• 木下 昂也(Koya Kinoshita)

【2022年】この南米3歳馬が凄い!【牝馬編】

 南米ではほとんどの国で3冠競走が終わった。まだブラジルのリオ・デ・ジャネイロ地区の3冠競走とチリのダービーは残っているが、現3歳世代(2018年産馬)の格付けはおおむね済んだ。そこで今回は、南米にいる有力3歳牝馬を紹介する。


※レース名を押すとレース映像が見られます。


 南米牝馬で2強を形成するのが、アルゼンチンのディディア(Didia)とチリのイナダマス(Y Nada Más)である。


 オーペン産駒のディディアは、GⅠエンリケ・アセバル(芝2000m - 3歳牝馬)を3馬身差、GⅠコパ・デ・プラタ(芝2000m - 3歳以上牝馬)を4馬身差で勝利し、もはやアルゼンチン国内に敵はいない。馬体重440kg前後と小柄ながらあっさり逃げ切り勝ちをおさめるその姿は、レシステンシアの母マルアコストゥンブラーダ(Malacostumbrada)を彷彿とさせる。今後は、2月のGⅠミゲル・アルフレード・マルティネス・デ・オス(芝2000m - 3歳以上)で牡馬と戦うプランや、アメリカに挑戦するプランがある。アメリカの芝重賞を勝てる実力は充分にある。


 チリNo.1の生産牧場であるドン・アルベルト牧場で産まれたコンスティテューション産駒のイナダマスは、デビュー前から素質を高く評価されていた。が、無傷の3連勝で2歳重賞を2勝したものの、続くGⅠでは2度の2着と足踏みを強いられた。しかし、GⅠナシオナル・リカルド・リオン(芝2000m - 3歳)GⅠエル・エンサージョ(芝2400m - 3歳)で牡馬を撃破してGⅠを連勝。強烈な末脚が魅力の馬で、前走のGⅠラス・オークス(芝2000m - 3歳牝馬)でも差し切り勝ちをおさめてGⅠ3連勝と絶好調である。牡馬・古馬を含めても、チリの現役最強馬はこの馬と言っても過言ではない。2月6日のチリ・ダービーでも本命視されている。


 ディディアとイナダマスが芝の女王ならば、ダートで強さを見せているのがチリのヴィータダマンマ(Vita Da Mamma)とアルゼンチンのスーペルビジュー(Súper Bijou)である。本当はアルゼンチンのカルタエンブルハーダ(Carta Embrujada)を推したいが、アメリカに移籍したので今回は除外する。


 ヴィータダマンマは日本で活躍したシーキングザダイヤの娘である。セリエAのインテルに所属するアルトゥーロ・ビダルが生産・所有ということでも大きな注目を集めている。GⅠアルトゥーロ・リオン・ペーニャ(芝1600m - 2歳牝馬)では前述のイナダマスを1 3/4馬身差で撃破。続くGⅠポージャ・デ・ポトランカス(芝1700m - 3歳牝馬)で4着に敗れると、主戦場を芝からダートに移し、GⅠ1000ギニー(ダ1600m - 3歳牝馬)に出走した。これを初ダートながら3 1/4馬身差で快勝すると、GⅠアルベルト・ソラーリ・マグナスコ(ダ2000m - 3歳牝馬)も優勝した。前走GⅠラス・オークスでは芝に戻って3着と好走。今後も芝・ダート二刀流の活躍が期待される。


 アルゼンチンには、GⅠポージャ・デ・ポトランカス(ダ1600m - 3歳牝馬)GⅠセレクシオン(ダ2000m - 3歳牝馬)を優勝し、アメリカに移籍したカルタエンブルハーダという怪物牝馬がいた。そのカルタエンブルハーダをクビ差まで追い詰めたのが、フィルマメント牧場生産のスーパーセイヴァー産駒スーペルビジューである。前走のGⅠエンリケ・アセバルで初めて芝のレースに挑んだが、ディディアから4 1/2馬身差の3着と悪くない結果だった。今年はGⅠクリアドーレス(ダ2000m - 3歳以上牝馬)からGⅠエストレージャス・ディスタフ(ダ2000m - 3歳以上牝馬)という路線を歩むだろうが、アルゼンチン牝馬路線はディディア以外に抜けた存在がおらず、そのディディアも芝路線を進むことが濃厚なため、スーペルビジューにとって飛躍のチャンスである。


