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ジョアン・モレイラ騎乗のハットトリック産駒ラプターズがブラジル最大の競走GⅠブラジルを優勝


ラプターズ(Raptor's)
写真:Jockey Club Brasileiro / Sylvio Rondinelli https://jcb.com.br/home/noticias/394871/394871/

 6月18日、ブラジルのリオデジャネイロにあるガヴェア競馬場でGⅠブラジル(芝2400m - 3歳以上)が行なわれた。ブラジル最大の競走であり、勝ち馬にはBCターフの優先出走権が与えられる。昨年はこのレースを勝ったノーティラス(Nautilus)が権利を行使してBCターフに出走した。


 今年は18頭で争われた。GⅠサンパウロの優勝馬ドウトールスレーニョ(Doutor Sureño)は出走しなかったが、3歳馬も牝馬も含めてブラジルのトップクラスが出走してきた。近年稀に見るハイレベルな1戦である。


 人気は割れた。ハットトリック産駒の3歳馬で、今年のGⅠクルゼイロ・ド・スル(ブラジル・ダービー)を勝った⑧ラプターズ(Raptor's)が5.2倍で1番人気となった。ダービーのときの鞍上だったエンデルソン・フェルナンヂス騎手が契約の都合で騎乗できないため、ジョアン・モレイラ騎手に白羽の矢が立った。


☞☞☞ ハットトリック産駒のラプターズがブラジル・ダービー馬に輝く

 そのエンデルソン・フェルナンヂス騎手が跨るアグネスゴールド産駒の⑯オンライン(Online)が6.4倍の2番人気に支持された。昨年の3冠第2戦目を勝ったGⅠ馬で、現在3連勝中と勢いがある。


 7.2倍の3番人気には⑰ナオンダマイス(Não Da Mais)が続いた。2019年のGⅠカルロス・ペジェグリーニを含むGⅠ4勝と、出走馬の中でもっとも実績がある。2020年からフランスに移籍したが、今年5月のGⅠサンパウロに合わせて帰国して2着と好走した。そのときの状態は70%とのことであり、叩き2走目の上澄みが期待できる。


 18頭のうち2頭が牝馬となった。牝馬3冠最終戦のGⅠゼリア・ゴンザーガ・ペイショット・ヂ・カストロの勝ち馬⑩ラーラーラー(Lah Lah Lah)と、アグネスゴールド産駒の現役最強牝馬⑮ハイワイヤー(High Wire)である。とりわけ、ハイワイヤーは前日の牝馬限定GⅠホベルト・イ・ネルソン・セアブラではなく、あえて牡馬にぶつけてきた。


☞☞☞ 伏兵ラーラーラーが大混戦のGⅠゼリア・ゴンザーガ・ペイショット・ヂ・カストロを差し切り勝ち


 ⑤ライオネルザベスト(Lionel The Best)が押してハナを主張した。2番手には②ジョレル(Jorel)と⑦リメイラ(Limeira)が並んだ。人気どころでは、ナオンダマイスは4,5番手を追走し、その後ろにオンラインが続いた。さらにオンラインを見る形でラプターズが中団の内で脚を溜めた。


 直線に入ると、道中はずっと内で黙っていたラプターズが狭いスペースから抜け出し、外に回したオンラインとの追い比べとなった。この争いをジョアン・モレイラ騎乗の1番人気ラプターズが1馬身差で制して勝利した。良馬場の勝ちタイムは2分24秒91。


「すべての騎手がいつの日かGⅠブラジルを勝つことを夢見ている。自分自身も23年間そうしてきた。ラプターズは素晴らしい馬で、GⅠブラジルでこんなにもチャンスのある馬が回ってくる機会はこれまでなかった。乗せてくれた陣営にとても感謝している。ルイス・エステヴィス調教師はこの馬に最高の仕上げをしてくれた。今はとても晴れ晴れとして気持ちである。落ち着いて家に帰りたい。自分が生まれた国でもっとも重要なレースを勝つことができて本当に嬉しい」と、鞍上のジョアン・モレイラ騎手は述べた。GⅠブラジルはこれが初優勝であり、レース後には涙を流して喜んだ。


 管理するルイス・エステヴィス調教師は5度目のGⅠブラジル制覇となった。2017年のヴォアドールマギー(Voador Magee)、2018年のクアルテートヂコルダス(Quarteto De Cordas)、2019年と2021年のジョージワシントン(George Washington)、そして2023年のラプターズである。


 2着にはオンラインが入った。ハットトリック産駒とアグネスゴールド産駒による歴史的なワンツー決着かと思われた、しかし、16着入線の⑭ジェットクラス(Jet Class)のジョルジ・ヒカルド騎手からオンラインの騎乗に対する異議申し立てが入った。裁決の結果、オンラインが4コーナーで外に持ち出すときにジェットクラスを妨害したため、オンラインは16着に降着となった。


 直線追いこんで3着に入線した17番人気の伏兵エッシャー(Escher)が2着に繰り上がった。3着は4着入線だったオリンピッククレムリン(Olympic Klremlin)となった。



 ラプターズは父ハットトリック、母ユーロトリップ、その父ワイルドイヴェントという血統の3歳牡馬。2019年9月8日にブラジルのモーホ牧場が生産した。


 2022年2月19日にデビューし、2戦目で初勝利をあげた。同年12月には2歳GⅢフェデリーコ・ラングレンを優勝して重賞馬となった。


 今年は牡馬3冠競走の初戦であるGⅠエスタード・ド・ヒオ・ヂ・ジャネイロ(2000ギニー)から始動して2着。2戦目のGⅠフランシスコ・エドゥアルド・イ・リンネオ・エドゥアルド・パウラ・マシャードでは4着に敗れたが、ブラジルのダービーにあたるGⅠクルゼイロ・ド・スルを優勝した。


 今回の勝利で通算成績は8戦4勝(重賞3勝)となった。リオデジャネイロの2大競走であるダービーとブラジルの両方を勝ったことで、2022/23シーズン年度代表馬の座はほぼ確実である。ダービー馬が同年のGⅠブラジルを優勝するのは、2014年のバルアバリ(Bal A Bali)以来である。


 ラプターズにはBCターフの優先出走権が与えられた。陣営から今後についての発表はなかったが、権利を行使する可能性は充分にある。



Koya Kinoshita

スペイン語通訳

スペイン競馬と中南米競馬を隅々まで紹介&徹底解説する『南米競馬情報局』の運営者です。

全国通訳案内士というスペイン語の国家資格を所持しています。

東京在住のインドア派。モスバーガーとミスタードーナツが好きです。

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