
木下 昂也(Koya Kinoshita)
メキシコ3冠馬イニエスタが3冠馬対決を制して中米ダービー馬となる
12月11日、ベネズエラのラ・リンコナーダ競馬場で中米選手権クラシコ・デル・カリベ(ダ1800m - 3歳)が行なわれた。中米選手権のメインレースとなる。中米・カリブ海地域でもっとも強い3歳馬を決める戦いであり、中米全体のダービーに相当する。
プエルトリコ2冠馬のパパーペドロ(Papá Pedro)やドミニカ3冠馬のミッドナイトコーフィー(Midnight Koffe)が残念ながら回避となったが、国内外の実力馬がそろった。ベネズエラ代表が4頭、パナマ代表が3頭、メキシコ代表が2頭、ドミニカ代表1頭の10頭で争われた。
地元ベネズエラの大将格は牝馬の⑧リンダカーター(Lyndacater)である。今年無敗でベネズエラ牝馬3冠を達成した。牝馬限定のダマ・デル・カリベには向かわずここに挑戦。2017年のハラハラ(Jala Jala)以来となるレース史上6頭目の牝馬による勝利を目指す。
メキシコからはメキシコ3冠馬の⑦イニエスタ(Iniesta)が参戦。ここまで通算成績は12戦11勝。現在7連勝中と勢いがある。能力はこの馬がもっとも高いが、初の海外遠征がどうなるか。
⑤ミステルサンティ(Mr. Santi)は今年のパナマ2冠馬である。3冠を狙った前走では牝馬の⑩ピカフロールウベ(Pica Flor V.)に敗れて2着だった。この2頭にも注目である。
スタートは横一線だった。イニエスタとリンダカーターが先頭をうかがったが、ドミニカ代表の⑨ソルクンヘイ(Sol Kung Hey)が外から勢いをつけてハナに立った。2番手にリンダカーターがつけ、それをマークするようにイニエスタが続いた。
3コーナーの手前で早くもリンダカーターが先頭に立つと、イニエスタが離されまいとついていった。ベネズエラ代表の④アメラサード(Amelazado)も中団からポジションを上げて先頭をうかがった。
直線に入ると、パコ・ロペス騎乗のイニエスタが粘るリンダカーターを競り落として優勝した。良馬場の勝ちタイムは1分51秒00。1馬身差の2着にリンダカーターが入り、さらに3馬身差の3着はアメラサードだった。
中米選手権のこれまでの5レースはいずれもベネズエラ代表馬が勝利していたが、イニエスタがリンダカーターとの3冠馬対決を制し、ベネズエラの完全優勝を阻止した。
「この馬に騎乗する機会を与えてくれたオスカル・ゴンサーレス調教師に感謝したい。この馬には初めて乗った。取りたいポジションを取れたし、追ってからの反応も良かった。ハラミージョの乗っていた牝馬(=リンダカーター)が強かったので、難しいレースになった」と、鞍上のパコ・ロペス騎手は振り返った。
イニエスタは父ズィーワット、母ウェンディー、その父アレガンドロデという血統の3歳牡馬。2019年5月6日にメキシコのサン・イシドロ牧場で産まれた。馬名の由来はサッカー選手のアンドレス・イニエスタ。
2021年7月10日にデビューすると、無傷の4連勝で2歳GⅠロベルト・A・ルイスに挑戦した。しかし、4着と敗れて連勝がストップ。現時点ではこれが生涯唯一の敗戦となっている。その後は11月27日のGⅠフューチュリティー・メヒカーノを勝利した。
3歳になると、GⅡナシオナル、GⅠジョッキークルブ・メヒカーノ、GⅠデルビー・メヒカーノを優勝し、2018年のククルカン(Kukulkán)以来となる史上9頭目のメキシコ3冠を達成した。
早くからクラシコ・デル・カリベを最大目標に据え、メキシコ国内の古馬混合GⅠには出走しなかった。9月17日にラス・アメリカス競馬場で行なわれた特別競走を勝利してベネズエラに向かい、見事に中米最強3歳馬の座を手に入れた。通算成績は13戦12勝(重賞6勝)。
メキシコ代表馬による中米ダービーの制覇は2018年のククルカン以来14頭目である。
1967年 エルコマンチェ(El Comanche)
1969年 グアダムール(Guadamur)
1970年 ハシン(Hashin)
1971年 ナコサレーニョ(Nacozareño)
1975年 テスイトラン(Tezuitlán)
1976年 ボイポルウノ(Voy Por Uno)
1978年 エスガルタ(Ezgarta)
1980年 ピコタソ(Pikotazo)
1988年 ドンガブリエル(Don Gabriel)
1995年 ロコチョン(Locochón)
2013年 ディアマンテネグロ(Diamante Negro)
2017年 ハラハラ(Jala Jala)
2018年 ククルカン(Kukulkán)
2022年 イニエスタ(Iniesta)
この中でメキシコ3冠を達成しているのは、ピコタソ、ククルカン、そしてイニエスタの3頭しかいない。
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木下 昂也(Koya Kinoshita)
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