• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

ドバイWCデーに出走する南米馬の紹介と評価

アエロトレン(ドバイWC)


出走までの経緯


 昨年10月24日にウルグアイのマローニャス競馬場で行なわれた競馬の南米選手権GⅠラティーノアメリカーノを優勝後、陣営から中東遠征が発表された。12月初旬にドバイへ飛び、同じころにサウジカップの招待を受け取った。ドバイで調整を続け、遠征初戦となるサウジカップでは5着と好走した。


プラス評価


 ウルグアイ(出国)⇒ ドイツ(乗り継ぎ) ⇒ ドバイ(調整) ⇒ サウジ(サウジC) ⇒ ドバイ(ドバイWC)という日程だが、ここまでサウジカップの1戦しか使っていないため疲労はない。むしろ叩き2戦目で良化が見込める。アントニオ・シントラ調教師によると「過去最高の状態にある」とのことである。


 ウルグアイではマイルが主戦場の馬だったが、3歳時にGⅠジョッキークルブ(ダ2000m)を、6歳時にGⅠラティーノアメリカーノ(ダ2000m:1分59秒16の国内レコード)を勝っていることから、2000mまでは守備範囲である。サウジカップでの追い上げを見ると、歳を重ねた今は2000mのほうが向いているかもしれない。


マイナス評価


 やはり実力差があるのは否めない。いくら状態が良いとはいえ、インバソール級(Invasor)の能力を持っているとは思えない。サウジカップの上位馬を逆転するのは難しく、ライフイズグッド(Life Is Good)とホットロッドチャーリー(Hot Rod Charlie)の参戦によって勝機はさらに薄くなった。


結論


 掲示板に乗れればOK。すべてが上手くいったとしても3着までか。


今後


 今シーズンからウルグアイのクアトロ・ピエドラス牧場で種牡馬入りすることが決まっており、すでにシンジケートが組まれている。帰路でイギリスに寄り、アスコット開催に参戦するという話もあるが、現時点ではドバイWCがラストランである。






イルウィン(UAEダービー)


出走までの経緯


 アルゼンチン1冠目のGⅠポージャ・デ・ポトリージョスと、3冠目でダービーにあたるGⅠナシオナルの勝ち馬。ナシオナルの後は南米最大のGⅠ競走カルロス・ペジェグリーニ ⇒ 中東遠征という計画だった。しかし、2着に敗れた2冠目のGⅠジョッキークルブでの検体からコバルトが検出されたため、同競走を失格、2022年1月20日まで出走停止を科された。これによりカルロス・ペジェグリーニは回避を強いられたが、ドバイ遠征は続行された。


 問題は調教師だった。管理するハビエル・フレン調教師が2022年3月20日まで資格停止となったため、ドバイでの調教ができなくなってしまった。そこで馬主のロベルト・ソスキン氏はウルグアイ馬を連れてドバイ遠征を行なったアントニオ・シントラ調教師に電話をかけ、イルウィンも一緒に管理してもらうことになった。したがって、ドバイでの登録はウルグアイとなっているが、正しくはアルゼンチンである。ウルグアイのスタッドブックに登録もなければ、ウルグアイに一歩も足を踏み入れたことがない。


プラス評価


 ドーピングによる失格があったとはいえ、3冠競走を1着、2着入線、1着でまとめた実力がある。とりわけ、2着に9馬身差をつけたGⅠナシオナルでのパフォーマンスは圧巻だった。乗り慣れたフランシスコ・ゴンサルヴェス騎手がアルゼンチンから駆けつけて手綱を握るのも心強い。


マイナス評価


 これが出走停止明け4ヶ月ぶりの出走、しかも海外初戦となる。アントニオ・シントラ調教師によると、ドバイ到着後は健康状態が優れず、1ヶ月近くも馬場入りできなかったとのこと。2月に入って調教を再開し、調子は格段に良くなったが、それでも100%ではないこと認めている。そんな状態でいきなり勝てるほど甘い舞台ではない。


