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  • 木下 昂也(Koya Kinoshita)

2023年、この南米馬に注目しろ!


 

今年注目すべき南米馬を紹介


目次

 


アルゼンチン


 アルゼンチンで絶対に覚えておかなければならない1頭がマリブースプリング(Malibú Spring)である。父グリーンスプリング、母マツムラ、その父エディターズノートという血統の5歳牡馬で、2017年8月31日にアルゼンチンのビケーダ牧場で産まれた。


 デビューから1年半は怪我やコンディション不良などによって苦しい時間を過ごしたが、2022年になってようやく才能が開花した。昨年は7戦して無傷の7連勝。GⅠエストレージャス・マイルを5馬身差、GⅠパレルモを7馬身差で勝利するなど、ダートのマイル路線で圧倒的な強さを見せつけた。12月のGⅡでは初めて2000mに挑戦し、これも7馬身差で快勝。マイルから中距離でこの馬に対抗できる勢力は見当たらない。コンディションに気を使わなければいけない馬だが、今春のドバイ挑戦の可能性も噂されている。


 アルゼンチンの現3歳世代(2019年産馬)は、圧倒的な牡高牝低という評価が現地メディアでなされている。その証拠に、昨年のアルゼンチン最大のGⅠ競走カルロス・ペジェグリーニは1,2,3着を3歳馬が独占した。


 その強い3歳牡馬を引っ張るのが、ナタン(Natán)エルムシカル(El Musical)ザパニッシャー(The Punisher)の3頭である。この3頭はアルゼンチン3冠競走の2戦目GⅠジョッキークルブの1,2,3着馬である。


 キャッチャーインザライ産駒のナタンは現在怪我で戦線を離脱しているが、昨年は6戦して2勝、2着4回と連対率100%を維持した。イルカンピオーネ産駒のエルムシカルはアルゼンチンの2000ギニーにあたるGⅠポージャ・デ・ポトリージョスの勝ち馬で、ジョッキークルブで2着、ダービーにあたるGⅠナシオナルで2着、カルロス・ペジェグリーニでも2着と好走を続けている。シティースケープ産駒のザパニッシャーはそのカルロス・ペジェグリーニを優勝した。


 現3歳世代は王道路線だけでなく短距離路線でも古馬を圧倒した。ルブルース産駒のラブラード(Labrado)は、2歳時にGⅢエストレージャス・ジュニオール・スプリントを11馬身差で勝利すると、8月のGⅢパラグアイと10月のGⅠスイパチャでは当時直線1000mで10連勝を達成したスプリントの絶対王者リュティエブルース(Luthier Blues)を連続で撃破してみせた。11月のGⅠマイプーも勝利し、現在5戦5勝と無敗を継続中。直線1000mでラブラードを倒せる馬は今のところ見当たらない。


 キャンディライドに近い馬。そう称されているのが、キャッチャーインザライ産駒のサトゥ(Satu)である。デビューは3歳になった10月15日と遅かったが、デビュー戦を3馬身差で勝利。次走の1勝クラスの条件戦では2着に20馬身もの大差をつける圧勝をおさめた。キャリア2戦2勝ながら勢いそのままにGⅠホアキン・S・デ・アンチョレーナに出走すると、古馬を相手に逃げ切り勝ちをおさめただけでなく、勝ちタイム1分30秒90という芝1600mのアルゼンチン・レコードを樹立した。キャリアの少ない3歳馬によるホアキン・S・デ・アンチョレーナ制覇というのは、名馬キャンディライドとまったく同じ道のりである。


 外国にいるアルゼンチン馬では、ディディア(Didia)マヌーカ(Manuca)から目が離せない。


 ディディアはオーペン産駒の5歳牝馬。3連勝でアルゼンチンGⅠを2勝した後、ブループライズの後継者としてアメリカのメリーベルに購入され、アメリカで開業しているアルゼンチン人のイグナシオ・コレーアス調教師の下に移籍した。移籍後も2戦2勝。本来は昨年中にビッグレースに挑む計画だったが、怪我により休養を強いられた。2023年のBCフィリー&メアターフには間違いなく駒を進めてくるだろう。


 マヌーカはアグネスゴールド産駒の4歳牝馬。デビュー戦で最後方から追い込んで2着に10馬身差をつけるという圧巻の走りを見せ、素質馬として期待された。だが、怪我もあって2,3歳路線には進めなかった。10月のGⅡカルロス・P・ロドリゲスで重賞初制覇。12月のGⅠホアキン・S・デ・アンチョレーナで3着となった後、アメリカで開業しているブラジル人のパウロ・ロボ調教師の管理馬となった。RDI、ロボ、アグネスゴールドという陣営はシャドウェル・ターフ・マイルを優勝したイバール(Ivar)と同じ。アメリカでも芝のマイル路線で活躍できる。



チリ


 今チリでもっとも注目されているのがフォルティーノ(Fortino)である。父ミッドシップマン、母ファレーラス、その父フサイチペガサスという血統で、2019年8月3日にチリのドン・アルベルト牧場で産まれた。


