• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

GⅠブラジル開催を展望:歴史的偉業とアグネスゴールド産駒の勝機

 6月24日から26日にかけて、リオデジャネイロにあるガヴェア競馬場でGⅠブラジル・デーが開かれる。26日に行なわれるブラジル最大の競走GⅠブラジル(芝2400m - 3歳以上)に加えて、25日にはGⅠホベルト・イ・ネルソン・グリマルヂ・セアブラ(芝2000m - 3歳以上牝馬)GⅠマジョール・ズッコー(芝1000m - 2歳以上)が、26日にはGⅠジョッキークルブ・ブラジレイロ(芝1600m - 2歳)GⅠプレジデンチ・ダ・ヘプブリカ(芝1600m - 3歳以上)が行なわれる。



GⅠブラジル

GⅠブラジルの出走馬と枠順。

 GⅠブラジルは15頭で争われる。勝ち馬にはBCターフへの優先出走権が与えられる。


 GⅠブラジルと並んでブラジルの2大競走を構成するGⅠサンパウロ(芝2400m - 3歳以上)の勝ち馬⑦ホショテーハ(Roxoterra)にもっとも注目が集まる。有力馬ということに加えて、鞍上のジェアニ・アルヴェス騎手は女性騎手として史上初めてGⅠサンパウロを優勝した。GⅠブラジルも制してダブル達成となれば、ブラジル競馬史どころか世界の競馬史に残る大快挙となる。能力・実績共に出走馬上位なのは間違いなく、2021年以降は一度も3着を外していないという堅実さは魅力。だが、リオデジャネイロは今回が初出走という点が気になる。


 GⅠサンパウロで11着と大敗した①オスプレイ(Osprey)が巻き返しを狙う。リオデジャネイロで重賞4勝をあげ、前走GⅠサンパウロでは1番人気に支持されたが、初めて走ったシダーヂ・ジャルディン競馬場が合わなかったようだ。今回は主戦場としているガヴェア競馬場に戻るため、本来の実力を発揮できるだろう。


 もう1頭巻き返しを狙うのが、アグネスゴールド産駒の⑪オリンピッククレムリン(Olympic Kremlin)である。2021年のダービー馬で、昨年のGⅠブラジルは勝ち馬から4 1/2馬身差の4着だった。ダービー以降は勝ち星に恵まれなかったが、前走ガヴェア競馬場で行なわれた芝2500mの特別競走を快勝して復調気配である。


 3歳世代の大将格はクラウヂネイ・ファリアス騎乗の⑭シュガーダディー(Sugar Daddy)である。4月10日に同条件で行なわれたGⅠクルゼイロ・ド・スル(ブラジル・ダービー)を勝利し、2018年世代の頂点に輝いた。今年に入って着実に力をつけてきた馬で、古馬をまとめて飲み込む可能性は充分にある。気がかりなのは、ダービー以来2ヶ月ぶりの実戦という間隔と外枠。


 3歳勢で忘れてはいけないのがアグネスゴールド産駒の⑩オンライン(Online)である。ブラジル3冠競走の2冠目GⅠフランシスコ・エドゥアルド・イ・リンネオ・エドゥアルド・ヂ・パウラ・マシャーヂ(芝2000m - 3歳)を勝利した。その後はダービーで1番人気に支持されるも3着、前哨戦のGⅡドウトール・フロンチン(芝2000m - 3歳以上)でも1番人気で2着と歯がゆい結果が続いているが、2歳時から期待された能力の高さは疑いようがない。


 GⅡドウトール・フロンチンでまさかの逃げ切り勝ちをおさめた3歳馬⑧ジョレル(Jorel)も、引き続き伏兵として名前を挙げておく。


【筆者予想】

◎ オリンピッククレムリン

○ オスプレイ

▲ シュガーダディー

△ ホショテーハ



GⅠホベルト・イ・ネルソン・グリマルヂ・セアブラ

GⅠホベルト・イ・ネルソン・グリマルヂ・セアブラの出走馬。

 ホベルト・イ・ネルソン・グリマルヂ・セアブラは、『牝馬のGⅠブラジル』とも呼ばれる最強牝馬決定戦である。怪我で戦列を離れていたジャストライク(Just Like)という強豪がここで復帰予定だったが、間に合わずに回避となり、今年は10頭で争われる。注目すべきはアグネスゴールド産駒の4頭である。


 もっとも勝利に近いのは②ハイワイヤー(High Wire)だろう。牝馬3冠競走の2冠目GⅠヂアナ(芝2000m - 3歳牝馬)と3冠目GⅠゼリア・ゴンザーガ・ペイショット・ヂ・カストロ(芝2400m - 3歳牝馬)で2着。前走はサンパウロに遠征し、サンパウロ地区の牝馬最強馬決定戦であるGⅠOSAF(芝2000m - 3歳以上牝馬)に出走して2着となった。3歳勢ではもっとも強い馬であり、いよいよGⅠ2着地獄から抜け出したい。


