サンパウロの女王ジェアニ・アルヴィス騎手がサウジアラビアの騎手招待競走に選出

写真：Jockey Club De São Paulo http://www.jockeysp.com.br/corridas/news_mostra.asp?id=8708

　2月24日にサウジアラビアで開かれる騎手招待競走に、ブラジルの女性騎手であるジェアニ・アルヴィス騎手が選出された。同競走にはすでにジョアン・モレイラ騎手が選出されており、ブラジルから2名が参加することになった。

「このような大きなイベントに参加できることになってとても幸せです。騎手としての夢がまた1つ叶いました」と、アルヴィス騎手は自身の Instagram に投稿した。

　ジェアニ・アルヴィス騎手はブラジル北東部にあるセアラー州アコピアーラという田舎町で生まれた。実家が農場だったことから、幼いころから馬に乗れたという。8歳のときには、馬に乗って牛を追いかけるヴァケジャーダという競技に出場していた。

　2008年、アルヴィス騎手は18歳のときにサンパウロに移住し、母親の反対を押し切ってサンパウロ・ジョッキークラブの競馬学校に入学した。見習い騎手としての2年間で137勝をあげ、プロ騎手としての免許を習得した。本当は獣医師の免許も取って騎手活動と並行する予定だった。だが、ある日乗っていた馬が骨折して予後不良となったとき、自分の手で安楽死はできないと分かり、獣医になる夢を諦めたという。

　当時のブラジル競馬は女性に対する偏見が強かった。女性を自分の馬に乗せたくない馬主や、女性騎手に賭けることはできないという偏見から、不当な乗り替わりや降板を味わったという。「私は現在の地位を得るために数多くの苦難を経験しました。常に人より2倍の努力をしなければなりませんでした」と、アルヴィス騎手はサンパウロ・ジョッキークラブのインタビューで述べた。

　2015年6月21日、ジェアニ・アルヴィス騎手は1つの偉業を成し遂げた。リオデジャネイロのガヴェア競馬場で行なわれたGⅠジョッキークルブ・ブラジレイロ（芝1600m - 2歳）を、ブラソフォルチ（Braço Forte）で優勝した。女性騎手がGⅠを勝利するのはブラジル競馬史上初めての出来事だった。

■ 2015年GⅠジョッキークルブ・ブラジレイロ

　2017年にはもう1つの快挙を達成した。勝利数において2016/17シーズンのサンパウロ・リーディングを獲得したのである。女性騎手が一地区の騎手リーディングを獲得するのもブラジル競馬史上初めてのことだった。

　2022年5月15日、アルヴィス騎手はまたもや歴史を作った。サンパウロ地区最大のGⅠ競走であるGⅠサンパウロをホショテーハ（Roxoterra）で優勝したのである。1923年に始まり、その年で第98回目の開催という長い歴史において、女性騎手の優勝はもちろん初めてである。

　しかも、このときのGⅠサンパウロには感動的な逸話がある。

　ホショテーハは2021年までエドゥアルド・ガルシーア調教師の管理馬だった。しかし、健康状態の悪化で入院を余儀なくされたため、2022年から弟のエメルソン・ガルシーア調教師に管理が移っていた。エドゥアルド・ガルシーア調教師は残念ながら2月1日に心臓疾患のため60歳で亡くなった。レース後のインタビューで、ジェアニ・アルヴィス騎手は涙を流しながら次のように述べた。

「とても感動しています。今日はたくさんの人が私を応援してくれました。励ましのメッセージも受け取りました。この人たちを失望させるわけにはいかないと思っていました。私を信頼してくれたチームのみんなに感謝したいです。また、この勝利は今日という日の感動を味わうことなく旅立ったエドゥアルド・ガルシーア調教師に捧げます。きっと天国ですべてを見てくれたでしょう」

　2021/22シーズンは60勝をあげて自身2度目となるサンパウロ騎手リーディングを獲得。2022年の1年間で重賞を5勝した。今シーズンも2月4日時点で29勝をあげてリーディング4位につけている。1児の母という大変な仕事を兼任しながら、サンパウロNo.1ジョッキーとして君臨している。

■ 2022年GⅠサンパウロ