 2歳時はGⅠアルベルト・ビアル・インファンテを含む6戦5勝(※2着が1回あるが、この2着は1着入線から斜行・降着によるもの)という成績をあげ、チリの2歳芝王者に君臨した。3歳時はGⅠで3戦連続2着と後手を踏んだが、チリ3冠競走の2戦目GⅠセントレジャーではダート2200mという未知の条件を克服して勝利した。また、2着に敗れた3冠競走の1戦目GⅠエル・エンサージョの勝ち馬がドーピング違反で失格濃厚であるため、フォルティーノは暫定で2冠馬となっている。2023年2月5日の3冠最終戦、チリのダービーにあたるGⅠエル・デルビーで1991年ウルフ(Wolf)以来となる9頭目のチリ3冠に挑む。


 フォルティーノの唯一の対抗馬にラカタン(Racatán)というルッキンアットラッキー産駒の馬がいた。しかし、香港に売却されたため、チリの3歳路線はフォルティーノの1強模様となった。だが、その1強を崩さんとする存在が年末に現れた。イワンデニーソヴィチ産駒の3歳牝馬ママリリー(Mama Lili)である。


 2022年7月1日にデビューし、連勝で8月のGⅠポージャ・デ・ポトランカスに挑んだ。しかし、重馬場に苦戦して11着と大敗した。仕切り直しの1戦となった9月のリステッド競走を僅差で制すと、GⅢパドックSも勝利。前走12月30日のGⅠラス・オークスでは、着差は1馬身差ながらも余裕の差し切り勝ちをおさめ、チリのオークス馬に輝いた。フォルティーノとママリリーはGⅠエル・デルビーで激突予定となっている。


 外国に移籍したチリ馬としては、オコナー(O'Connor)ジョークシシ(Joke Sisi)が活躍しそうだ。


 ボボマン産駒のオコナーは、4月に地元チリで行なわれた競馬の南米選手権GⅠラティーノアメリカーノを7 3/4馬身差で圧勝し、見事に南米王者に輝いた。ラティーノアメリカーノの勝ち馬には2月のGⅠサウジ・カップの出走権が与えられえることが非公式ながら決まっているため、陣営はサウジ・カップを目標にすることを宣言。4月のGⅠイポドロモ・チレで2着後、アメリカのサフィー・ジョセフ調教師の下に移籍した。10月16日のアメリカデビュー戦を6馬身差で快勝。前走は12月31日のGⅢハーランズホリデーSに出走したが、前残りの展開に苦しんで4着に敗れた。今後は1月28日のGⅠペガサスWCから2月25日のGⅠサウジ・カップを目指す。


 ジョークシシは父プラクティカルジョーク、母ラッキーシシ、その父ルッキンアットラッキーという血統の4歳牝馬。2019年9月1日にチリのタオミーナ牧場が生産した。


 デビュー戦を衝撃の15 3/4馬身差で圧勝。2歳GⅡクリアドーレスも13 1/4馬身差で勝利し、無傷の4連勝を決めた。6月18日のGⅠタンテオ・デ・ポトランカスではウナチキティータ(Una Chiquitita)のまさかの追い込みの前に2着に敗れたが、3歳になった8月27日のGⅠ1000ギニーでは3 1/4馬身差で危なげなく逃げ切った。11月にアメリカのイグナシオ・コレーアス調教師の下への移籍が決まった。なお、この馬は出産直後の事故で片目の視力を失った隻眼馬である。



ウルグアイ


 現在ウルグアイでもっとも強く、もっとも期待され、もっとも人気があるのがジローナフィーヴァー(Girona Fever)である。2018年8月13日にウルグアイのエル・サント牧場で産まれたテキサスフィーヴァー産駒の4歳牝馬。1000m~1200mを中心に通算成績は15戦13勝、2着2回とほぼ完璧な戦績を残している。


 2021年1月16日にデビューしてこれを勝利。3戦目の2歳限定の特別競走で2着に敗れたが、これ以降快進撃を見せる。2021年6月6日のレースから2022年2月27日のレースまで、圧勝に次ぐ圧勝で8連勝を達成。アルゼンチンGⅠへの遠征が予定されたが、叩き台として使った4月3日のレースで筋肉系の故障を発症して2着に敗れた。連勝がストップするだけでなく、約半年の離脱を強いられた。復帰後は3戦3勝。2023年1月6日に行なわれたウルグアイ最強スプリンターを決める戦いGⅢマローニャスを6馬身差で快勝し、レース連覇を果たした。今、この馬より速い馬は世界を見渡しても少ないだろう。


 ウルグアイ国内にいる馬としては、ジローナフィーヴァーの他に注目すべき存在はいない。しかし、現在ドバイ遠征を行なっているウルグアイ馬の中から、エスウニコ(Es-Único)という素質馬を紹介しないわけにはいかない。