 ⑤ジャスティスガール(Justice Girl)はハイワイヤーと同等の実力を持っている。牝馬3冠競走では5着、4着、3着とあと一歩およばなかったが、前哨戦である前走のGⅡジョゼー・カルロス・フラゴーゾ・ピリス(芝2000m - 3歳以上牝馬)では、直線入口で先頭に立ってそのまま押し切る強い競馬を見せた。母母アイリッシュリヴァー(Irish River)は2冠牝馬、全姉ゴールデンパシフィック(Golden Pacific)もGⅡ馬という良血馬が、念願のビッグタイトルに王手をかけている。


 アグネスゴールド3本目の矢となるのが4歳牝馬の①ザシスター(The Sister)である。去年のこのレースでは10着と大敗したが、それ以降メキメキと力をつけ、重賞3連勝を含む4連勝をおさめた。だが、前々走のGⅠOSAFではシダーヂ・ジャルディン競馬場初出走の影響か、1番人気ながら4着に敗れ、前走のⅡジョゼー・カルロス・フラゴーゾ・ピリスでもジャスティスガールに届かずの2着だった。斤量差も考えれば、上記2頭より上の着順は厳しいか。


 アグネスゴールド産駒の4頭目にして、もっとも不気味なのが⑦ルックオブラヴ(Look Of Love)である。3月のGⅠヂアナでは、豪快な末脚でハイワイヤーを倒してGⅠ初制覇をおさめた。3冠目をパスして休養に入り、今回が3ヶ月ぶりの実戦である。休養期間の情報はなく、怪我をしていたのか、ここに向けてじっくり調整されたのかは分からない。本調子であれば、前をまとめて差し切れる末脚を持っているだけに、一発あってもおかしくない。


 これらアグネスゴールド勢以外では、⑩デウザ(Deusa)が有力である。ベドゥイーノドブラジル産駒という珍しい血統の持ち主で、ハイワイヤーらと同じ3歳世代に属するが、牝馬3冠競走には出走しなかった。最近まで重賞未勝利の2勝馬にすぎなかったが、前走のGⅠOASFでは内の3番手から抜け出してあっと驚く勝利をおさめた。2度目の大物食いなるか。


【筆者予想】

◎ ルックオブラヴ

○ ジャスティスガール

▲ ハイワイヤー

△ ザシスター



GⅠマジョール・ズッコー


 ブラジルでは1000mのGⅠが2つある。シダーヂ・ジャルディン競馬場で行なわれるGⅠABCPCCは直線芝1000mだが、このマジョール・ズッコーはコーナーありの芝1000mである。


 今年は9頭で争われるが、勝敗はほとんど決まっていると言っても過言ではない。ワイルドイヴェント産駒の4歳牝馬③インエッセンス(In Essence)の1強である。昨年のこのレースの勝ち馬で、通算成績は1000mだけを10戦して7勝、重賞5勝という短距離のスペシャリストである。前哨戦となった前走のGⅢイポドロモ・ダ・ガヴェア(芝1000m - 2歳以上)では、1着入線を果たしたものの、不運な斜行で7着降着となった。他の馬とは実力が違いすぎる。


 逆転のチャンスが残されているのが、3歳牝馬の新星⑧オリアーナドイグアス(Oriana Do Iguassu)である。2021年11月26日にデビューすると、現在まで無傷の5連勝中。前走のGⅠABCPCCでは、牡馬や古馬を相手に4 3/4馬身差の快勝をおさめた。初めてのガヴェア競馬場とコーナーありの1000mでどのような走りをするか見物である。


 3歳牡馬の④アンオーソドックス(Unorthodox)も素質がある。芝1000mで2勝。前走のGⅢイポドロモ・ダ・ガヴェアは最下位降着となったが、インエッセンスをあわやのところまで追い詰める2着入線だった。


【筆者予想】

◎ インエッセンス

○ アンオーソドックス

▲ オヴェラート



GⅠジョッキークルブ・ブラジレイロ

GⅠジョッキークルブ・ブラジレイロの出走馬。

 26日に行なわれるGⅠジョッキークルブ・ブラジレイロは、シーズン最後の2歳GⅠである。例年このレースの勝ち馬が最優秀2歳馬に選出されており、来年の3歳路線を占う上でも重要な1戦である。


 ヒオ・イグアス所有の2頭に注目が集まる。④プレードイグアス(Play Do Iguassu)は5月13日にサンパウロで行なわれたGⅠジュリアーノ・マルチンス(芝1500m - 2歳)の勝ち馬であり、そのときの2着が③ペレードイグアス(Pelé Do Iguassu)だった。ペレードイグアスも2歳GⅡを勝っており、この2頭は実績充分である。


