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藤田菜七子騎手が参加するスペインの女性騎手招待競走とは?【追記あり(9月8日)】

 2023年9月24日、スペインのマドリードにあるサルスエラ競馬場で『第2回女性騎手招待競走(II CAMPEONATO INTERNACIONAL DE JOCKETAS 2023)』が開催される。


 第1回女性騎手招待競走は、2020年3月8日に開催された。このときは日本から藤田菜七子騎手が招待されたが、直前の落馬事故による負傷で残念ながら出場辞退となった。以降も女性騎手招待競走を開催する計画はあったが、新型コロナウイルスの影響によって中止を余儀なくされた。


  • レースは?

  • 参加者は?

  • ポイントは?

  • 放送は?

  • 藤田騎手が気をつける点は?

  • 現地観戦のポイントは?

  • メディアが守るべき点は?


 今回は、第2回女性騎手招待競走を徹底解説する。



レースについて


 第2回女性騎手招待競走については、2023年7月末に修正された『スペイン競馬年間開催要項』の89,90,91ページに記載がある。


 第2回女性騎手招待競走の開催日は9月24日。この日はスペインのセントレジャーであり、スペイン3冠競走の最終戦であるカテゴリーA競走ビリャメホール(芝2800m - 3歳)が行なわれる。


 全部で8レースが開催され、そのうち3レースが女性騎手招待競走に割り当てられている。芝1500mのレースが2つ、芝1200mのレースが1つとなる。1200mは直線競馬になる可能性があるが、現時点では分からない。。


 3レースとも出走条件は3歳以上。最大12頭立て。レース賞金は1着4,500ユーロ、2着1,800ユーロ、3着900ユーロ、4着450ユーロとなっている。


 12頭を超える登録があった場合、出走枠から漏れた馬が補欠(リザーブ)に回る。出走取消などがあれば、補欠馬が繰り上がりで出走し、もともとの馬に跨る予定だった騎手が騎乗する。


 参加する女性騎手の人数よりも出走頭数が下回った場合、抽選によって誰が騎乗するかを決める。したがって、参加者が3レースすべてに出走できるとは限らない。抽選漏れによって騎乗できなかった騎手には、後述するポイント制度の最低点が与えられる。また、再び抽選で除外されることもなくなる。



参加騎手について


 サルスエラ競馬場から参加騎手に関する公式発表はまだない。しかし、スペインを拠点にしている以下の女性騎手は参加するものと思われる。


  • ビクトリア・アロンソ騎手

  • フリア・サンブディオ騎手

  • デニサ・シコロワ騎手


☞☞☞ 華麗なるフットボール一族、ビクトリア・アロンソ騎手

 2020年の第1回女性騎手招待競走には8名の騎手が参加した。怪我や新型コロナウイルスの影響もあって、招待が思ったように上手くいかなかった。なお、このとき優勝したのはスウェーデンのウルリカ・ホルムクイスト騎手だった。


 各レースの最大出走頭数が12頭なので、12名以上選出されることはありえない。藤田騎手を含め、今年は10名ほどの騎手が選出されるのではないかと思われる。


【追記(2023年9月8日)】

9月8日にサルスエラ競馬場が出したニュースレターで、様々な国から12名の女性騎手を招待すると発表された。


【追記(2023年9月8日)】

サルスエラ競馬場が12名の出場者を発表した。


 ここで、スペイン競馬が抱える1つの問題について理解しておいてほしい。


 スペイン競馬は出走頭数が少ない。1桁頭数のレースは当たり前で、5頭立て前後でレースが行なわれることも珍しくない。そのため、出場騎手が必ず3レースすべてに騎乗できる保証はない。おそらく、1人1回は休みを強いられることになるだろう。


 この点に関しては、競馬産業の規模・スペイン国内にいるサラブレッドの頭数・馬のローテーション(出走プラン)との兼ね合いなので、仮に藤田騎手が頭数不足で騎乗できないとしても、サルスエラ競馬場の関係者や他の騎手たちを批判することはしないでほしい。



ポイントについて


  • 1着 15ポイント

  • 2着 12ポイント

  • 3着 10ポイント

  • 4着 7ポイント

  • 5着 4ポイント


 それ以外の着順、競走除外、競走中止、出走頭数不足による騎乗漏れの場合は2ポイントが与えられる。


 出場する女性騎手が怪我や検査などで騎乗できなくなり、招待競走に参加していない騎手が代わりに騎乗することになった場合は、その代替騎手の着順ポイントは次の着順の騎手に与えられる。つまり、代替騎手が1着になった場合は、2着の騎手に1着の15ポイントが与えられる。


 3レースの合計得点がもっとも高い騎手が優勝となる。同点の場合は、勝利数の多いほうの優勝となる。合計点・1着回数も同じである場合は、2着の回数が多いほう。2着回数も同じ場合は、3着回数の結果で優勝者を決める。