 エスウニコは父ウォーセクレタリー、母エネルジーアゲットイット、その父アグネスゴールドという血統の3歳牡馬。2019年10月23日にウルグアイのサン・フランシスコ牧場で産まれた。


 デビュー戦は2着に敗れたが、2戦目を5馬身差で快勝。そこから3連勝でGⅡグラン・グリテリウムを勝利し、この世代の2歳王者となった。怪我の影響もあって3冠路線には進まず、早々にドバイ遠征が決まった。陣営は芝のほうが向いていると認めているため、ドバイのダートは必ずしも適した条件ではない。だが、他馬をあっという間に置き去りにする鋭い末脚には目を見張るものがある。サウジ・ダービー、UAEダービーを目標にしているため、日本馬のライバルとなるかもしれない。



ペルー


 2022年、ペルーに新たな3冠馬が産まれた。それがパラディグマ(Paradigma)である。パワーワールド産駒の3歳牡馬で、GⅠポージャ・デ・ポトリージョスGⅠリカルド・オルティス・デ・セバージョスGⅠデルビー・ナシオナルの3冠競走をすべて勝利した。4冠を狙ったGⅠナシオナル・アウグスト・B・レギーアでは、2800mという距離と芝替わりに苦しんで9着と敗れた。しかし、この馬がペルーでもっとも注目すべき存在であることは間違いない。


 ペルーの古馬勢は、このところ同じメンバーがつばぜり合いを繰り返しているという状況で、抜けた存在がいなかった。しかし、スーペルコリント(Súper Corinto)が台頭したことで、ペルー競馬に明るい光が差した


 スーペルコリントは父スーパーセイヴァー、母トラディツィオーネスラム、その父グランドスラムという血統の5歳牡馬で、2018年10月24日にアルゼンチンのフィルマメント牧場で産まれた。


 昨年はペルー代表として4月にチリで行なわれた競馬の南米選手権GⅠラティーノアメリカーノに出走し、オコナーの2着と好走した。レース後はペルーに帰らず、チリに残ってGⅠイポドロモ・チレを目指すことになった。そのイポドロモ・チレでオコナーを逆転。ペルー調教馬によるチリGⅠ制覇という快挙を達成した。レースはまたもやペルーに帰国せず、アメリカで開業しているチリ人のアマドール・サンチェス調教師の下に移籍した。アメリカ2戦目で初勝利をあげると、1月28日のGⅠペガサスWCへの招待を受け取った。ペガサスWCの後はBC出走を目指していく。


 もう1頭、セリーナカイル(Selina Kyle)を忘れてはいけない。サウスデール産駒の5歳牝馬で、通算成績は14戦11勝。11勝でつけた合計着差は86 3/4馬身、1戦平均約8馬身という驚異的な数字である。ペルー国内の牝馬ではもはや相手にならず、2022年12月に渡米した。スーペルコリントと同じくアマドール・サンチェス調教師の管理馬となる。道中を気分よく走れないと崩れてしまうという脆い面はあるが、着差が示しているように競走能力は申し分なく、アメリカでも重賞を狙える。




ブラジル


 2022年、ブラジル競馬界に1頭の怪物候補が現れた。父アグネスゴールド、母ビューティーハーラン、その父ハーランズホリデー。2019年10月3日に産まれたその馬の名をロンドンムーン(London Moon)という。


 2022年2月13日のデビュー戦を6 1/4馬身差で快勝すると、2戦目の高額賞金特別競走も勝利した。この2戦はいずれも1000mの短距離戦だったが、3戦目のGⅡコンヂ・ヂ・ハーズバーグで1500mに延長すると、3馬身差の勝利で難なく重賞初制覇をおさめた。6月26日には無傷の4連勝でGⅠジョッキークルブ・ブラジレイロを勝利し、2021/22シーズンのブラジル最優秀2歳牡馬に選出された。続く8月7日のGⅠジョアン・アデマール・ヂ・アルメイダ・プラードでは、1着入線を果たしながらも際どい判定の斜行で2着に降着。キャリア初の黒星を喫した。しかし、前走10月12日のGⅠリンネオ・ヂ・パウラ・マシャードでは好位から抜け出して勝利し、GⅠ2勝目をあげた。今年は1月15日のGⅢから始動し、ブラジル3冠を狙う。


 ブラジルではこのところ有力馬の引退と売却が重なり、ロンドンムーンの他に特別に注目すべき馬は国内外を含めていない。しいて挙げるとすれば、8戦7勝の短距離女王オリアーナドイグアス(Oriana Do Iguassu)である。


 2018年8月2日に産まれたタイガーハート産駒の4歳牝馬。昨年5月14日に行なわれたGⅠABCPCCを4 3/4馬身差で快勝し、2021/22シーズンのブラジル最優秀3歳牝馬を受賞した。ブラジルの短距離路線ではインエッセンス(In Essence)という強い牝馬がいたが、この馬が昨シーズンかぎりで引退したため、今年の短距離戦線はオリアーナドイグアスの独壇場になりそうだ。



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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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