 しかし、イグアス勢よりも明らかに実力上位の馬がいる。それがアグネスゴールド産駒の⑫ロンドンムーン(London Moon)である。2月13日のデビュー戦を6 1/4馬身で快勝すると、2戦目はサンパウロに遠征して高額賞金の特別競走を勝利した。前走GⅡコンヂ・ヂ・ハースバーグ(芝1500m - 2歳)も3馬身差で勝利と、デビューから3戦無敗。何事もなければこの馬が勝つだろう。


 キャリアが浅い馬同士の戦いなので、思わぬ新星が現れるかもしれない。筆頭候補がマイシェリーアムール産駒の⑧トゥーサーウィズラヴ(To Sir With Love)である。ダートの未勝利戦を走って1戦1勝という成績だが、その1戦が8馬身差の圧勝だった。実力未知数なのが良くも悪くも恐ろしい。


 ⑪ドンフェファ(Don Fefa)の名前も挙げておきたい。2走前の未勝利戦では⑥ヌレイエフボーイ(Nureyev Boy)に6馬身も離された2着だったが、直線で右に左に蛇行する酷い競馬ながらよく追い込んできた。前走の未勝利戦をあっさり突破したように、能力は高そうだ。


【筆者予想】

◎ ロンドンムーン

〇 ドンフェファ

▲ ヌレイエフボーイ

△ トゥーサーウィズラヴ



GⅠプレジデンチ・ダ・ヘプブリカ

GⅠプレジデンチ・ダ・ヘプブリカの出走馬。

 ブラジルのマイル王決定戦であるGⅠプレジデンチ・ダ・ヘプブリカは、5つのGⅠの中でもっとも実力が拮抗し、予想の難しいレースである。


 1番人気はプットイットバック産駒の⑭ジェットクラス(Jet Class)になるだろう。今年に入って無傷の3連勝中である。4月のGⅢジョゼー・パウリーノ・ノゲイラ(芝1600m - 3歳以上)では2番手から楽に抜け出して4 3/4馬身差の勝利、前走5月のGⅢプレジデンチ・バルガス(芝1600m - 3歳以上)でも4 3/4馬身差の逃げ切り勝ちと、競馬の内容も素晴らしい。4連勝でいっきにマイル王の座を狙う。


 ⑫ビエンスレーニョ(Bien Sureño)は、5月15日にサンパウロで行なわれたGⅡプレジデンチ・ダ・ヘプブリカ(芝1600m - 3歳以上)の勝ち馬である。これを含めて現在4連勝中と絶好調。2,3歳時からGⅠに出ていた素質馬で、昨年のこのレースでは人気薄ながら5着に食い込んだ。GⅠ獲りへ、機は熟した。


 昨年2着だった⑪カンペランダ(Campelanda)は、24戦して18戦が3着以内という安定感が売り。だが、今年の始動戦を4 1/4馬身差で勝ったのは良かったものの、前走のGⅡプレジデンチ・ダ・ヘプブリカでは11頭立ての6着と大敗した。成績的にも年齢的にも上澄みは望めなさそうで、今年は厳しい戦いを強いられるだろう。


 出走17頭中もっとも伸びしろがありそうなのが、3歳牝馬ながらここに挑んできた⑯ラルヴィエール(La Louviere)である。ブラジルの1000ギニーにあたるGⅠエンヒキ・ポソーロ(芝1600m - 3歳牝馬)で2着に入ったが、GⅠヂアナでは7着に敗れた。この敗戦を受けて陣営はマイル路線を選択し、5月1日のGⅢエウヴァルド・ロヂ(芝1600m - 3歳以上牝馬)で古馬を相手に差し切り勝ちをおさめた。混戦となった今年は3歳牝馬にも勝機がある。

 

 その他、3連勝でリステッド競走を制した②ジョゼーイグナシオ(José Ignacio)、アグネスゴールド産駒の重賞馬⑮カリビアン(Caribean)の名前を挙げる。


【筆者予想】

◎ ラルヴィエール

○ ジェットクラス

▲ ビエンスレーニョ

△ カンペランダ



 内容が面白かった・役に立ったという方は、ハートボタンのクリックや、SNSのフォロー、サポートなどをよろしくお願いします。HP運営のモチベーションにつながります。


----------

木下 昂也(Koya Kinoshita)

Twitter : @koyakinoshita24

G-mail : kinoshita.koya1024@gmail.com

サポート : https://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/2SZ4IYFB3H2AB?ref_=wl_share


【南米GⅠ馬名鑑、発売中です!】

https://note.com/koya_kinoshita/n/n2fa0cd6e260e