• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

死の淵から南米王者へ:アエロトレンがGⅠラティーノアメリカーノを優勝


写真:OSAF(@osafweboficial) https://twitter.com/osafweboficial/status/1452407844322611203

 10月24日、ウルグアイのマローニャス競馬場でGⅠラティーノアメリカーノ(ダ2000m - 3歳以上)が行なわれた。このレースは南米各国が代表馬を選出して争われる、いわば競馬の南米選手権である。


 本来は毎年3月に開催されるのだが、新型コロナウイルスの影響により10月に延期された。また、会場も当初はペルーのモンテリーコ競馬場だったが、感染状況を考慮してウルグアイのマローニャス競馬場に変更となった。


 今年は13頭立てとなった。内訳はアルゼンチン3頭、チリ3頭、ウルグアイ3頭、ペルー3頭、ブラジル1頭である。13頭のうち7頭がGⅠ馬、12頭が重賞馬という豪華なメンバーがそろった。


 だが、レース前にいくつかのトラブルが発生した。まず、チリ代表のウィンヒアー(WIn Here)に騎乗予定だったルイス・トーレス騎手が個人的な事情により渡航を断念し、エクトル・ラソ騎手に乗り替わりとなった。アルゼンチン代表のヴィレッジキング(Village King)にはアドリアン・ジャネッティ騎手が騎乗予定だったが、渡航直前になって父親のアンヘル・ジャネッティ氏が亡くなったため渡航を中止し、フリオ・メンデス騎手に鞍上変更となった。さらに、追加登録で出走権を得たアグネスゴールド産駒のブランドノワール(Blanc De Noirs)がレース前日に回避を表明し、補欠馬のガウーショ(Gaúcho)が急遽繰り上がりで出走することになった。


 レースはペルー代表の②マタラーニ(Matarani)がハナを奪った。しかし、事前に逃げると予想されたチリ代表の牝馬①レダビダ(Le Da Vida)が500m地点で先頭に躍り出ると、そのまま大逃げのような形になった。レダビダは残り400m地点まで先頭を守ったが、後続にあっという間に飲みこまれた。後方で脚を溜めていたウルグアイ代表の⑬アエロトレン(Aero Trem)が最内から、同じくウルグアイ代表の1番人気アトレティコエルクラーノ(Atlético El Culano)が大外から伸び、残り200mでは2頭の一騎打ちとなった。この争いをヴァグネル・レアル騎乗の5番人気アエロトレンが3/4馬身差しのいで優勝した。勝ちタイム1分50秒16は、2005年2月13日にミストンゴ(Miss Tongo)が出した1分59秒97を16年ぶりに更新するダート2000mのウルグアイ・レコードとなった。2着にアトレティコエルクラーノでウルグアイ代表によるワンツー決着。3着には最後方から追い込んだチリ代表の⑪ウィンヒアーが入った。


 1,2着はどちらもアントニオ・シントラ調教師の管理馬である。ウルグアイ代表による歴史的なワンツーフィニッシュについて、シントラ師は次のように述べた。「ホームでワンツーを決められたなんて、まるで夢の中にいるようだ。きっと数日後に夢から覚めて、勝利を実感できるだろう。最後まで気にしていたのは天候だった。2頭とも動き出すのが早すぎると思ったが、良い勝ち方をしてくれた。嬉しい誤算だ。だが、アエロトレンが勝つと信じていた」


 アエロトレンは父シャンハイボビー、母ピアーチェモルト、その父ギルテッドタイムという血統の6歳牡馬。2015年10月15日にブラジルのオールド・フレンズ牧場で産まれた。ブラジル産馬だが、ウルグアイを拠点とするアントニオ・シントラ調教師の管理馬となり、デビュー以来ウルグアイで走っている。半兄にはブラジルGⅡを勝ったフレンズオブゴールド(Friends Of Gold)がいる。


 2018年1月28日にデビューすると、その年のGⅠポージャ・デ・ポトリージョス(ダ1600m - 3歳)とGⅠジョッキークルブ(ダ2000m - 3歳)を優勝し、ウルグアイ2冠馬に輝いた。3冠を目指したGⅠナシオナル(ダ2500m - 3歳)では、距離の壁に阻まれたか、9着に敗れた。その後は1600m~2000mを中心に出走し、ウルグアイのマイル王決定戦であるGⅠペドロ・ピニェイルーア(ダ1600m - 3歳以上)を2020,21年と連覇した。通算成績は22戦11勝(重賞6勝、GⅠ5勝)。


 この馬について触れなければならないことがある。それは生死をさまよった馬ということである。GⅠナシオナルの直後、アエロトレンは疝痛を発症して緊急手術を受けた。腸内感染症も患ってしまい、馬体重は200kg近くも減った。懸命の処置のおかげでなんとか死の淵から脱することができた。それだけなく、彼は驚異的な回復力を見せ、翌年10月にはレースに復帰した。


 ウルグアイ代表によるラティーノアメリカーノ優勝は、2007年のグッドリポート(Good Report)以来2度目である。また、アトレティコエルクラーノが2着に入ったことで、ウルグアイ産馬による同レースの最高着順を更新した。鞍上のヴァグネル・レアル騎手、管理するアントニオ・シントラ調教師は共にラティーノアメリカーノ初勝利。4着にアルゼンチン代表のヴィレッジキングが入ったことで、1着から4着までをウルグアイを拠点とする騎手が独占した。




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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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