 この世代のアルゼンチン牡馬は非常に弱い。1冠目と3冠目でイルウィンの2着だったストアフロント(Storefront)はいまだに未勝利馬。古馬を相手にしたGⅠカルロス・ペジェグリーニでは19頭立ての17着、前走のGⅡでも勝ち馬から9馬身差の最下位に敗れた。2冠目の勝ち馬ソディアカル(Zodiacal)もまったくの人気薄での一撃で、ダービーでは6着だった。ベスパシアーノ(Vespaciano)、フィエルアミーゴ(Fiel Amigo)といった同世代のGⅠ馬も、古馬を相手に散々な結果に終わっている。弱い世代の強い馬は評価が難しい。


結論


 着外濃厚。が、もしディープスカイ的な弱い世代の強い馬なら上位も狙える。


今後


 発表なし。






キーファー(UAEダービー)


出走までの経緯


 ウルグアイで無傷の3連勝後にドバイ遠征が発表された。アントニオ・シントラ調教師ではなく、リカルド・コロンボ調教師の管理馬である。1月21日のUAE2000ギニー・トライアルでドバイ・デビューを果たし、3着と好走した。2月11日のUAE2000ギニーでも2着に入ると、陣営はサウジ・ダービーの招待を受諾、6着でゴールした。その後はドバイに戻り、3月8日にUAEダービーの招待を受諾した。


プラス評価


 確実に伸びてくる末脚。リカルド・コロンボ調教師いわく、サウジ・ダービーではゲートで失敗したので、それが改善されればもっとやれそう。


マイナス評価


 臨戦過程が厳しい。12月のウルグアイ出国から、1月にドバイ、2月にドバイとサウジ、そして今回のUAEダービーと慌ただしい。サウジ・ダービーの6着を上回れるような上澄みは期待できそうにない。


結論


 着外。


今後


 UAEダービーの招待を受諾した直後、香港の馬主(Yue Yun Hing & Edmond Yue Kwok Yin)への売却が発表された。UAEダービーは新しい勝負服で出走するが、リカルド・コロンボ調教師、エクトル・ラソ騎手という陣営は変わらない。






クオリティーブーン(UAEダービー)


出走までの経緯


 アエロトレンの帯同馬として12月初旬にウルグアイを出国した。出国からわずか20日後の12月23日にドバイ初戦を迎えると、半年ぶりの出走、斤量61kgという悪条件もなんのその、強烈な末脚で差し切り勝ちをおさめた。その後はUAE2000ギニー・トライアルで2着、UAE2000ギニーで3着となり、前走3月5日のアル・バスタキヤでは白星をあげた。


プラス評価


 UAEダービーでドバイ5戦目となるが、サウジ遠征はしなかったのでキーファーほど日程は忙しくない。アントニオ・シントラ調教師は「南米の馬は遠征初戦から状態を落としていくことが多いが、クオリティーブーンは反対に状態を上げている。調子はずっと良い」と述べた。今度も自慢の末脚を発揮できそうだ。


マイナス評価


 スタート難。スタートを決めたとしても序盤のダッシュがつかずに置いていかれる。アル・バスタキヤではまだマシだったが、陣営はその点を心配しており、結局差し届かずという展開になってもおかしくない。


 ドバイで2勝しているが、2勝とも倒した相手は大したことない。キーファーと同じくらいの着順だったことを考えれば、パインハースト(Pinehurst)やアジュールコースト(Azure Coast)、日本馬に先着するのは至難の業か。


結論


 掲示板が御の字。アジュールコーストと一緒に追い込んでくるなら3着はある。


今後


 発表はないが、ドバイに遠征したウルグアイ馬はそのままドバイに残ることが多い。クオリティーブーンも同じ道を辿るのではないか。






ミリニャーケ(ドバイGC)


出走までの経緯


 2019年のアルゼンチン2冠馬で、アルゼンチン競馬史上初となる女性調教師の管理馬によるダービー制覇を達成した。2020年はアメリカ、2021年はサウジアラビアに遠征した。2021年のGⅠカルロス・ペジェグリーニの後、僚馬ルディートリガー(Rudy Trigger)を帯同馬に今年も中東遠征を行なうことが発表された。サウジアラビアのレッド・シー・ターフでは6着に敗れた。


プラス評価


 特になし。


マイナス評価


 陣営の使い方が理解できない。ベストは明らかに2000m ~ 2400mだが、なぜか3000m超えの長距離を走らせたがる。年齢的にこれ以上の成長があるとは思えない。


結論


 着外。


今後


 おそらくアルゼンチンに帰国する。






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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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