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ベネズエラのイバン・ピメンテル騎手が2年間の騎乗停止

 ベネズエラからまた1人、有力な騎手が長期の騎乗停止を科されてしまった。イバン・ピメンテル騎手である。


 9月19日の開催終了後、ベネズエラ競馬機関は採決レポートを発表した。その中に「イバン・ピメンテル騎手とミゲル・メヒーアス調教師をグランタトゥー号(Gran Tatú)の件で2年間の資格停止とする」という記載があった。


 話は5月16日にさかのぼる。グランタトゥーはこの日行なわれたラ・リンコナーダ競馬場12Rにイバン・ピメンテル騎手を背に出走し、1番人気に支持された。4コーナーを2番手で回ったものの、直線で失速して13頭立ての10着に敗れた。ベネズエラでは1番人気馬が大敗するとベネズエラ競馬機関による調査が入ることがある。グランタトゥーの敗戦についても調べられることになった。


 では、なぜ4ヶ月も経った9月19日になって急に処分が下されたのか?


 グランタトゥーは19日のレースに異なる騎手・調教師で出走し、2着に1 1/4馬身差をつけて勝利をおさめた。これにより、5月16日のレースにおいてミゲル・メヒーアス調教師は調整ミスをし、イバン・ピメンテル騎手は怠慢騎乗をしたとみなされたのである。両者は2021年9月20日から2023年9月20日まで競馬に参加することができない。


 ベネズエラではミサエル・ロドリゲス騎手とサムエル・マリン騎手が免許取消、ロベルト・カプリーレス騎手が2020年11月23日から2022年11月23日まで騎乗停止と、トップジョッキーの離脱が相次いでいる。


 たしかに、ピメンテル騎手は清廉潔白な騎手ではない。2013年6月にはアミールカーン号(Amir Khan)に騎乗した際の電気デバイスの使用により長期の騎乗停止処分を受けている。だが、今回の制裁については不可解な点があり、ベネズエラ国内では賛否両論である。


 ロドリゲス騎手は斤量ごまかし、マリン騎手はコーナーを2度も曲がれず、カプリーレス騎手は隣の馬への悪質な妨害と、弁解できない重罪を犯した。一方、ピメンテル騎手の事例は単に馬の調子が悪かっただけのように思える。1番人気馬が大敗するのは珍しいことではない。


 また、グランタトゥーは5月16日にイバン・ピメンテル騎手で10着に敗れた後、7月11日のレースでもウィルフレード・バスケス騎手を背に10着に敗れている。ピメンテル騎手に制裁を科すのなら、バスケス騎手にも同様の処分を下すのが妥当である。が、今のところバスケス騎手には何の処分もない。


 シプリアーノ・ヒル騎手は自身の Twitter で「人は知識ではなく目で見て物事を判断するが、見たものを実際に理解している人は少ない」と、意味深なメッセージを呟いた。彼もベネズエラで有力な騎手の1人だが、9月19日のレースで人気馬に騎乗して大敗している。ピメンテル騎手の制裁や、これから自分に科されるかもしれない処分について言及したものと思われる。


 制裁が厳しいことで有名なベネズエラだが、その基準が不明瞭かつ不公平であることでも有名である。ベネズエラ競馬ファンの間では、重い処分が発生したときに次のように言われることがある。


「政府の誰かが馬券を外すと、競馬界に命じて原因となった騎手を粛清する」


■ 原因となったグランタトゥーのレース



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木下 昂也(Koya Kinoshita)

Twitter : @koyakinoshita24

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Koya Kinoshita

スペイン語通訳

スペイン競馬と中南米競馬を隅々まで紹介&徹底解説する『南米競馬情報局』の運営者です。

全国通訳案内士というスペイン語の国家資格を所持しています。

東京在住のインドア派。モスバーガーとミスタードーナツが好きです。

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