
木下 昂也(Koya Kinoshita)
地球上の馬の1%が半野生的な生活を送っている
この記事は、スペインの通信社 "EFE" が2021年9月23日に掲載した記事 "Un estudio calcula que un 1% de los caballos del planeta viven en semilibertad" を翻訳・一部改編したものになります。
国連食糧農業機関(FAO)によると、世界にはおよそ5800万頭の馬がいる。そのうち野生化した馬、すなわち、人間の手を借りていない、もしくは人間との接触が最小限という野生状態で生きる馬は約60万頭である。この数値は、今年9月16日から19日にかけてマラガで開催された第5回生物多様性および環境保全に関する会議(V Congreso Conserbio)で、カディス博物学団体(Sociedad Gaditana de Historia Natural)のヘスス・ヒル・モリオン氏とドニャーナ生物研究所のフアンホ・ネグロ氏によって発表されたものである。
野生化した馬
「すべての野生化した馬は、野に放たれた馬か、飼われていた場所から逃げた馬の子孫である」と、ヒル・モリオン氏は述べた。「ほんの少し前まで、モンゴルの草原に生息するモウコノウマ(Przewalski)という野生種が残っていると考えられていたが、分子マーカーを用いた研究によって、モウコノウマは5000年以上前にロシアやカザフスタンの民族によって家畜化された馬の子孫であることが判明した」
馬は約6000年前から中央アジアで家畜として飼われており、野生馬は19世紀に絶滅した。
ヒル・モリオン氏によると、スペインで野生化した馬のほとんどがイベリア半島北部に生息している。「ケルト・ポニー種、ロシーノ種、モンチーノ種、アストゥルコン種、ブルゲーニョ種、ハカ・ナバーラ種、ガリェーゴ種。これらスペインの馬品種は資源として利用されているが、生活に関しては人間の介入をほとんど受けていない。せいぜい、年に1回集められ、衛生管理されたり、肉として加工されるくらいである」
レトゥエルタ種
ドニャーナ国立公園で保護されているレトゥエルタ種は、これまでもっとも研究対象とされてきた馬である。2007年に開かれた科学研究高等評議会(CSIC)では、ヨーロッパで最古の馬種とみなされた。
「レトゥエルタ種は別品種とは群れを成さない馬である。したがって、他の品種の馬とは遺伝子的に非常に遠いところにいる。遺伝子系統樹に位置づけするなら、レトゥエルタ種は系統樹の根本のほうに現れる」と、シロ・リコ氏は述べた。
レトゥエルタ種は、同じく半野生で育てられているウエルバ県アルモンテのマリスメーニョ種と生息地を共有している(どちらもドニャーナ国立公園)。この2種はアメリカで野生化したマスタング種の祖先と見なされている。
ヒル・モリオン氏によると、野生化した馬の大半が鹿毛である。なぜなら、旧石器時代の洞窟壁画に見られるように、ターパン(※野生馬)の毛色が鹿毛であり、シマウマのように短いたてがみをしていたからである。ターパンは家畜馬の祖先にあたると考えられている。
研究者たちが作成する図鑑の目的は、野生馬を取り巻く現状と進化状況を伝えることである。図鑑に記録されるデータには、野生化した馬の起源、品種の識別、個体群の大きさ、絶滅のおそれの度合いなどが含まれる。今回の作成は、ドニャーナ生物研究所のフアンホ・ネグロ氏の監修の下、文献調査とフィールドワークを通じて実現した。
【まとめ】
・人間の手を借りずに生きる馬(=野生化した馬)は世界に約60万頭いる(1%)。
・野生化した馬の祖先は家畜馬である。
・スペインで野生化した馬は北部に多い。
・アメリカで野性化したマスタング種の祖先はスペインのレトゥエルタ種とマリスメーニョ種と考えられている。
・野生化した馬の毛色に鹿毛が多いのは、家畜馬の祖先であるターパンが鹿毛だったから。
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木下 昂也(Koya Kinoshita)
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