 ブラジルにはマカダミア(Macadamia)というハットトリック産駒のGⅠ2勝馬がいた。だが、日本に繁殖牝馬として購入されたため現役を引退。女王の座が不在となった。その後釜と見られていたのがアグネスゴールド産駒のオリンピックラスパルマス(Olympic Las Palmas)だが、この馬も日本に購入されたため戦線離脱となった。


 三の矢として現れたのが、ブラジルで一時代を築いた大種牡馬ワイルドイヴェントの最終世代に属するジャストライク(Just Like)である。ここまで5戦2勝。前走のGⅢマリアーノ・プロコピオ(芝1600m - 3歳牝馬)では斜行により1着入線から3着降着となったが、直線で後方から伸びて2着入線馬に2馬身差をつけた末脚は圧巻だった。ブラジルの牝馬3冠競走は2月13日のGⅠエンヒキ・ポソーロ(芝1600m - 3歳牝馬)から始まるが、1冠目はこの馬が1番人気に支持されるだろう。


 これまで挙げた馬はいずれも素晴らしい牝馬だが、スケールの大きさではウルグアイのジローナフィーヴァー(Girona Fever)に敵わないかもしれない。


 ウルグアイには2020年7月から2021年8月にかけて11連勝を達成したハイーニャピオネイラ(Rainha Pioneira)という短距離界の絶対女王がいた。そのハイーニャピオネイラを5 1/4馬身差で倒して連勝を止めたのがジローナフィーヴァーである。彗星のごとく現れたテキサスフィーヴァー産駒の3歳牝馬は、ハイーニャピオネイラとの再戦でその差を9 1/4馬身まで広げた。今年1月6日に行なわれたウルグアイの短距離王決定戦GⅡマローニャス(ダ1000m - 3歳以上)でも5馬身差の圧勝。通算成績は9戦8勝、2着1回であり、今ウルグアイ国内でもっとも人気がある馬の1頭である。


 ここからは、まだ表舞台には出てきていないが、将来性が抜群である2頭を紹介する。ペルーのセリーナカイル(Selina Kyle)とブラジルのオックスフォードガール(Oxford Girl)である。


 サウスデール産駒のセリーナカイルは、ブンデスリーガで活躍したクラウディオ・ピサーロの生産馬である。昨年8月のデビュー戦を13 3/4馬身差で圧勝し、世代No.1の評価を受けた。そのときはピサ―ロが所有したが、GⅠポージャ・デ・ポトランカス(ダ1600m - 3歳)の前にジェットセットという馬主に売却された。だが、GⅠの直前に怪我で戦線離脱を余儀なくされ、2021年は全休となった。今年1月8日に5ヶ月ぶりのレースに出走すると、ここを3 1/2馬身差で快勝。怪我の影響はまったくなさそうだ。今後も注目しなければならない存在である。


 オックスフォードガールについては、以前より筆者が「アグネスゴールド最後の大物」と素質を評価している。父はブラジル・リーディングサイヤーのアグネスゴールド、母母はブラジルが産んだ名牝ヒボレッタ(Riboletta)。半兄にはブラジル・ダービー馬オリンピックハノイ(Olympic Hanoi)と、サンパウロ・ダービー2着のオリンピックイプスウィッチ(Olympic Ipswich)、近親にはブラジル3冠馬スーパーパワー(Super Power)がいるという超良血馬である。昨年4月のデビュー戦を勝利。半年の休養を挟んで出走した10月のGⅡホシャ・ファリア(芝2000m - 3歳牝馬)では2着に入った。このときの勝ち馬ガリレイサンダー(Galilei Thunder)がサンパウロ・オークスで2着に入ったことを考えれば、オックスフォードガールの実力も高いと分かる。3冠競走のうち1つは確実に獲るだろう。



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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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