放送について


 つい先日、サルスエラ競馬場は9月24日の第1レースが11時30分発走になることを発表した。スペインと日本の時差は7時間なので、日本時間の18時30分から始まる。睡魔と戦わなくても観戦できる時間帯である。


 しかし、現状では、日本からスペイン競馬を見られる手段はほとんどない。


 スペインの競馬中継は、Movistar Plus+というDAZNのようなサイトで放送されている。女性騎手招待競走を見るには、まずはMovistar Plus+への登録が必要である。だが、すべてスペイン語であることに加えて、月額14ユーロの支払いが必要で、かつ、日本からはVPNをつながないと放送を見ることはできない。


 サルスエラ競馬場はYouTubeチャンネルを持っており、YouTubeライブでの配信手段も整えている。しかし、基本的には7月から8月にかけての夏開催のライブ配信のみである。もしかしたら、女性騎手招待競走の日はYouTubeでライブ配信があるかもしれないが、現時点では何のアナウンスもない。


 したがって、グリーンチャンネルが頑張るか、競馬関係者の誰かがサルスエラ競馬場およびMovistarと交渉しなければ、日本からレースを生で見ることは難しい。




藤田騎手が気をつけるべき点


 藤田騎手は初めてスペインで騎乗するわけだが、スペイン競馬と日本競馬では当然のことながらルールが違う。もっとも異なるのは、鞭の使用に関するルールである。


 スペイン・ジョッキークラブは、2023年4月2日から新しい鞭ルールを適用した。新ルールは、国際競馬統括機関連盟(IFHA)加盟国の中でも相当厳しい内容となっている。


 旧ルールでは5回まで許されていた鞭の使用が、新ルールでは4回までに制限される。5回の使用で50ユーロ、6回の使用で100ユーロ、7回の使用で200ユーロの罰金となり、8回の使用では開催2日、9回以上の使用では開催12日もの騎乗停止が言い渡される。


 また、違反回数によって罰則が重くなっていく。


詳しくはこちら☟

『スペイン・ジョッキークラブが4月2日から新たな鞭ルールを適用』

https://www.keiba-latinamerica.com/post/espana00039



現地観戦したい方へ


 サルスエラ競馬場の立地はかなり不便である。電車が近くを通っていないため、最寄り駅というものが存在しない。車、バス、タクシーが選択肢になる。


 レンタカーは現実的ではないので、バスかタクシーの2択になる。マドリード初心者でバスは無謀であるため、タクシーを選んだほうが無難である。お金に余裕がある方は、JTBやHISなどの旅行会社に送迎を手配してもらうといいだろう。なお、マドリードで英語が通じると思ってはいけない。


 チケットは現地、もしくはオンラインで購入できる。ノーマルチケットとプレミアムチケットがあり、ノーマルは14ユーロ、プレミアムは70ユーロとなっている。ノーマルチケットでもパドックやスタンドには入ることができる。ただし、オンライン購入サイトは全編スペイン語であるため、翻訳サイトの力を借りなければならない。


 サルスエラ競馬場は家族向けなので、服装についてはイギリスほど気にしなくていい。短パン・サンダルはオススメできないが、それなりの格好をしていけば間違いは起こらない。ジャケットを着ていれば、基本的には競馬場のどこでも入場することができる。


 マドリードの中心地・観光地にはスリがいる。財布やスマートフォン、パスポートには注意。盗難被害にあっても警察は何もしてくれない。「スラれるほうが悪い」ということを覚えてくといい。最近はあまり治安も良くないため、真夜中の外出(路地裏や細い道)は避けること。



取材に行くメディアへの注意点


 スペイン競馬の調教師の1人に、第19代アルブルケルケ公イオアネス・オソーリオという人物がいる。アルブルケルケ公は、1464年に当時のスペイン国王から直々に与えられた爵位というだけでなく、国王の前でも脱帽と起立を免除されていた特権公爵位である。


 ヨーロッパを代表する名門貴族であり、家柄だけを見ればイギリス国王よりもはるかに格上の存在である。先代の第18代アルブルケルケ公は、サルスエラ競馬場に銅像が建てられており、スペイン最高勲章である金羊毛勲章も授与されている。日本でこの金羊毛勲章を与えられたのは、明治天皇から明仁上皇までの4代の天皇のみである。


 くれぐれもオソーリオ調教師に対して失礼のないように。勝負服のコスプレなどをして陽気に写真など撮らないように。日本人競馬ファンの地位が奈落の底に落ちる。



Koya Kinoshita

スペイン語通訳

スペイン競馬と中南米競馬を隅々まで紹介&徹底解説する『南米競馬情報局』の運営者です。

全国通訳案内士というスペイン語の国家資格を所持しています。

東京在住のインドア派。モスバーガーとミスタードーナツが好きです。

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