• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

アグネスゴールドが南米大陸の歴史を動かす日

 4月10日、ブラジルのガヴェア競馬場でGⅠクルゼイロ・ド・スル(芝2400m - 3歳)が行なわれる。このレースはブラジルのダービーに相当するため、以下ではブラジル・ダービーと表記する。


 今年は10頭が出走を予定している。移籍や怪我が重なり、例年と比べて見劣りするメンバー構成となってしまった。1番人気必至なのが、2冠目のGⅠフランシスコ・エドゥアルド・イ・リンネオ・エドゥアルド・ヂ・パウラ・マシャード(芝2000m - 3歳)を勝ったアグネスゴールド産駒のオンライン(Online)である。アグネスゴールド産駒は他にもプンタデルエステ(Punta Del Este)リーガルユーラス(Regal Eurus)が出走する。


■ 出走馬

出典:Jockey Club Brasileiro https://www.jcb.com.br/home/noticias/335881/balizamento-gp-cruzeiro-do-sul-derby-brasileiro-g1/

 アグネスゴールド産駒はブラジル・ダービーを2020年にアブダビ(Abu Dhabi)で、2021年にオリンピッククレムリン(Olympic Kremlin)で優勝し、連覇を達成した。ダービーを連覇した種牡馬は、1883年に始まった同競走史上5頭しかいない。1885,87年(※86年は未開催)のサンパレイユ(Sans Pareil)、1910,11年のピケ(Piquet)、1922,23年のノヴェルティー(Novelty)、1950,51年のフェリシテーション(Felicitation)、そして2020,21年のアグネスゴールドである。昨年の連覇は実に70年ぶりの快挙だった。


 では、3連覇はどうだろか?


 1頭もいない。もしオンライン、プンタデルエステ、リーガルユーラスのいずれかが勝てば、アグネスゴールドは100年以上にわたるブラジル・ダービー史上初となる3連覇を達成する。ちなみに、ブラジルにはサンパウロ地区のダービーであるGⅠデルビー・パウリスタ(芝2400m - 3歳)というレースも存在するが、こちらも1917年に始まったレース史上、3連覇を成し遂げた種牡馬はいない。


 驚異的なのは、ダービー3連覇を3年連続ワンツーで決めるかもしれないということである。2020年はアブダビとヒーズゴールド(He's Gold)でワンツー、2021年はオリンピッククレムリンとオリンピックコルチノイ(Olympic Korchnoi)でワンツーだった。今年はオンラインとリーガルユーラスによるワンツー決着の可能性がある。


 ここからは、ダービー3連覇がどれほどの偉業なのか、主にパートⅠ国の競馬史から見ていこう。


 まず、範囲を南米大陸に広げる。1884年から始まったアルゼンチン・ダービー(ナシオナル)では、3連覇を達成した種牡馬はいない。あのサザンヘイローやロイでさえも連覇すらできなかった。1884年から始まったチリ・ダービー(エル・デルビー)、1888年から始まったウルグアイ・ダービー(ナシオナル)でも同一種牡馬による3連覇は記録にない。


 1903年から始まったペルー・ダービー(デルビー・ナシオナル)では3連覇を達成した種牡馬が1頭だけいる。1954,55,56年と勝ったポスティン(Postín)である。ポスティンは1956年にパンブローナという4冠牝馬を輩出した。パンブローナはアメリカで繁殖牝馬となり、イギリス・ダービー馬を産んだ。1976年のイギリス・ダービーを勝ったエンペリー(Empery)である。エンペリーは後に日本に輸入されて種牡馬となった。


 南米大陸を抜け出し、北米、ヨーロッパ、アフリカ、さらにはアジアの競馬主要国を見ていこう。


 ケンタッキー・ダービーでも3連覇を成し遂げた種牡馬はいない。しかし、昨年の1着入線馬メディーナスピリット(Medina Spirit)が失格となったことで、2020年のオーセンティック(Authentic)、2021年のマンダルーン(Mandaloun)と、現在イントゥミスチーフ産駒が連覇中である。そしてどうやら、この連覇がケンタッキー・ダービー史上初めての連覇だったようである。今年の結果次第では、イントゥミスチーフによる3連覇が叶うかもしれない。


 1860年に創設されたカナダのダービーにあたるクイーンズ・プレートでは、ジャックザバーバー(Jack The Barber)が1870,71,72年、スプリングフィールド(Springfield)が1894,95,96年、ヴィクトリアパーク(Victoria Park)が1970,71,72年と、3頭の種牡馬が3連覇を達成している。これは後述する日本と並んで最多頭数である。


 本場イギリスのダービーを3連覇した種牡馬は1頭もいない。ニジンスキーもサドラーズウェルズもガリレオも達成できなかった。フランス・ダービー、ドイツ・ダービーも3連覇はなし。一方、1866年に始まったアイルランド・ダービーではガリニュール(Gallinule)が1898,1899,1900,1901年と4連覇を達成した。


 1907年に創設された南アフリカ・ダービーでは、ポリストーム(Polystome)という種牡馬が1925,26,27年と3連覇を、オーストラリア・ダービーではサマータイム(Summer Time)が1961,62,63年と3連覇を達成した。1973年からのニュージーランド・ダービーでは3連覇した馬はいない。


 特筆すべきは日本である。1933年カブトヤマ、1934年フレーモア、1935年ガヴァナーと3連覇したシアンモアに加え、1998年スペシャルウィーク、1999年アドマイヤベガ、2000年アグネスフライトと優勝したサンデーサイレンスがいる。そのサンデーサイレンスの仔であるディープインパクトは、2018年ワグネリアン、2019年ロジャーバローズ、2020年コントレイル、2021年シャフリヤールと現在ダービーを4連覇中である。


 2022年、サンデーサイレンス産駒の2頭、アグネスゴールドとディープインパクトが地球の表裏で競馬史に新たな歴史を刻もうとしている。アグネスゴールドがブラジル・ダービーを勝てば、100年以上におよぶブラジル競馬史上初のダービー3連覇に加え、南米競馬史上2頭目のダービー3連覇、父サンデーサイレンスとの親仔地球の表裏ダービー3連覇という人知の及ばない快挙になる。ディープインパクト産駒が日本ダービーを勝てば、アイルランド・ダービー4連覇のガリニュールを抜いて前人未踏のダービー5連覇となる。これはおそらくパートⅠ国における新記録だろう。


【ダービー3連覇を達成した種牡馬】

・ポスティン(ペルー)

・シアンモア(日本)

・サンデーサイレンス(日本)

・ディープインパクト(日本 ※4連覇中)

・ガリニュール(アイルランド ※4連覇)

・ジャックザバーバー(カナダ)

・スプリングフィールド(カナダ)

・ヴィクトリアパーク(カナダ)

・ポリストーム(南アフリカ)

・サマータイム(オーストラリア)


【ダービー3連覇にリーチをかけている種牡馬】

・アグネスゴールド(ブラジル)

・イントゥミスチーフ(アメリカ)


※個人調べのため正確なデータではない可能性があります。



 内容が面白かった・役に立ったという方は、ハートボタンのクリックや、SNSのフォロー、サポートなどをよろしくお願いします。HP運営のモチベーションにつながります。


----------

木下 昂也(Koya Kinoshita)

Twitter : @koyakinoshita24

G-mail : kinoshita.koya1024@gmail.com

サポート : https://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/2SZ4IYFB3H2AB?ref_=wl_share


【南米GⅠ馬名鑑、発売中です!】

https://note.com/koya_kinoshita/n/n2fa0cd6e260e