリーオリンピカ(Jolie Olímpica)を含めれば6頭だが、この馬はブラジルから直接購入されたのではなく、アメリカの馬主に売却された後に日本に購入された。


 今年4月、青芝商事の高橋修氏がGⅠ2勝のコーティアー産駒ファストジェットコート(Fast Jet court)を購入した。まだアメリカで現役生活を続けているが、現地で種付け後に来日すると思われる。


 昨年9月26日にガヴェア競馬場で行なわれたGⅠマジョール・ズッコー(芝1000m - 3歳以上)を勝ったガタイフロール(Gata Y Flor)を貝本隆三氏が、今年5月15日にシダーヂ・ジャルディン競馬場で行なわれたGⅠA.B.C.P.C.C(芝直1000m - 3歳以上)の勝ち馬イタペルーナ(Itaperuna)を三嶋健一郎氏が購入した。2頭はいずれもフォレストリー産駒である。


 11月7日、2020/21シーズンのブラジル最優秀2歳牝馬に選出されたハットトリック産駒のマカダミア(Macadamia)が、日本の馬主に売却されたという報道がブラジル・スタッドブックで伝えられた。19日には、そのマカダミアを倒してGⅠバラン・ヂ・ピラシカーバ(芝1600m - 3歳牝馬)を優勝したアグネスゴールド産駒のオリンピックラスパルマス(Olympic Las Palmas)が日本に購入されたと報じられた。いわば、日本血統の逆輸入である。


 逆輸入の例はすでにアグネスゴールド産駒のサイレンスイズゴールド(Silence Is Gold)であった。しかし、サイレンスイズゴールドは初仔を産んだ直後に死亡したため、現在日本にブラジル・アグネスゴールド産駒の繁殖牝馬はいない。


 日本は世界中から優秀な牝馬を買い漁っている。ブラジルでもっとも良い牝馬を買うことは、ブラジルでもっとも優れた種牡馬の産駒を買うということである。では、ブラジルで現在もっとも優れた種牡馬は誰かというと、ハットトリックであり、アグネスゴールドである。日本で非サンデーサイレンス系の種牡馬が増えていることを考えれば、ブラジルからサンデーサイレンス牝馬を逆輸入することが今後も起こりうるだろう。


 ファストジェットコートが日本に購入された際、売却に携わったTBSインターナショナルのエンヒキ・マルケス氏は次のように述べた。「ブラジル生産界と日本競馬のコネクションは、維持するだけではなく、拡大していくことが非常に重要である。この市場はどちらにも利がある。ブラジルにとって日本は商業的メリットの大きい強力な貿易国となり、日本にとってブラジルは優秀な牝馬を送り出す供給源となるからである」


 ブラジルから香港・日本への移籍はさらに勢いを増すに違いない。



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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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