• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

ベネズエラ競馬を狙った不法入国斡旋組織の存在と反論

 アメリカ通算4080勝をあげたエイバル・コア騎手、アメリカ競馬の殿堂入りを果たしたラモン・ドミンゲス騎手、同じくアメリカ競馬の殿堂入りを果たしたハビエル・カステジャーノ騎手、ドバイGSを優勝したエミサエル・ハラミージョ騎手など、アメリカ競馬においてベネズエラ人騎手の存在は欠かせない。ベネズエラの若手騎手は彼らをスターとみなし、彼らのように海外で騎乗することを夢見ている。国民の4分の3が極貧層(日々の生活すらままならない層)というベネズエラ国内の経済状況も相まって、安定した生活を得る特効薬としてアメリカでの騎乗を望む騎手は多い。だからこそ、甘い話に飛びついて騙されてしまう者が出てくる。


 1月12日、ベネズエラ競馬機構(INH)がSNSで緊急声明を出した。それによると、イスメリオ・ビジャロボス騎手がアメリカで騎乗するために不法入国斡旋組織を利用した不法入国を犯し、2021年10月から同国で拘束されているとのことである。テキサス州、ミシシッピ州、ルイジアナ州と移送を繰り返され、家族と連絡すら取れない人権侵害を受けているという。ビジャロボス騎手の父親が脳卒中を起こしたこともあり、INHはビジャロボス騎手の早期解放をアメリカ政府に訴えている。


 INHは1月8日にも、ベネズエラにいる騎手や調教師を狙った北米移住のための不法入国斡旋組織が国内外に存在することを注意喚起した。こうした組織は、当人に安全かつ正規にアメリカに渡航できる手段があり、将来が保証されると信じこませる。当人は組織に莫大な渡航費用を支払うが、実際に提供されるのは国境を違法に越えるリスクの高い手段であるため、発覚した場合は身柄を拘束される。入国できたとしても、就ける仕事は非正規の賭博場といった違法な職業である。また、斡旋組織は当人の労働許可を得るため、当人にベネズエラ国内やベネズエラ競馬界で迫害されたと証言するよう強制する。こうすることで、政治的理由による亡命、難民と認められて労働許可が下りる。エイバル・コア元騎手が会長を務めるベネズエラ騎手組合は、国や競馬界による競馬関係者への迫害は一切ないと断固否定した。


「自らの人生を破壊しかねない不法入国斡旋組織に注意すること。ベネズエラ人が世界で活躍するのは喜ばしいことだが、少なくとも法は順守しなければならない」と、INHは説明した。


 INHは声明の中で、不法入国斡旋組織に携わる人物として1人の具体的な名前を挙げ、その人物を公に批判した。それが、ビッグシティーマン(Big City Man)で2009年のGⅠドバイGSを優勝し、現在はアメリカで生活するベネズエラ人のホセ・ベレンスエラ元騎手である。調査の結果、ベレンスエラ元騎手が犯罪組織と連携し、ベネズエラ国内の騎手に違法かつ不正なやり方での出国を呼び掛けているという。